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悪役令嬢を望まれるなら華麗にこなして見せましょう!

作者: あるる
掲載日:2026/06/22

思いついたままに勢いのみで書いたものです。

リハビリ兼ねて

 唐突に気付いてしまった。

 パズルの最後のピースがはまったように、今まで感じていた全ての違和感が一枚の絵となって見えた。

 今、この場で、この舞台で、わたくしに求められている役割が、目の前の主役お二人の踏み台になることだ、と。

 わたくしが悪役となり、断罪される舞台が整っている。


 ほろりと美しく泣く、可憐な下級貴族の令嬢、そしてその令嬢を守る騎士のような立ち位置に居る王子殿下。そして対立するのは王子殿下の婚約者たる高位貴族の令嬢、わたくし。

 そして周りを囲み、にやにやとわたくしが理不尽に責められているのを嘲笑いながら見ている低俗な令嬢、令息たち。

 一体どこの安い劇場の物語なんでしょうね。

 王立学園のお昼時のカフェテリアと言う、見世物には好都合の状況。ここまで全てが彼らにとって都合の良い環境が整っているのを鑑みると、何かの筋書で動かされているようにも見える。

 冷静に見渡すと、冷静に見極めようとしている少数もいるようですね。貴族として当然の行動ができている方々が居て安心しましたわ。

 それにしても、これは一旦調査した方が良いですわね。帰ったらお父様にお願いしましょう。


 未だにギャアギャアと叫んでいる王子殿下は、どこに知性を捨てて来たのだろうかと思うほどに表情は醜く歪み、とても王族とは思えない醜態を晒していて、思わずため息が漏れそうになる。

 黙って立っていたら、見た目だけは王子らしくそこそこ見られますのに。


「聞いているのか! ミシェル・デリア公爵令嬢!」

「……いいえ?」


 わたくしの言葉に殿下が絶句して面白い顔になりましたわ。ポカンとした顔から今度は屈辱で真っ赤になっていらしてますが、王族がそんなに表情豊かで良いのか心配になりますわねえ。

 それにしても周りが騒がしいですが、今回のきっかけは何だったかしら?


「貴様! 可憐なティアに足を引っ掻けて転ばせた癖に、なんだその態度は!!」


 ああ、そう言えばそんな難癖を付けられてましたわね。


「殿下、少し真面目にこの状況を見てもらえません?」

「なんだと……」

「まずですが、わたくしカフェテリアに向かってましたの」


 わたくしたちはカフェテリアの入り口近くにおり、わたくしは中庭を抜けて来たので中庭側に、王子殿下以下はカフェテリア側にみなさまいらっしゃるのを再確認する。


「だから、なんだ?」

「わかりません? わたくし、カフェテリアにはまだ入っていませんの。でも、ティア様はカフェテリア側で足を滑らせていらっしゃいますでしょう?」

「だから、それがなんだと言うんだ!!」


 察しが悪い。この方はこんなに愚かだったでしょうか?

 いえ、ここ数ヶ月でしょうか、やけにイライラされているようにも思いますが、今は置いておきましょう。


「はあ……カフェテリアからいつも通りティア様が走って来て私にぶつかったなら、転んでいるのはこちらの中庭側でしょう? ティア様はお食事をお持ちなのだから、中庭側から私にはぶつかってはいらっしゃいませんでしょう? あたりに散っているのはカフェテリアのランチとカトラリーですわ」

「あっ……」


 ようやく、お分かりいただけたようですわね。全く、ここまで説明しないとお分かりいただけないなんて。

 ティア様、ティア・マイウェイ子爵令嬢は、令嬢にも関わらずはしたなく走り回ることで有名な令嬢で、先ほどもトレイを持ったまま小走りで移動されてて、足を滑らせて転んだのですわ。まるで見計らったように、わたくしの目の前で。

 見事にトレイに乗っているものを飛ばして。わたくしの前には勿体なくも食事がぶちまけられていますので、前には進めませんね。

 ティア様も、殿下の側近の方々も顔色がお悪いようですが、今更ですわね。

 令嬢らしい穏やかな表情を維持したまま、殿下を正面から視線を合わせるとやたらと動揺されている。


「わたくしは、なにも、して、おりません」

「っ!!」


 分かりやすく、お伝えすると羞恥に顔を真っ赤にされて、王子殿下は足音も荒く「行くぞ!」とティア様と側近の数名を引き連れてそのまま去って行かれましたけど……。謝罪どころか、片付けもされませんのね。


