第一章【出会い編】領主の娘の生活
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レイン・・・今生の私の名前。
家名はシュレイア。大陸の西の端の我が国の、最も東に面した田舎を与えられた階級で言えば中級の領主の家名である。
主な産業は養鶏・畜産・農業・林業・・・・まさに田舎だがまだ私が<私>であった頃独り立ちして生活も穏やかになった頃、長男に北海道に旅行に連れて行ってもらった事があるのだがまさにその光景にそっくりなので、昔懐かしき愛しい時間を思えば田舎も素晴らしい。
特に大昔は一時町から動物が消えた事を覚えている故余計にこの地に生きる動物を愛しく思う。
領主とは名ばかりで私も兄弟姉妹も伸び伸び暮した。私など、最も好ましいのは羊の小屋を掃除している時なのだから庶民具合は知れるだろう。
良いのだ。だって私は元々庶民。他の領主の暮らしなど聞いてると余計今の暮らしの方が愛おしい。
傍らの今年生まれ、漸く母の乳から草を食べるようになった子羊の花子を愛でながら髪を遊ばせる風に目を細めた
わふっ
少し間の抜けた鳴き声に笑いながら鳴き声のした方向を見てみれば私の愛犬のコロがてくてくと寄って来るところだった
「コロ、おいで。毛を繕ってあげる」
私の格好と言えば領主の娘にはあるまじくも、現代日本で言ったら<ツナギ>の様な衣服に腰には太めのベルト。想像してほしい。そう、大工のお兄さん達がぶら下げているような小さなカバンを下げている。カバンというのはちょっと違うかもしれないが。ようは工具やブラシ、毛刈り用の鋏が入っている
そこからブラシを取り出して毛を繕えばコロは気持ち良いようで円らな瞳がトロンとさせた
他の領主の娘は沢山の家庭教師に囲まれ、分単位で予定を組まれ、動き辛いドレスを身に纏って御淑やかに慎ましく(生活が。というわけではないようだ)暮しているのに対し、これが私の暮らしだった
不満一つなく、日々穏やかに毎日少しづつ違う移ろいを見つめ家族仲良く、領民とも多分仲良く過ごす。
私が生まれ育ったのがこの地で本当によかったと、生まれて何度思ったか分らないがそう思う。
ぼーーーっと愛犬コロの頭を撫でながら牧場を眺めた
「レインーー」
「レイン!」
「はーい????」
私を呼ぶ声に応えれば、優しくも厳しい父母が呼んでいた
「レイン、チーズケーキの売れ行きは上々だ。日保ちしないのが玉にキズだがな」
「東の大陸からコメという植物を手に入れたわ。貴女が昔言ってた奴よね?栽培できる?」
「今度は多少日保ちする菓子を創ってみるわ。
本当に?母様!!とっても素敵だわ。もちろんよ!!腕が鳴るわ!」
父母は私に前世の記憶が有る事を話している。まぁボロを出してバレてしまったわけだが。おかげで兄弟姉妹も知ってるこれはシュレイア家の秘密だ。こんな突拍子もない事、信じられるはずはないから、バレた所で問題ないけれど。うちの家族は信じてくれたから、頭の可笑しい人だと思われても気にせずにいられると思う。多分。
きっと、私が<私>として長く生きたからこそ多少の事では動じないし、生きてきた年月はそのまま累積し知識となるわけだから、今の私の為になっている。つくづく長生きして良かった
もしこれが戦時中に死んで転生してたならパニックを起こしたりしていただろうし役に立った事もほとんどないでしょうから。
書き直しましたー。段落?減らしましたが見にくくないですか??




