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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
15 フランス人形捜索中

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I seek you1 フランス人形捜索中1


 PC内臓のデバイスチェアがある寝室にジーンをうながす。


「何日かぶりだけど、……代わり映えが」

 ジーンがうす暗い寝室内を見回す。

「黙ってはじめろ」

 アンブローズは(ひじ)かけについた起動パネルに触れた。

 空中に「welcome」の文字が現れる。

 ホーム画面に切り替わるのを横目で見て、ジーンを目でうながした。


「このまえも思ったんだけどアン……」


 デバイスチェアに座りつつジーンが眉をよせる。

「何だ」

「ホーム画面、味気ないね」


「……いちいち他人のクセや好みにツッコんでないと死ぬのか、おまえ」

「ドロシーちゃんの顔写真に変えてあげよっか」

 ジーンが肘かけの操作パネルをさぐる。


「いらん。早くやれ」

 ジーンが米噛みのあたりに手をそえる。

 ブレイン・マシンを起動させたのか。 



 先日、墓地の画像を傍受させたさいにスクエアーに関するデータも思う存分とっていたのは知っている。



「とりあえず自社ヒューマノイドの社外秘データ保存してるらしきファイル開いてみるけど」


 ジーンがパネルの上でわずかに指を動かす。

 空中に無数の記号と数字とアルファベットとが羅列(られつ)された。

 アンブローズは身を乗りだして画面を見る。


「もう少し手っとり早く、製造番号みたいなものないのかな」


 そう独り言をつぶやき、ジーンがあちらこちらのファイルを開ける。

「NEICのサイバー空間でこんなことしてると、だいたいこのあたりでアリスちゃんと鉢合(はちあ)わせするんだけど」

「こんなあっという間に会うのか……」


 アンブローズは眉をよせた。

「夜十時以降はお休みの時間らしくて現れないけど」

「ガキはもっと早く寝るようにサイバー内でしつけとけ」


 アンブローズは自身の胸元をさぐった。

 タバコをリビングに置いていたことに気づき、つかつかと出入口のドアに向かう。


 リビングに戻ると、つけっ放しにしていた国会中継の立体映像が目に入った。


 首相が答弁している最中だ。

 ニセモノか、とあらためて目をすがめる。

 国会議員の何人かにすり替わっているということは、国家転覆の準備段階のような法案をとっくに通してるだろうか。

 いまのところは、あからさまなものが通った覚えはないが。

 すり替わった人数は少なくともまだ過半数以下なのか。

 唾液でタバコをつけ大きく吸う。

 くるりときびすを返して寝室へと戻った。


「終わったか?」


 そう話しかけると、ジーンがきわめてイヤな顔をした。

「本気で言ってないよね……」

「時間かかるか」

 アンブローズは二本指でタバコをおさえた。


「ヒューマノイドの人工脳にアクセスできるらしきページは見つけたけど、アリスちゃんの護衛ヒューマノイドを特定できる手がかりがない」


「特定か……」


 アンブローズは水蒸気成分の煙を吐いた。

「どうしてもムリか」

「一つ一つあたるしかないかな」

 記号と数字、アルファベットとが不規則に羅列された画面をジーンが見つめる。

 地道にやるつもりなのか、パネルに置いた指先を動かしはじめた。


「こうなると一般家庭の中までぜんぶのぞいちゃうことになるかな。……違法じゃん」

「おまえも今さらだろ」


 アンブローズはタバコを強く吸った。

「団地の奥さまの情事とか見ちゃったらどうするの……」

「どうもしない。そのときは、つぎの映像に移れ」

 「なんだ団地って」とつづけてアンブローズは眉をよせた。

 ジーンが指先を動かす。

 しばらくしてから眉をひそめた。


「……ほんとうにゲイじゃないよね、アン」

「奥さまの情事に反応しなかったらゲイ認定なのか、おまえ」


 アンブローズは横を向き煙を吐いた。

「それともアボット社の重役を脅すか締めるかして、どのデータか吐かせてくるか」

「物騒なことをとうとつに言わないでよ……」

 ジーンが顔をゆがめる。


 やはり一つ一つあたって行くつもりらしい。空中の画面に次つぎつぎと一般家庭の室内や工場内部などが表示される。


「アリスちゃんがアンの行動追ったとき使ってたのがこれだとしたら、どの場所にいるヒューマノイドの見たものなのか特定する機能があるはずだと思うんだけど……」


 試しにあちらこちらを開いたのか、ヒューマノイドの内部構造の立体画像まで現れる。


「このままだと数日かかりそうだな……」

 ジーンが憂鬱(ゆううつ)そうな顔で画面を見上げる。

「徹夜でやったら二日くらいか」

「なにその無茶な計算」

 ジーンが鼻白む。


「んでこれつまり、何さぐってんの」

「アリスが連行のさい、護衛ヒューマノイドを連れて行った可能性があるかと思った」


 ジーンが無言でこちらを見る。

「見た目は未成年どころか幼女だからな。世話係が必要とか何とか理由つけて」

「つまり、留置場のアリスちゃんの様子が分かる……?」

 ジーンがにわかに真剣な表情になり、パネルの上の指先を動かす。



「それくらいで済んでたら俺もホッとするんだが……」

 空中の画像を見上げ、アンブローズは眉をよせた。





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