「はあ。みなさま、お騒がせしましたわ。片付けはわたくしの方で清掃を依頼しておきますわ」


 食欲も無くなったので、そのまま事務局へ清掃のお願いと費用は当家へ依頼して、午後の授業まで図書館で現状をまとめることにしましょう。


 まずこのライナス王国には二人の王子殿下がいらっしゃる。

 側妃様のお子であるクレイ・ライナス第一王子殿下と、正妃様のお子である第二王子殿下。お二人は二歳しか離れていない。

 次に、公爵家は3つあり、我がデリア公爵家が筆頭公爵家。祖母は降嫁された王女殿下で、母は正妃様と共に我が国に嫁いでいらした隣国の公女ですので、わたくしは現在この国でもっとも高貴な未婚女性となる。


 第二王子殿下は大国である帝国の第二皇女様と婚約されている。わたくしは第一王子の後ろ盾となるために王命で婚約を結ばされた。国王陛下は側妃様も大層大事にされていますものね。迷惑ですけど。


 こんな王位争いの真っ最中であると言うのに、クレイ殿下は王立学園に入学された元平民の子爵家の庶子である令嬢に心奪われた。愚かですわ。

 仮に降格されるにしても、相手が子爵家の庶子では良いとこ伯爵にしかなれないのに、分かっていらっしゃ……る訳がないですわね。そもそも、王命での婚約ですのに。

 わたくしにとってこそ、不本意な婚約だと声を大にして言いたいくらいだわ。


「……いりませんわね」


 口に出すと、改めてスッキリしましたわ。やっぱり、この婚約いりませんわね。

 問題は、どう切り捨てるか。わたくしはもう飽きましたし、呆れましたし、関わる価値もありませんわね……。

 とは言え、あの愚かな者たちの踏み台にされるなんて。


「……ふっ、ありえませんわね」


 許せませんわ。

 何故、このわたくしが踏みつけられなければいけませんの?

 王家ではなくとも、二国の王家の血を引き、既に王子妃としての教育も終えている筆頭公爵家の令嬢ですのよ?

 かと言って、距離を置くのは逃げたみたいで気にくいませんわね。そもそもこのわたくしに、冤罪にかけようだなんて、いい覚悟ですわ。


 我が公爵家のモットーは恩は倍、恨みは十倍返しですのよ。

 少し、楽しくなってきましたわ。どこから崩して、どう目にものを見せて差し上げようかしら?

 わたくしを悪役にしようとする動きがあるのであれば、乗って差し上げるのが優しさですものね。そう思ったらとても楽しくなりましたわ。



 午後の授業を終えて、今日は急いでそのまま帰宅した。


「お帰りなさいませ、ミシェルお嬢様」

「ええ、ただいま帰りましたわ。ライル、お父様はご在宅よね?」

「はい、現在は執務中かと思われます」

「では、ご相談したい事があると伝えてちょうだい」


 家令のライルに伝言をお願いして、わたくしは自室へ戻って着替える。わたくし専属の侍女が過ごしやすいコルセット不要な室内用のドレスへと着替えさせてくれる。

 やっと一息つけますわね。


「ミシェルお嬢様、本日はミルクティーにいたしました」


 少し甘めのミルクティーに、頬が緩む。美味しい。


「美味しいわ、アンナ」

「ドレスの裾が汚れておりましたので、もしやまたあの方々でございますか?」


 悲しそうに眉を顰めるアンナの心遣いが、温かい。


「そうでもあるし、そうでもないわ」

「お嬢様、それは一体?」


 わたくしの謎かけに、目を白黒させるアンナが素直で、わたくしは少し意地悪く笑ってしまうわ。


「わたくし、今日学園で面白い事に気付いてしまったの。夜、お父様に相談するから、貴女もわたくしの側仕えとして一緒にいてくれるかしら?」

「もちろんでございます」

「ありがとう、貴女がいれば心強いわ」


 アンナの即答に気分を良くして、夕食まで今後について思いを馳せる。



 まず、今の流れはわたくしを『悪役』として、正義を振るうクレイ第一王子殿下とその最愛であるティア・マイウェイ子爵令嬢を正当として認める流れを、誰かが作ろうとしている。

 その目的は?


 考えられるのはわたくし、ひいては筆頭公爵家である我が家の弱体化でしょうか?

 その結果として、第一王子は間違いなく後ろ盾を失い失脚する。ならばそれを機に第二王子を王座へつけるための策略でしょうか?

