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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
16 人工衛星群ティー・パーティー

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Satellites “Tea party”2 人工衛星群ティー・パーティー2


 「人工衛星(サテライト)ティーパーティ」とモールス信号を送ると、アリスがふたたびホワイトボードに何かを描きこちらに向ける。


「たたんだタオル、首つりのヒモ――投げ縄かな? 口、もひとつ口、編んだヒモ、たたんだタオル、パン」


 ジーンがふたたびヒエログリフの一覧を出して照会する。

「correct」

「 “ティーパーティー” で正解か」

 アンブローズはみじかくなったタバコを消した。

「もうアクセスはじめてますけど」

 ジーンが苦笑いする。

「つか、これ傍受させてなに見せる気だ? 何で自分でやらなかった?」

「やめるでありますか? 大尉(キャプテン)

 ジーンがいったん手を止めて問う。

 アンブローズは、もういちど空中に投影されたアリスのいる部屋を見上げた。



「……いい、続行しろ。仮になにかあっても、休暇中の隊員と除隊した隊員がやったことだ。准将にサクッと隠蔽(いんぺい)させればいい」



「アンのためにカード使いまくりなんじゃないの? ブランシェット准将」

 ジーンが苦笑する。

「とりあえず護衛ヒューマノイドのデータ保存して、そっちは切るか」

 質素なベッドに座るアリスの画像をながめる。

 待機状態にすることもできるが、いったん切ったほうが面倒を避けられるだろう。


「接触を切るって伝えるね」


 ジーンが護衛ヒューマノイドのデータ画面を開き、モールス信号を打とうとする。

「まて。おまえじゃまた疑われる」

 アンブローズは横から手をのばしてキーボードを打った。



 “了解。いったん切る。口腔ケアして寝ろ”。



 ジーンが顔をゆがめる。


「 “おやすみアリスちゃん” って打とうとした……」

「おまえはまだまだあのお嬢さまが分かってない」


 アンブローズはタバコのソフトパックを手にとった。

 軽くふり、一本をとりだしてくわえる。

 唾液を染みこませて、きょう何本めになるのか分からないタバコの火をつけた。



「ドロシーちゃん、なんかあったの?」



 あらためてキーボードを操作しながらジーンが切りだす。

「いなくなったそうだ」

 アンブローズはみじかく答えた。


拉致(らち)

「……とも考えられるが」


 先日のナース姿のヒューマノイドの襲撃以降、スタッフが生身かどうかもチェックに入れるよう准将に進言した。

 その裏をかいて生身の人間に襲撃させた可能性も考えられなくはないが。



「単に目が覚めたのかもしれん」



 アンブローズは水蒸気の煙を吐いた。

「ちなみにドロシーちゃんって、スタッフさんにあいさつもしないで帰っちゃうタイプ?」

「このまえの件があるんで、療養所のスタッフは疑うよう准将を通じて伝言を残しておいた」

 なにげにブレインマシンの時計を見る。

 准将からまた連絡があったさいには、こちらは寝たふり必須だなと考える。

 


「准将があわてた口調じゃなかったところをみると、拉致ではない確証でもあるのか……」



 アンブローズはゆっくりと煙を吐いた。

「ブランシェット准将ってあわてたりする人?」

「なにがあっても映画のイケメンスターみたいにのほほん微笑してる」

 

「ドロシーちゃんの目が覚めたとして偶然? なんか計ったようなタイミング」


 ジーンがキーボードの操作をつづける。

「いつ目覚めてもそう思うんじゃないか? いまの状況じゃ」

 アンブローズは答えた。



 隠密の情報将校、ステルスオフィサーが情報をとられそうな事態に意識的に昏睡状態におちいらせる機能を持つ脳内のチップ。



 重要な情報の流出をふせぐのと、拷問の苦痛から逃れさせるためのものなのだと聞いているが、そもそもいつ目覚めるかはプログラムされているのか。


 ドロシーが三年間も眠ったままでいることから、単に植物状態におちいらせるだけの装置ととらえていたが。

 水蒸気の煙を吐く。

 彼女が情報将校の中の情報将校である以上、兄と慕っている自身にも内密にしていることは山ほどあるはず。



「そういえばステレスオフィサーの上官ってだれ。そもそもいるの?」



 ジーンが尋ねる。

「知らん」

「非常時には全階級に命令できる権限を持つっていっても、ステレスオフィサーをとりまとめるか、せめてストッパーになれる立場の人は必要だよね?」

 アンブローズは無言で煙を吐いた。


「でないと権限の濫用(らんよう)をふせげないんじゃ」


 ジーンが、空中の画面につぎつぎとデータを羅列(られつ)した画面を開く。

「……ていうか、ステレスオフィサーって複数いるの? ドロシーちゃんだけ?」

「そんなん知るか」

 アンブローズはタバコを強く吸った。



「ステレスオフィサー同士で権限の濫用を監視しあう感じになるのかな」

「それは考えられるな。俺らも将校のプライベートの内偵とかやらされるときあるしな」



 アンブローズは、ベッドのサイドテーブルに置いた灰皿を指先で引きよせた。

 とんとんと灰を落とす。


「内偵か。何回かやったことある。おかしな付き合いがないかとか、変な思想の団体に取りこまれてないかとか」


 「まあでも」とジーンがつづける。

「俺なんか、アンと組むまでステレスオフィサーの存在なんて都市伝説だと思ってたからね。もし上官がいても、さらに極秘に決まってるだろうけどさ」

 空中につぎつぎと “ティーパーティー” のものらしきデータ画面が開かれる。

 いま開かれているページは、各国の人工衛星の軌道や現在の位置データだとアンブローズは気づいた。



「思うんだけどさ。これ航空宇宙軍に話通さなくて平気?」



 ジーンが問いかける。

「バレたらあとで准将が話つけるだろ。とりあえずやれ」

 アンブローズは煙を吐いた。





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