Combat Sister 近接戦闘シスター1
銃声が響く。
アンブローズの撃った弾丸がシスターの顔のそばの茂みに飛びこみ、ガサッと音を立てる。
シスターが口の両端を上げる。
外した。
アンブローズは舌打ちした。
音のない荷電粒子を発射する銃も開発されてはいるが、発射と同時に轟音で危険を知らせることもできる前時代の銃のほうが、現代はむしろ合理的な武器という見方もされている。
アンブローズもそういった見解で前時代の銃を使っているが、特別警察のヒューマノイドが使っているのはどういった考えなのか。
やはり生身の人間に似せるためなのか。
ヒューマノイドのシスターの持つ銃の銃口から硝煙がただようのを凝視しながら、アンブローズはそんなことを考えた。
「よくそんな西部劇のガンマンみたいな正面からの撃ち合いできるね」
ジーンが横でわざとらしく引いたようなしぐさをする。
「おまえも庇われてばかりいないで援護しろ」
「さっきの身をていしての庇いかたで、もうお姫さま気分になっちゃってー」
ジーンがゲラゲラと笑う。
笑いたくもないジョークなので、アンブローズは無視してのこりの弾数を確認した。
「ここには誰が埋められてる」
アンブローズは特別警察の武装シスター型ヒューマノイドにふたたび銃をつきつけて問うた。
シスターが同じように銃をかまえながら大きな目でこちらをギョロリと睨む。
威嚇のための睨みというより、人工眼球の奥にある何らかの機能を起動させたのだろうとアンブローズは見当をつけた。
「答えろ。誰が埋められてる」
武装シスターの見開いた眼球の奥からカシャカシャというかすかな機械音がする。
「処刑判決が下りた者に答える義務はありません。なぜならその後の人生における時間はまったくのゼロだからです。答えれば約三十六秒のタイムロスが生じるとみられます」
「やな答えかたするなあ」
ジリジリとヒューマノイドの横の位置に回ろうとしていたジーンが、苦笑いする。
「約三十六秒か。三十六秒で答えられる人数……」
ヒューマノイドのシスターに銃をつきつけながらアンブローズはつぶやいた。
「人ひとりのフルネームを言うのに一.五秒から二秒かかるとして、十八人から二十四人……」
「イ・ホさんとかだと?」
茂みに隠れてジリジリと移動しながらジーンが問う。
「いるのか、そんな知り合い」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソさんとかだと?」
「……何のためにそんなもん暗記してんだ、おまえ」
アンブローズは顔をしかめた。
シスターが、こちらに銃口を向けつつジリジリと足もとを移動させる。
アンブローズもそれに合わせて立つ位置を変えた。
「埋まってんのは特別警察の上層部だけじゃないのか……?」
答えはしないだろうと思いつつアンブローズは問うた。
特別警察の生身の上層部は、二十人前後もいただだろうか。数人ほどだったと記憶しているが。
だとすると、あとは誰だ。
ヒューマノイドにすり替えられている要人は、思ったよりも多いのかもしれない。
その推測に行きあたり、さすがにゾッとする。
「やっぱ機能停止させて人工脳のデータとりだすのが手っとり早いか……」
アンブローズはつぶやいた。
諜報担当としてはそうすべきなのだろうが、銃口を突きつけ合っているのだ。生命の危険ギリギリだ。
ふいにヒューマノイドのシスターが、ククッと笑う。
「やめにしません? あなたたちのほうが格段に分が悪い」
アンブローズは、目をすがめた。
「わたしたちヒューマノイドは、たとえ全身を失っても人工脳さえのこれば情報は守れる。だが生身のあなたがたは、キズを負って血液を大量に失っただけで脳も機能停止する」
くそ分かる。
アンブローズは目をすがめた。
こういった言葉で生身の人間は、恐怖心をあおり戦意を喪失させることもできる。
こんな提案をなげかけるのも戦略として特別警察のヒューマノイドの脳にはインプットされているのだろう。
「たしかに分が悪いなあ……生身だし」
茂みに身をひそめて移動していたジーンが声を上げる。
こめかみに手をあてているようだが、ブレインマシンで何か検索していたのか。
「ね、ここは逃げない? アン」
ジーンがそう声をかけてきた。