 それならば、まだ理解できる。


 ふと横を見ると、アンナはいつも通り控えてくれていて用があるのかと寄ってくれる。


「お嬢様、いかがなさいましたか?」

「……考えをまとめたいから、付き合ってくれる?」


 今日気付いたことをまとめて話すとアンナの表情は厳しくなって行く。


「確かに、お嬢様を嵌めようとしているなら、かなり周到に周りが固められておりますね」

「そうよね。私が不利になるように全て整えられているわ」


 そう、出来すぎている。わたくしが悪く見えるような配置、タイミング、殿下方が来る時間差までバッチリあっている。


「お嬢様、今日のタイミングで最初に声を上げたのはどなたでしょうか?」

「……ティア様が倒れる時、殿下の叫び声、その直後に私を名指しする声が聞こえたわね」

「その不届き者は……?」


 今日の一件を思い出すけど、思い出せない。


「姿は見てなかったけど、女性の声だったわ」

「教師は?」

「そう言われれば誰も居なかったわね。確かにそれもおかしいわね」


 普通ああいう広い場所には教師がトラブルを未然に防ぐ為に配置されている。

 そう、教師にまで手を回せる者がいるのね。


「他にもお伺いしても良いでしょうか?」

「ええ、もちろんよ。アンナのお陰で整理出来るわ」

「それでは全ての生徒である令嬢、令息方はお嬢様を嘲笑っていたのでしょうか?」

「いいえ、冷静に状況を見極めようとしていた令嬢、令息たちも少数いたわね」

「どのような方々かお分かりになりますか?」

「そうね、ほとんどは伯爵家以上の高位貴族だったわね。でもどこかの派閥に偏ってたりはしないようだわ」

「流石お嬢様、良く周りを把握されていますね。今の状況からですと、どこが主導しているかは見えませんが、同時に一枚岩では無いのかもしれません」

「確かに、複数の目的は絡んでいそうね」


 クレイ殿下側はどうでしょうか?

 あまり出来が良いとは言えない殿下なので、王命で優秀と評判の令息たちを付けられたはず。

 大臣の子息である侯爵家の次男と伯爵家の三男、護衛を兼ねて騎士団長の次男である伯爵子息。三人共いつも殿下についてはいますが特に存在感がありませんわね?

 おかしいですわね? あのような馬鹿げた行動、普通側近ならば止めようとしますわよね?

 彼等がどんな表情をしていたか思い出せないわね。

 それに、殿下も飛びぬけて優秀ではないものの、王族としてちゃんと教育されていたはずなのに最近の態度はとても王族には見えないですわね……。



「……さま、ミシェルお嬢様」

「っ!」


 考え込んでいたようで、アンナが邪魔をしてしまった事を謝りながら夕食へ向かう準備を始めてくれた。

 今は一旦、側近の三人の事は置いておきましょう。



 ダイニングにつくと、お母さまとお父様、お兄様が待っていてくださった。


「お待たせして、申し訳ございません」

「さして待ってもいない」

「ええ、その通りよ。さあ、夕食にしましょう」


 両親の返事と共に食事が運ばれてくる。

 いつもながら色彩にも気を使い、見た目も味も一流の我が家の食事は掛け値なしに美味しい。


「今日の付け合わせのサラダ、好きだわ」

「見た目にも愛らしいわね」

「ええ、お母さま。こちらは次の夜会の前菜にしたらいかがでしょう?」

「そうね、一口で食べられるようにカナッペにしましょう」


 わたくしたちに侍っているシェフの一人が即座にメモを取り、皿を下げるメイドたちと共に去って行く。わたくしたちの食事は美味だけど、常に次の目的をもって行われている一面もあるから、シェフも一切手を抜くことはない。

 美味しいのは、まず大前提として当たり前なのです。


 とはいえ、やはり美味しいものを食べますと幸せな気分になりますわね。頬が緩みますわ。


「ふふ、よほど気に入ったのだな、ミシェル」

「ええ、お兄様。あの甘味と酸味のバランス、そして見た目に美しい花になっている手の込み方!完璧ですわ」


 力説すると、お母様もお父様も微笑んでくださる。


「なら、あの前菜は我が家の定番にしないとな」

「まあ、嬉しいですわ!」


 夕食が終わると、そのまま家族全員で広めの応接室へと移動した。お父様とお兄様はワインを、わたくしはお母様とハーブティーをいただく。

 場を整え終わったメイドたちが出て行き、家令はお父様の背後に、アンナはわたくしの後ろにそっと控えた。


「ミシェル、私になにか相談があるとか?」

「ええ。お母様もお兄様も聞いてくださる?」


 二人が頷くのを見てから、今日気付いたことを一通り話し終えると、お父様は非常に厳しい顔をされていた。

 そう、わたくしを軽んじ、わたくしを悪役として踏み台にすると言うことは、我が公爵家を侮っているのと同義。矜持を重んじる貴族家、しかも筆頭公爵家としては許しがたい事態ですわ。


