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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
18 監視する側も監視されている

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「ツラ貸せって……」


 ジーンが苦笑いする。

「それ、かわいい妹ちゃんに言うセリフ?」

「いつもこんな感じだ」

 アンブローズはタバコを(くゆ)らせた。


「えっ、ていうかドロシーちゃんがアリスちゃん救出したとか?」


 ジーンが画面の方に身を乗り出す。

 アンブローズは煙を吐いた。

「 “隠密(ステルス)”の呼び名は伊達じゃない。基本的にはそんな派手なことはしない」

 ジーンが目を丸くして画面を見つめる。

「画面、もとに戻していいぞ」

 アンブローズはそう指示した。

「了解」

 ジーンが操作パネルの上で指先を動かす。

 だが。

「……あれ?」

「どうした」

「操作が……」

 ジーンが、操作パネルの上で同じ動きをなんどもくりかえす。

 アンブローズは空中に投影された画面を見つめた。

 (から)になったアリスの留置所の部屋で固定されたままだ。

 もとの画面との入れ換えもできないらしい。

「故障かな」

「故障なら早めにそう確定しろ」

 アンブローズは灰皿でタバコを消した。


「ブランシェット准将に夕飯ついでに代わりのPC持ってこさせる」

「切りかえ早いっすね、大尉(キャプテン)


 ジーンがなんども指先を動かす。

「……つか、ハッキングじゃないの? これ」

「クラッキングじゃなくてハッキングか。そう言いきる根拠は何だ、ウォーターハウス中尉」

 アンブローズは問うた。

「直感だけど、タイミング的に」

「タイミング的に。だよな」

 アンブローズは操作パネルの上のジーンの手を退けさせた。

 自身でも操作してみる。

 つい先ほどスムーズに操作できていたパネルが、限定された動きにしか反応しない。


「何すんだ、まったく」

 そうぼやく。さいわいモールス信号は打てるようだ。



 “おまえか、ドロシー”



 そう打ってみる。

「やっぱドロシーちゃん?」

 ジーンが空中に投影された画面を見上げた。

 ザーッと耳ざわりな音がする。

 空中に浮かんだアリスの拘置部屋の画面が、大むかしのディスプレイの砂嵐のようなものを映しだす。

 やがて砂嵐の中央に白い小さな光があらわれ、点滅しはじめた。


「もしかしてモールス信号?」

「……“兄さん、ひさしぶり” 」


 アンブローズは読み上げた。

「 “あんまりお見舞いに来てくれなかったみたいだけど” 」

 アンブローズは無言で眉をよせた。

 かがんで返信を打つ。


 “そこまで(ひま)じゃない”


「ちょっとアン……」

 ジーンが苦笑いする。

「ここでいきなり兄妹ゲンカふっかけないで」

「いつもこんな感じだ」

 アンブローズは答えた。


 画面が切りかわり、もとのアリスの拘置部屋が映る。

 こんどはいつの間にかベッドの上に真っ赤なリンゴが置かれていた。

 


 リンゴの中央に、白い小さな光が点滅している。



「 “兄さん、あいかわらずでうれしい” 」 

 ひきつづきモールス信号のようだ。ジーンが読み上げる。


 “おまえもあいかわらずみたいだな”

 アンブローズはそう返信を打った。



  “ウォーターハウス中尉”



 ドロシーがそう呼びかけてくる。

「はっ」

 ジーンが、デバイスチェアに座ったまま敬礼した。

 ドロシーには、横にいるジーンが見えているのかいないのか。少なくともジーンというバディがいるのは把握しているわけだ。

 アンブローズは目をすがめた。

 

「 “兄のダドリー大尉がお世話になってます” 」

 “兄言うな”

 アンブローズは、即座に返信した。


「 “ウォーターハウス中尉です。こちらこそお兄さんのベッドで朝をむかえさせていただいたり、シャワーをお借りしたり毎晩お世話になってます” 」


 ジーンがつづけてそう打つ。

 アンブローズは顔をしかめた。

「……そのおかしな言い回し、わざとじゃないだろうな、おまえ」


 “ウォーターハウス中尉のことも把握してるってことは、ブランシェット准将がステルスの上官か同僚ってのは合ってるか?”


 アンブローズは問うた。

 まあ、答えが返ってくる期待はあまりしていないが。

「ドロシーちゃん、……ていうか」

 ジーンが横目でこちらを見る。


「無階級のステルスオフィサーの場合、何て呼びかけたらいいの?」

「ふつうに “ドロシー” か “ダドリー” でいいんじゃねえの?」

 

 アンブローズはそう返した。

「いやお兄さんなら何でもいいだろうけどさ」

「お兄さん言うな」

「ミズ・ダドリー……ダドリー閣下」

 ジーンがつぶやく。

「いま特別警察の施設内にいるのかな」

「たぶん違うだろ。べつの場所にいる自分の映像と重ねてこっちに投影してる。たぶんな」


「いきなり入りこんだ “ティーパーティー” の画像にそれやってんの?!」

 ジーンが口元を(こわ)ばらせた。


「うわ……さすがステルスさま」


 “兄さん”

 ドロシーがそう伝えてくる。



 “そのうち(つら)はお貸しします。きょうは三年ぶりのあいさつまで”



 “早めに貸せ”

 アンブローズは、タバコのソフトパックを手にした。一本取りだしてくわえる。


 画面のなかのベッドから、真っ赤なリンゴが消える。

 空中に投影された画面は、もとの(から)の拘置部屋の映像になっていた。





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