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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
14 すべてフェイクかもしれない

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1It may all be Military Deception2 すべてフェイクかもしれない2


 アンブローズは無言で目を見開いた。


 さすがに困惑して、しばらくブランシェットの顔を凝視する。

 准将の両脇にすわる若い諜報担当の二人は、落ちつきはらって合成コーヒーを口にしている。

 事前に聞いていたのか。

「確かですか」

「確かだ」

 ブランシェットが答える。


「首相と下院議長……」


 ジーンがつぶやく。

「じゃ、いまのその人らは?」

「整形したニセモノ……もしくは」


「もしくはヒューマノイド」


 ブランシェットが言葉を引きつぐ。

「いどきわざわざ整形した替え玉は使わないだろうな。人をすり替えるならヒューマノイドのほうがかんたんだし、替えもきく」



「ヒューマノイドという確実な証拠がほしいところですが……」



 アンブローズはブランシェットに進言した。

「国会議事堂入口のDNAチェックは、たぶんデータを元につくった人工生体手袋(スキン)等で通っているのだろうが、それを疑ってチェックするとなると理由が必要になるな」

「手っとり早く俺が確認してきますか。居場所のだいたい決まってる二名くらいならすぐですが」

 アンブローズはそう提案した。


「二名か。二晩か」

「一名につき一時間。一晩で済みます」


「もしかしてその話って……アン。ね、ちょっと」


 ジーンが苦笑して右手を挙げる。

「アレだけはまだまだヒューマノイドがごまかせない部分だからな」

 アンブローズは背もたれに背をあずけた。安いイスが、ギッと音を立てる。


「タバコを渡して唾液でつけられるかどうかでよくない? 俺のニセモノにもやってたでしょ」


「もちろん、あれで済めばそうする。だがおまえ」

 アンブローズは淡々とつづけた。


「知らない男にいきなり “タバコ吸いませんか” と言われるのと、“二枚で寝ませんか” と言われるの、どっちを警戒しない」


 ジーンが複雑な表情で固まった。

「まあ、その方法についてはあとでもいいだろう」

 ブランシェットが合成コーヒーを口にする。軽く顔をしかめた。

「ミルクは」

 そう尋ねてカップの中を見る。

 アンブローズは無言で立ち上がり、キッチンの旧式の冷蔵庫からミルクを持ってきた。


「バイオポリマー・ジェル内臓じゃないのか。いつの時代の冷蔵庫なんだ、それは」


 ブランシェットが顔をしかめる。

「半世紀以上まえのですね。ここにいた不法滞在の移民が使っていたものです。きちんと保存できますのでご心配なく」

 アンブローズはそう答えて紙製のパッケージからミルクをそそいだ。

 コトリと小さく音を立てて、ミルクピッチャー代わりのカップをテーブルに置く。

 ブランシェットが、こわごわとコーヒーにミルクをそそいだ。

 しばらく眉をひそめて渦をまくミルクをながめる。


「ミルクはふつうのものか」

「安物ですが」


 アンブローズはそう返した。

 ややしてからブランシェットが、意を決したようにミルク入りコーヒーを口にする。

 おもむろに話をつづけた。


「回収要請のあった遺骨以外にも不審な骨はあったのか?」

「あったようですね。掘る時間はなかったですが」


 アンブローズは答えた。

 そもそもどうやって地中の遺骨を見つけたのかという疑問に気づかれれば、軍はスクエアーの機能に言及しなくてはいけない。

 まだまだ使えそうなときに、アボット社が捜査を受けるようでは困る。

 ブランシェットがチラリと目線を上げた。

 目を合わせてきたが、アンブローズは平然と見返す。



「ほかの遺骨は何者かな」



 ブランシェットが、カップをテーブルに置く。

「首相と下院議長ときたら、ほかも要人の可能性がゼロではないですね」

 アンブローズはそう答えた。


「軍の上層部や将校は? きちんと全員そろっていますか?」

「内密に調べはじめたところだ。この二人に協力してもらってる」


 ブランシェットは両脇の二人を指した。

「こうなるともう、おまえは軍に戻る方向で考えてもいいんじゃないかと。おまえがまっさきにすり替えられかねん」

 ブランシェットが眉をよせる。

「それは覚悟の上というか。気をつけますと言うしか」

 アンブローズはコーヒーを口にした。

「何なら違うIDを発行する。以前から考えていたが、やっと手を回せそうだ」

 ブランシェットがそう提案する。


「おまえまで顔を変えるのは、最終手段でいいだろう。――当分はあまり動くな。いっそ休め」


「執務室まえであんな騒ぎ起こして、シレッと戻るのか。そこの整合性はどうします」

 アンブローズはハッと息を吐き笑った。

「騒ぎ?」

 ジーンが目を丸くする。どんな騒ぎを想像したのか。

「人の目なんか気にする(たち)でもないだろう――ああ、それと」

 ブランシェットが上着の内ポケットをさぐる。

 一封の封書をとりだした。



「アボット社の社員を名乗る人物が、内密におまえに渡してくれと」



 アンブローズは怪訝(けげん)な顔になり受けとった。

 ブランシェット経由で自分にこんなものを渡してくるということは、こちらの状況もアリスの事情も知っているアリスの最側近の重役だろう。


 届けたのは、アボット社の特殊処理班あたりか。


 きわめてイヤな予感がしつつ、なれない手つきで封書を開ける。

 中の便箋(びんせん)に簡潔にタイピングされていたのは、アリスの特別警察による逮捕を知らせる文だった。


 ジーンが横からのぞく。

 アンブローズはジーンに向けて便箋をかかげ、目を合わせた。





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