傷を負った焔
出会い。ちょっと血なまぐさい?
それは突然のことだった。さぁ今日も羊の元に行きましょう。とつなぎを着た時
窓から見える東の森が一瞬で焼け野原になったのだ
そうして響く悲鳴
何かが暴れる大きな音
部屋のバルコニーから身を乗り出せば焼け野原となった森で蠢く赤い何か
眉をひそめすぐに部屋を出た。向かうはもちろん東の森
東の森、があった場所にはたくさんの人だかりと焦げた匂い、鉄の匂いが充満していた
眉をひそめたレインは、しかし人を掻き分け前に出る。どうにも嫌な予感がするのだ。虫の知らせとでもいうべきか。
森があった筈の場所には血を流し荒い息をする大きな紅い龍がいた。
息をするたびに口からは焔が出ている。
レインは一目でわかった。この龍はこの国の最高位の八龍の一体。焔をつかさどる赤龍という事に。
しかし可笑しなことに、これほど人が集まるのにかかわらず誰一人として手当てをしようとする人間がいないのだ。なんてこと。血を流し続けるこの龍が最高位であろうとなかろうと怪我人に必要なのは迅速な治療だ。それをレインは遥か昔、こびり付いた苦しい時代で経験している。少しでも作業が遅れれば死に直結するのだ。
レインは群衆から二歩三歩と赤龍に近寄る
<近寄るな>
「何故?」
<理由が必要か>
何か酷く阿呆な事を言われた気がした。
「必要でしょう。怪我人の、否、この場合怪我龍?の治療をしなければならないの。その傷は酷いわ。大した理由でも無ければ治療させていただくし、それには当然近寄らせてもらうわ」
私の言葉に龍はない眉を寄せたように感じた
<放っておけ。我は赤龍ぞ>
「馬鹿でもないんだから見たらわかりますけど。それとも私、そんなに間抜けに見えるんですか?だとしたら流石にショックなんですけど」
即答し逆に尋ねれば今度は意味がわからないと見返された。いや、そんな見返されても。こっちが意味分かんない。
<赤龍は戦と破壊をつかさどる
血に穢れた龍に近寄りたくなかろう>
自嘲するセリフ。だが、だからどうした?と思う。
正直レインが赤龍を放置する理由にはなりえない。
近寄るレインに今度は赤龍は暴れだす。触れるな、見るな。と叫ぶ
<我が恐ろしかろう!!それ以上、近寄るな!!!>
暴れると同時に赤龍とレインの間で火が上る。狙ってやった訳ではないようで、少し焦る赤龍が少し幼く見えた。龍と言えば万年を生きるというのに。亀みたいだ。鶴亀の。・・・こんなアホな考えしてる暇はないんだけど、ついつい思考が横道に逸れた。
なおも私が近寄るのをよしとしない赤龍に溜息。
「貴方のどこが恐ろしいの?(コロ…愛犬…みたいな)優しい目をしてるわ」
どキッパリと言ってのけたレインを赤龍は凝視して固まった。何か可笑しな事でも言っただろうか?と疑問に思うも固まってる今がチャンス。横で上がる炎など気にも留めない。そんな事気にしてたら何も助けれないのだ。久しく炎を近くに感じつつ(こんなすぐ傍でこんな高温の炎を感じたのは数十年ぶりだ)赤龍の怪我の具合を確かめる。
本来龍族は怪我などしないはずなのだ。固い鱗は鉄をも跳ね返すはず(そう教本に書いてあった)。戦闘に特化した赤龍ならなおのことだ。なのに夥しいほど血が流れるのはおかしい。近くで燃える炎に頓着せず血を流す患部を見る
「毒かしら鱗の周辺が変色してるわね?矢じりが埋まっているからこれが原因?麻酔って龍に効くのかしら?
ねぇ火龍様。フリーズから解けて下さる?今から麻酔打って毒の塗ってある矢じりを抜くわ。ついでに暴れないで頂けると助かるのですけど。」
<・・・・・・・・・・(呆然)>
「・・・・・まぁ良いわね。」
呆然として戻ってこない火龍に一人ごちて麻酔(本来なら対象を速攻で眠らせるのだが赤龍にはすぐに効果が現れない)を打ち効果が現れたら(それもまだ麻痺だけ)すぐに矢じりを抜いた。幸いにも麻痺は完璧らしい。毒消しの薬草を患部に張り付ければ漸く火龍の視点がレインに定まった
<お前は我が怖くないのか?>
「なんでそんなにビクビクされてるのかは存じませんが、怖くなどありませんよ。怖がる必要などないですから。
じき麻酔が効きます。次に目覚める時は当家かと思いますがご容赦くださいね。」
レインの言葉の通り間もなく酷い眠気が襲い火龍はあらがえない眠りについた
最後まで己を畏怖せず視線が絡まるレインを見ながら
<(お前は我と視線を合わし言葉を交わすのか・・・)>
レインは年のせいか動じない子。すこし編集。ご指摘いただき改行減らすようにしてます。見にくければ教えて頂けると嬉しいです