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この作品は初めて書く想像の小説なので、プロットに時間が想像以上に掛かっており投稿がかなり遅いです。ご容赦ください。
ある所に、少女がいました。彼女は、普通の家庭で生まれました。そんな彼女は、幼稚園の頃些細な事で虐められ、人間不信に陥りました。彼女は小学生の頃虐められ、子供を信じれなくなりました。小学一年生の時、虐められていた彼女に「遊ぼう」と優しく声掛けたあの子は彼女を騙し、彼女の事を嘲笑いました。彼女は女性を信じれなくなりました。小学四年生の時、通っていた習字教室で虐められるようになり、ずっと仲の良かった先生に助けを求めました。何回も「彼女たちが私に酷い事言ってくるんです。やめなさいと言ってくれませんか」と訴えました。ですが先生は出来の悪い彼女より、出来の良い彼女たちを優先し、彼女の助けを無視しました。彼女は大人を信じれなくなりました。中学生の頃、ようやくできた男の友達と喧嘩をし虐めに発展しました。彼女は男性を信じれなくなりました。しかし、大人になった彼女は未だに愛を欲していました。彼女は憧れていました。漫画やアニメに出てくる、ふさぎ込んでしまった女性に優しく手を差し伸べ、救ってくれる主人公という肩書を冠した男性の存在に。私も救ってくれるんじゃないか、いや、ここまでこんな事しかなかったなら、きっとそんな幸運が私にめぐってくるに違いない!信じて止みませんでした。その希望だけが、彼女の原動力でした。では問題です。仮にそんな人物に出会って、本当に幸せな時間を過ごしている時、腑とその男性が裏切ったとしたら彼女は一体どうなってしまうでしょうか。
「…っひっ!」
朝6時半頃、寝室で一人、彼女、相生は小さな悲鳴を上げた。
また…、また私、こんなものを。
彼女の目の前には、彼女のモノではない筆跡で文章が綴られた紙が散らばっている。事の発端は三日前。彼女が目を覚ますと、その視界にはいつもの安眠用ポスターの貼られた天井ではなく、寝室に置かれたちゃぶ台と、裏紙に綴られた小説の束が映った。枚数にして大体70枚ほど。その内容は、ある男子中学生の中二病を拗らせたような気味の悪いものだった。だが、彼女はその主人公の名前に既視感を憶えていた。それからこの三日間、彼女は起きる度にその状態になっていて、どうしようもなくその小説を読みたくなり、読んで、より恐怖を覚えるという行動を繰り返していた。それは、この日も例外ではなかった。
「その日の午後、彼は自室で勉強しながらいつも通り思考していた。はぁどうした…」
過度なストレス、心労、睡眠不足、不摂生が限界に達していたこの日、彼女の集中力は著しく低く、無意識に声に出して読んだ。その様子は、彼女が如何に内容を理解するように意識している、差し向けられているかを正確に世界に示していた。それから約30分後、彼女は小説を読み終えた。
「天罰超越一章完…やっぱり、間違いない」
アイツはやっぱり、私の事…。ダメだ、ダメだ。もう出社の準備しないと。
「うっ」
勢いよく立ち上がった彼女は猛烈な立ち眩みを食らい、横にあったベッドへと倒れこむ。ベッドのシーツには、前日していた化粧が少し付いてしまった。
「って早くしないと、最近は隈が酷くて化粧に時間掛かっちゃうからね」
寝室を出て、一週間前に泣き崩れ怒り狂った際に壊したマグカップの破片、写真立てが散らばり、ぐしゃぐしゃになったカーペットが敷かれ、元気のない植物、溜まった洗濯物が山積みにされたリビングへと赴く。
「あー、夜やろう!」
そうがむしゃらに叫び、リビングを抜け洗面所に行き、40分かけて身なりを整える。
「よし!あと15分!」
リビングに備え付けられたキッチンで朝食の準備を始める。食パンをコンロに備え付けられたトースターに放り込み、野菜室からレタス2/4玉、ミニトマト6個を取り出し、皿にそれっぽく乗っける。パンが焼けるまで昨日暴れて断たれてしまったテレビの前への道を開拓していく。
「…あー、これ壊しちゃったか。これ高かったのになー」
彼女の手には引きちぎられたイヤホンがある。それ以外にも、机の上に置かれていたであろう個包装のお菓子を入れるための器の破片、踏みつぶされた個包装のチョコたち、倒れた可愛らしい服が何枚も掛かったスタンド、体液で濡れた色とりどりのティッシュ等等を片付けている内に「チーン!」という音が部屋に鳴り響く。
「焼けたー」
床に落ちていたボタンが1/3程潰れたリモコンを操作してニュースを流し、キッチンへ向かう。香ばしい匂いを纏う食パンを皿に移し、冷蔵庫から出したバターをバターナイフで塗っていく。そして如何にも健康そうなその朝食を手にテレビの前に移動する。リモコンを操作し、同じようなニュース番組の中から一つのチャンネルを選ぶ。リモコンを操作する音が止んだ部屋から焼き立てのパンを頬張る音が新たに弾ける。
「ひぇー、強盗ってまたー?怖いねー、ね?圭一?」
机の上に沈黙している食パンの乗った皿の奥の虚空にそう問いかける。
「だよねー、結構社会情勢も不安定だし…結婚はまだ見送った方が良さそうかな?」
「うーん、こればっかりはしょうがないよね、圭一の仕事も安定してる訳じゃないし」
「え?そんな気にしないで、その分私も頑張るからさ!ね」
独り言を交わしながら着実に朝食を食べ続け、家を出る時間五分前に食べ終えた。
「よし!ご馳走様でした…って圭一また食べてない!根詰め過ぎるとダメだって言ってるじゃん、全くもう」
手の付けられていないもう一つの皿に手を付け始める。
「仕事があんまり上手くいってないのか何なのか知らないけど、しっかり食べないとダメだよ」
三分三十秒後、朝食を食べ終わり空になった皿を重ね、台所で手早く洗い物を終える。一分十五秒後、朝のルーティーンのその全行程を終えた。
「さー、いくかー」
台所で軽く伸びをし、テレビを消そうともせず、廊下で昨日投げ置いた鞄玄関へと向かう。扉を開け、境界を越えるその一瞬、彼女は少し気を緩ませる。
「こんな性格が好みでしょ」
呟きは誰にも届かず、そのまま扉に鍵を掛け、会社へと向かった。
主の居なくなったアパートの一室には、消されなかったテレビがニュースを垂れ流されていた。
「続いてのニュースです。昨夜十一時ごろ、25歳の男性が無残な姿で発見されました。部屋には酒の入ったグラスと争った形跡が残されており、警察は友人関係でのトラブルの線で調査を進めております。男性の名前は三――」
腑と、テレビが消えた。