The Neo East India Company2 ネオ・イースト・インディア・カンパニー2
「タイミング変だが言っておく」
「何ですか」
「俺がさぐってんのは特別警察だ。軍専用の回線ものぞかれてる可能性があるんで、准将とはあまりデジタルでのやりとりはしなかった」
「さきに言ってください」
ジーンが顔をゆがませる。
「アナログでやりとりするには、データ量多そうだったからな」
「アナログ時代の情報将校が聞いたら怒られそうなセリフですね、それ」
アンブローズは、タバコを指のあいだにはさみゆっくりと吸った。
「このまえのおまえのニセモノが軍専用の回線についてさぐりを入れてたのと、俺の遺伝子情報をとろうとしたの見て、こっちまでは入りこまれてないと見当つけた」
「ちなみに准将と、デジタル抜きでどんなふうに連絡とり合ってたんですか」
「酒場なんかで、メモを、こう」
アンブローズは少しかがんで、テーブルの上で手先をすべらせた。
ジーンが目が丸くして手先を見る。
「古典映画みたいですね」
「俺もはじめてやった」
タバコを手でおさえてふたたび吸う。
「ちなみに書いてある内容は、変色温度調整剤入りのインクだから体温で消える」
「ていうかブランシェット准将それやったんですか? あの人がやったらマジで映画みたいじゃないですか」
「んだな」
アンブローズはそう相づちを打った。
「いまのところ、そこまでやらなくてよかったのがさっき判明したけどな」
横を向いて水蒸気の煙を吐く。
「ああ、俺のことは呼び捨てでいい」
「それもタイミングちょっと変なんですが……」
ジーンがおもむろに残りのコーヒーを飲み干した。
「……ああ、砂糖残った」
カップの底を見てつぶやく。
見ているだけで口のなかが甘ったるくなる気がして、アンブローズは顔をしかめた。
「ちなみに関係性はどうします」
カップの底を見ながらジーンが問う。
「ここにたびたび出入りすることになるでしょうから、怪しげな人がきてたなんて近所の人に証言されないよう設定決めておいたほうが」
「友人」
アンブローズはみじかく言った。
「何の」
「学生時代か?」
「二十代半ばになって学生時代の友人とたびたび自宅でつるむ人って、あんまり多くなさそうな」
ジーンが軽く眉をよせる。
「同じ工場で働いてて意気投合したでいいだろ」
「それだって共通の趣味でもないとふつうは」
ジーンがコーヒーカップをゆらす。
「大尉、趣味は何です」
「アンブローズだ」
アンブローズは横を向いて煙を吐いた。
「とくにないな」
「無趣味ですか」
ジーンが応じる。
「せっかくだから趣味作りませんか」
何かめんどくさい感じに話が逸れたてきたなと思いながら、アンブローズはテーブルの上の灰皿に指を引っかけて自分のほうによせた。
タバコを指先でたたいて灰を落とす。
「ちなみにおまえの趣味は」
「んー」と唸ってジーンが宙を見る。
「海外の暗号のやりとりを傍受して、正当な受けとり手と解読の速さをこっそり競い合うことですかねえ」
「……趣味なのか、それ」
アンブローズは眉をよせた。
「このまえ古典的な暗号だなと思ってサクッと解いたら、某国の国際法違反行為をうっかり突き止めちゃってびっくり」
あははははとジーンが声を上げて笑う。
天才情報将校なのか、ただのぶっ飛んだやつなのか。
アンブローズは眉をひそめた。




