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FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
14 すべてフェイクかもしれない

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1It may all be Military Deception1 すべてフェイクかもしれない1


 ハイゲート墓地からとりあえず二体分と思われる遺骨を掘りだし、アンブローズとジーンはつぎのヒューマノイドが来るまえにと退散した。


 ジーンを通じて軍の鑑定部署に遺骨を回したのは、おとといのこと。

 DNAだけなら数十分あればデータが出る。


 国内の人間であれば約百年まえの人間まで照会が可能だが、軍からの連絡は遅れていた。


 さきほどNEICの勤務時間を終えて訪ねてきたジーンが、テーブルについたままなんども米噛みに手をあてているが、そのたびに軽くため息をついている。

「まだか」

 アンブローズが問うと、ジーンはうなずいた。



「何かこう……オーディションの結果待ってるアイドル志望の美少女ってこんな感じかな」

「アイドル志望になったことないから知らん」



「静かだと思ったら、アリスちゃん来てないからか」


 ジーンが少し身を乗りだして玄関のほうを見る。

「毎日きてたわけじゃないしな」

 アンブローズは灰皿に灰を落とした。


「あのアリスちゃんの監禁動画がほんとなら、アンやばくない? いざというとき軍に支援求めにくい立ち位置にいるんだから、スポンサー大事でしょ」

「アボット社の上層部はバカじゃない。三年まえの事件が特別警察のアンドロイドの不具合なんて世間に知れたら破滅だし」


「ああ……」

 ジーンが相づちを打つ。


「アリスちゃんの意向があろうがなかろうが、アンの支援はつづけてくれるってことか」

「いざとなったらあの事件の裏とアリスの正体暴露するぞと脅すという意味だ」


 ふう、とアンブローズは水蒸気の煙を吐いた。

 ジーンが苦笑してこちらを見る。

「勉強になります、大尉(キャプテン)

「ああ」



 ふいに玄関口からガチャガチャと音がした。



 古いタイプのドアノブを雑に回している音だと気づく。


 二人で顔を合わせ、キッチンの向こう側にある玄関口のほうをうかがった。

 玄関ドアの向こうから二、三人ほどの靴音と、ぼそぼそと話し合う声が聞こえる。


 アンブローズは、ジーンに目配せした。


 ジーンがうなずき、イスの背もたれにかけたガンホルダーから銃をとりだす。

 自身もテーブル横の棚から銃をとりだし、弾数を数えた。

「特別警察かな」

 ジーンが声をひそめながら席を立つ。

 こちらに目配せしてから、ゆっくりと玄関口に向かった。


「いちばんやつらに気づかれにくい潜伏場所だと思ってたんだが……とうとう突き止められたか」


 反対側の窓のほうを警戒しながら、アンブローズはジーンの動きを目で追った。

「不法滞在の人、多そうなところだもんね」

 言いながらジーンが玄関ドアの横に立つ。

 ふたたびガチャガチャと回されはじめたドアノブに手をのばした。



 つぎの瞬間、玄関ドアを上品にノックする音が聞こえる。



「いないのか? わたしだ。ブランシェットだが」

「は……?」

 アンブローズは気の抜けた声をもらした。





 映画俳優かジャパンアニメの美形脇役かと思うような容姿のブランシェット准将が、旧式の賃貸住宅で安物のテーブルにつく姿は、えらくギャップがある。


 護衛につけてきた二人の若い陸軍将校は、どちらも諜報の人間だ。

 参謀部の施設内で見かけたことがある。


 できれば屈強な兵士を連れてほしいものだが、確実に秘密を守ってくれる隊員を選んだということか。


「どぞ」

 ジーンがウェイターよろしく各人に合成コーヒーをだす。

 将校クラスは軍の施設内で育っているので、ふだんは本物のコーヒー豆から焙煎されたものを飲んでいる。

 諜報担当なら潜伏場所によっては合成も飲んでいるだろうが、アンブローズはなんとなく各人の反応をながめた。


「香りはうすいけど、味は遜色(そんしょく)ないから飲んでみ?」


 ジーンがなれなれしく諜報担当の一人の背中をポンとたたく。

「知り合いか?」

 アンブローズは尋ねた。

「ううん。しゃべったのは、いまがはじめて」

 「ね?」とジーンが諜報担当に同意を求める。

 そういえばはじめからなれなれしいやつだったとアンブローズは思った。


物怖(ものお)じしないんだな。ウォーターハウス中尉」


 ブランシェットがにこやかに話しかける。

「いや緊張してますよ。ずっと上の階級の初対面のかたとお話するなんて」

 はは、とジーンが笑う。


「何ですかこんなところに。危険でしょう」


 アンブローズは眉をひそめた。

 吸いかけだったタバコは、准将が部屋に入ったさいに消した。

 その分さきほどからコーヒーをちびちびと口にする回数が増えている。


「おとといウォーターハウス中尉から回収要請のあった遺骨の鑑定が終わったんだが」

「ええ」


 アンブローズはうなずいた。

 ジーンを通じて連絡をよこせばいいだろうに、この人のこういったところも困りものだと思う。

「まあ直接伝えるべき内容かと思ってな……」

 ブランシェットが、テーブルの上で品よく手を組む。

「遺骨は、特別警察の上役のものではなかったんですか」

「違った」

 ブランシェットが答える。



「現首相と、現下院議長だ」





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