「父上、ミシェルの発見は一理あります」

「そうですわね……ここ最近、急にミシェルが下位貴族の令嬢への当たりが強いと言われるようになりましたのは事実です」


 お兄様とお母様の発言を聞きつつ、わたくしはお父様の反応を見ていた。

 眉間に皺を寄せ、厳しい顔をされているお父様は、ひとつ頷くとわたくしを真っ直ぐ見据える。


「それで、ミシェルはどうしたい」


 その一言に口角が上がるけど、止める気はない。

 わたくしは、わたくしを侮り、我が公爵家を侮り、踏みつけようとした者たちを許さない。


「わたくし、ご期待通りに『悪役』になってさしあげようと思いますの」


 お母様は無言で目をきらめかせ、お父様は面白そうに「ほう?」と続きを促す。背後で一瞬息を飲むアンナ。


「もちろん、わたくしに『悪役』と言う役回りを下さった方々にとっての『悪役』ですわ」

「面白そうだね、ミシェル」


 爽やかな笑顔なお兄様。発言とのギャップが怖いですが、頼もしいですわ。


「お前の敵は?」

「まず間違いなく第二王子派」


 第一王子を弱体化させたいならば、そこは筆頭ですわ。


「次に、貴族派」

「……共和国の波か」


 そう五年前、ひとつ国をまたいだ王国の王家が継承者不在で解体され、貴族たちが直接治める共和国となった。王家が無くても、国は保てるという例となってしまった。

 もちろん、共和制には共和制の難しさが既に見えているのだけど、人間は都合の良い所だけが見える生き物ですから。


「我が家、そして我が家門の弱体化も狙うのであれば、可能性はあるかと」

「そうですわね。公爵家は王家のスペアですものね」

「……中々愉快な状況だな。ミシェル、良く見極めたな」


 獰猛に笑うお父様に応えるようににっこりと微笑む。


「うん、全部潰してしまえば余計な手間は省けるな」

「お兄様?」

「愚か者は全て排除して、ミシェルが王になればいいって話だろう?」


 唐突な発言に、みんな絶句してしまったけど、お父様が「悪くない」と言い出し、お母様まで「ミシェルが女王なんて素敵ね!」と言い出してしまう。

 ライルもアンナまで満足そうに頷いているのに、開いた口がふさがらないですわ。

 まあ、でも、無能な王家にこのまま指揮を取らせるよりはよっぽど良いかもしれないわ。


「ほら、ミシェルも満更じゃないだろう?」

「ええ、お兄様。名案だと思いますわ。わたくしに面倒を押し付けようとしたんですもの、みなさま責任を取るべきですわよね?」

「その通りだな。無能は廃して、スペアが本道になるだけだ」

「では、愚か者たちに夢の時間は終わったのだと思い知らせないといけないわね」



 悪役は悪役らしく、邪魔をする全てを排除して頂点を取る。

 ふふふ、折角受けて来た王族になるための教育も活かせますし、完璧ですわね。


 彼らが描いている物語をまずは洗い出す事にして、この日は解散した。デリア公爵家を甘く見たつけ、しっかりと払わせて差し上げますわ!




 ――数日後、面白いほどに情報は集まってしまいましたの。隠す気がないのか、それとも全てダミー情報なのだろうかと悩むくらいあっさりと。

 その中にはわたくしを直接害そうとする計画まであり、これにお父様とお兄様は激怒されたのですが、自ら死にたい方々の多さにお母様は艶やかな笑顔を浮かべていらっしゃいました。更に貴族派の中でも共和派に同調して先導しようとしている愚か者の存在も確認できたので、掃除対象はこれでほぼ決定しました。


 ただし、想定しない事態も起きましたわ。ええ、本当に……。


 第一王子とその側近がティア様と共に、わたくしを断罪すると企画しているパーティーについての情報を入手。そのパーティーの詳細について報告を受けるため、学園の裏庭にあるガゼボでお待ちしていると、現れたのは第一王子殿下の側近である騎士団長の子息である伯爵令息でした。


