Served with red apple3 つけ合わせは真っ赤なリンゴ3
ジーンがもぐもぐとパスタを食む。
「何考えたの?」
「べつに。特別警察のヒューマノイドは任務外のときはどうしているんだとか」
アンブローズは答えた。
「電源切ってるか充電してるんじゃないの?」
「たとえば軍用艦船の下に潜水艦がいて、離れずに真下を進んでいたらどうなるのかとか」
「海軍の訓練とか監視任務でやるやつ?」
ジーンが応じる。
「それを陸軍でやることもふつうに考えられるなとか」
「歩いてる人と影の関係みたいな? 隠れて、コッソリ」
ジーンがパスタをフォークにからめる。
「こんなことを考えてると、上層部もけっこうやってくれるなと」
「盾にしても全然だいじょうぶだったじゃん」
ジーンが応じる
「二人とも、以心伝心で伝わるほど気が合っているようで何より」
ブランシェット准将がクスクスと笑う。
「合ってないですよ。妙なおふざけにムリやり巻きこもうとするわ、シャワー室まで遠慮なく使うわ」
「許可とったじゃん……」
ジーンが顔をしかめる。
「それで准将はどう思います? 潜水艦と軍用艦船について」
「さあて。海軍の訓練にも式典にもあまり出席したことはないので」
准将がほほえむ。
「俺には、准将はそんな顔しながらちゃっかり潜水艦に搭乗してそうな気がしますよ」
「そうかい?」
准将がクスクスと笑う。
アンブローズはとくに何も返さずミネストローネを口にした。
「あーびっくりした」
准将と諜報担当二人が帰ったあと、寝室のPCのまえでジーンが声を上げた。
「何なの? あのとつぜんのピリッピリした空気」
「ピリピリしてたか?」
閉めっぱなしのカーテンをめくり、アンブローズは外を見た。
ベッドのそばのサイドテーブルの位置に戻り、ソフトパックからタバコを一本取りだしてくわえる。
「いつもあんなもんだ」
アンブローズは煙を吐いた。
「おまえも言ってる意味分かってたろ」
「まあ、おおむね」
ジーンが答える。
アンブローズは、ふぅ、と煙を吐いた。
「言わんとしてることに気づいたときは、あーやられたなと思ったけど」
「動揺してないな、おまえ」
アンブローズはタバコを強く吸った。
「どこからたどりついたの」
「たどりついたもクソもない。准将が届けに来たのは夕飯じゃなくてメッセージだ」
灰皿に灰を落とす。
「つまり、軍用艦船が俺たちで潜水艦がドロシー」
アンブローズはタバコを強くを吸った。
「俺もおまえも、はじめから囮だったんだろって話。おもに特別警察の注意を引くための。確証はないが」
「ドロシーちゃんがしてた調査の引きつぎは、アンのほうから志願したって言わなかったっけ。上がそこまで予想してたってことある?」
「ブランシェット准将なら、俺とドロシーの仲は知ってる」
アンブローズは答えた。
ジーンがデバイスチェアに座り、PCの操作パネルの上で指を動かす。
「まあ、なにも囮に使われてたとして、どうこう思うほど純粋じゃないけどな。むしろ国家転覆に関して何も気づいていなかったと思ってた上層部が、それなりの作戦をすでに進めていたってことにホッとした」
アンブローズは煙を吐いた。
「どこで気づいたの」
「あの真っ赤なリンゴのベイクドアップル」
アンブローズは答えた。
「ドロシーらしいくっそメルヘンチックな暗喩だ。オズの魔法使いの “ドロシー” が、真っ赤なリンゴを食おうとするんだか投げるんだかってシーンがある。あれだろ」
横を向いてタバコの煙を吐く。
「ドロシーちゃんて、メルヘンチックな趣味なの?」
「俺がメルヘンチックなのイヤがるのを分かってやってるのがドロシーらしいんだ」
アンブローズは眉根をよせた。
「拉致でも不可解な失踪でもない。元気にステルスオフィサーとして “活動中” で、おそらくブランシェット准将も承知してる」
「あー」
ジーンが宙を見上げる。
「なら口で伝えてくれればいいのに、准将」
「表向き何も知らないことにしておきたいんだろ、おそらく」
アンブローズは灰皿でタバコの灰を落とした。
「そこまでの推測にたどりつけたのは、おまえの以前の言葉もあったからだけどな」
「何か言ったっけ?」
ジーンが眉をよせる。
「ステルスオフィサーに上官や同僚はいるのか。それとブランシェット准将は、年齢のわりにはずいぶん出世してないか」
ジーンが軽く目を見開く。
ややしてから、空中に投射されたいくつかの映像の前後を入れかえる。
ナハル・バビロンの役所施設内と思われる映像は、あいかわらず人の動く影すらない。
「あののほほんとした美形顔にすっかり騙されてたな」
アンブローズは顔をしかめた。




