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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
23 データポイズニング

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Data poisoning1 データポイズニング1


「とはいえ、どこまでほんとなんだかな」


 アンブローズは、アリスとの通信を切った。

 テーブルの上の灰皿にトントンとタバコの灰を落とす。

「アリスちゃんがウソついてるかもしれないってこと?」

 ジーンが変わらずプロジェクターを見つめたまま応じる。 



「この状況でウソつくメリットある?」

「俺が気づいていないメリットがどこかにあるのかもしれん」



 アンブローズは水蒸気の煙を吐いた。

「いちいちそういうこと考えるの疲れない?」

「疲れないように訓練されてる」

「いやそれは言われなくても知ってるけどさ」

 ジーンが苦笑いする。


「ドロシーちゃんの姿も確認できたことだし、むずかしいことばっか考えてないで今夜はリンツァートルテで飲みましょ」

「……飲むまえに吐くからやめろ」


 アンブローズは眉をよせた。灰皿にタバコを置く。



「アン」



 その後のドロシーの動きの見当がついたかジーンに尋ねようとしたが、ジーンがさきに話を切りだした。

「さっきからビッグデータに妙な動きがあるんだけど」

「どんなふうに妙だ」

 アンブローズは問うた。


「ぽっかり()いた穴をのぞいたら、底で小さな土砂くずれが起きてる最中で、ファッ?! みたいな感じ」

「……分かるように言え」


 アンブローズは眉をよせた。

「集約した情報からナハル・バビロンに関するものがさりげにぽっかり抜けてるなと思ったまでは言ったと思うけど」

「ああ」


「そこ周辺に、チェルカシアに関連する情報がチラチラ見えかくれしてる」


「チェルカシア?」

 アンブローズは眉をよせた。

 かつての敵国、アルシア連邦共和国に併合されていた国だ。

 アルシアが経済破綻したさいに独立したが、いまだつながりがあるのではという見方もあり、こちらの国に大使館を置くさいは議論になった。

「チラチラ見えた妙な情報の共通点をさっきから考えてたんだけど、チェルカシアかなって」

 アンブローズはジーンの顔を照らすディスプレイのあかりを見つめた。


 

「三年まえにうちの軍の上層部の一人が、チェルカシアに情報を流して逮捕されたってことがあったよね、たしか」



 ジーンが言う。

「ああ」

 アンブローズはそう返事をした。


「逮捕したのは諜報担当の知ってるやつだ。ハニトラで二年近くかけて証拠をつかんだ」


 ジーンが複雑な表情をする。

「……やっぱいるんだ、ハニトラが得意な人」

「クッソかわいい顔して俺らより階級上の少佐っていうやり手だ。ちなみにいまはその任務終了後に結婚した相手と三年遅れの新婚旅行中」

 アンブローズは灰皿に置いたタバコをふたたび手にとった。

「新婚って、いつまでを言うんだろう……」

 ジーンが眉をよせる。


「チェルカシアに流されてた情報は、途中からその少佐がニセ情報にすりかえてた」

「流された分はどんな情報だったんだろ」


 ジーンが(あご)に手をあてる。

「軍事情報には間違いないと思うが……」

 アンブローズはそう答えた。しばらくタバコをつよく吸う。

 


「ナハル・バビロン追ってチェルカシアがチラチラ見えてきたとなると、もしかしたら最奥にはアルシアがいるのか?」



「半世紀まえ派手に経済破綻したあとはずっとおとなしかったけど、そうなのかな」

 ジーンがつぶやく。

「軍上層部はそこまで見当つけてたからこそ、知らんふりして慎重にあぶりだそうとしてたって感じかな」

 ジーンがそうつぶやく。

 アンブローズは指先でトントンとタバコの灰を落とした。


「そうと仮定すると、スッキリとはするな。ナハル・バビロンみたいな独立したばっかの小国にしては、やることがデカすぎる気がしてずっとモヤモヤしてた」


「たしかに、ナハル・バビロンだけだとうちの国をあえてターゲットにする意味あんまり分かんないもんね。こう言っちゃ何だけど、ほかにも乗っとればお得そうな国とか脅威になりそうな国はあるのに」

 ジーンがそう返す。



「アルシアかチェルカシアとナハル・バビロンのつながり調べてみるか? マジで関連してたら警戒されるだろうから、一般人の検索のふりでもして」



「いいね。あしたの勤務中にサボってるふりしてやってみる」

 ジーンがそう応じた。

「仮定の段階だが、三年ぶりにスッキリした」

 アンブローズは大きく息を吐いた。

「俺のおかげでしょ?」

 ジーンがディスプレイを見たまま自身を指さす。

「お礼におまえもちょっとスッキリさせてやる」

「なに?」



「ドロシーが寝てたカプセル型のベッド、あれはずっと(から)だった。AIでつくった眠り姫の姿を俺らとあそこのスタッフに見せて、本人は三年間ずっとこちらを(おとり)にして活動してた」



 ジーンが軽く目を見開く。

「おそらくな」

 アンブローズはそうつけくわえた。


「スッキリしてよかったな。寝室のカメラ、少しのぞくふりしてくる」

 アンブローズはタバコを灰皿で消した。PCを起動したままの寝室に向かう。

「まじか。チューしようとしたのに」

 背後でジーンがぼやいた。





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