「あら、わたくしになにかご用でしょうか?」

「デリア公爵令嬢、ごきげんよう」


 そう言い、膝をついて挨拶をする令息に、軽く驚きましたが腹芸は貴族の嗜みですもの。


「まあ、これはご丁寧にマスキーン伯爵令息様」

「常日頃の不敬、深く謝罪いたします」

「……そう、ですわね。今までを思えば、簡単に許すとは言い難いですわ」


 そう、そんな一言で許せるものではないですわ。

 常に数を頼みにわたくしを責め立てる者たちの一人、騎士どころか紳士の風上にも置けない卑怯者の一人を許せるほど慈悲深くはございません。


「お怒り、勿論でございます。ですが、今は時間がありませんので報告を」

「……貴方様からの情報を信じよ、と?」

「難しいのは理解しております。まずは身の潔白から証明をさせていただきたいと思います」


 わたくしを見上げる真剣な目に嘘は感じられなかった。

 とは言え、彼の言う潔白の証明を見届けるまで油断をする気は一切ありませんでしたが、その証明はその日の内にされました。更に彼の父君である騎士団長、中立派筆頭である侯爵家当主と共に、深夜に隠れて当家への訪問で貴族派もやはり一枚岩ではないことが証明されました。


 そうして第一王子、第二王子、そして共和国に影響されている貴族派をまとめて粛清する事で大枠の方向性がほぼ即決で決まってしまいました。

 本当に、怒涛の勢いで話が進み過ぎて疲れましたわ。


「ミシェル様、大丈夫ですか?」


 何故か当たり前のようにわたくしの横に騎士のように立つマスキーン伯爵令息。


 ――あの日、騎士団長と共闘する事になるや否や、第一王子の側近だったため、どんなに不本意でもわたくしを責めなければいけない立場であったことを土下座で謝罪された。


 ゴン!と痛々しい、重い音を立てて、それは見事な、頭を床に打ち付ける勢いの土下座に、流石にお兄様もお父様も引きつっていらしたわ。

 驚きのあまり、思考停止したまま許しを与えた気がしますわ。


『どうか、どうかこれまでのお詫びも兼ね、生涯ミシェル様にお仕えさせてください!!』


 と叫んだマスキーン伯爵令息様の勢いに飲まれて、そのまま受け入れてしまったのだけど……。



「……マスキーン伯爵令息様」

「私はミシェル様の騎士ですので、マークと呼び捨てください」

「マスキー…」

「マークです」


 にっこりと、とてもいい笑顔でこちらに笑むこの男。何故か、気付いたらわたくしの護衛騎士になると横にいましたの。


「……マーク、近いですわ」

「失礼しました」


 そっと一歩下がる様は正しく護衛騎士なのですけど、手のひらを返したようにわたくしに従順なのが気持ち悪いですわ。


「私の任務だったとはいえ、誠に申し訳ございません、ミシェル様」

「……マーク」

「はいっ!」


 何故でしょう、嬉しそうなマークの背後に幻の尻尾が見えるようだわ。なんでこんなに嬉しそうなんですの?


「わたくしの顔色を読んで、先行して話さないでくださいまし。心が読まれているようで怖いわ」

「それは申し訳ございません。ですが、私の推測はあっていたのですね。ミシェル様の疑問にお答え出来たなら幸いです!」


 いえ、だからなんでそう大型犬のようなのですか。

 あの慇懃無礼で高圧的で、愚かだった貴方は一体どこへ捨てて来たのですか!?


「我が身の恥なので、焼いて埋めました」

「なにを!?」

「当時、あまりの不本意さに文句と愚痴を書き連ねました日記を」

「そ、そう……」



 まだ、これからが本番だと言うのに、わたくしはなんだか疲れてしまいましたわ。もちろん、わたくしの矜持にかけて最後までやり切りますけど。

 まずは明後日に迫った、第一王子がわたくしを断罪するためのパーティーがわたくしの反撃開始ですわ!

読んでいただきありがとうございます!


大型犬に似た奴が途中で暴れ出しまして、何故か最後がこうなってしまいました。

おかしいな、もう少し大人しくする予定だったのですが…。

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信頼できる侍女や家族にすぐに相談して冷静に状況を分析する主人公が強く賢くて良かったです。家族揃っての晩餐のメニューに関するちょっとした会話もオシャレ。 ただ、クライマックスに向けて盛り上がったところ…
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