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夏は涼しく

「■■さん」

「何だ」

「今日持ってるその銃は何ですか」

 目をきらきらさせてハシウエが訊く。

「貴様、銃に興味があるのか?」

「興味があるというよりは、■■さんが持っている銃に興味があるんです」

「俺は銃には興味がない」

「マジですか。じゃあなんで持ってるんです?」

「銃は手段だからだ」

「ああ、絶叫する人を消すための?」

「その通り、貴様にしてはよくわかっているな」

「褒め……」

 ハシウエが両頬を押さえる。

「ありがとうございます」

「ああ、そうやって声を抑えているのもありがたい」

「……!? 大丈夫ですか、雪でも降りますか?」

「褒めるつもりはなく、ただ事実を言っただけだ」

「はあ~嬉しい」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねるハシウエ。危ない。

「世界中の絶叫野郎どもがこうなら俺も助かるんだがな」

「だめですよ、浮気は許しません」

「付き合ってすらいないのに浮気も何も」

「上げて落とすやつですか?」

「そんなつもりはないが」

「いや~やっぱり恋は良いですね、ただ話しているだけで感情が揺れる」

「俺にはよくわからない。恋などしたことがないからな」

「へえ……」

 ハシウエが口角を上げる。

「じゃあ俺が教えるってことになるんですかね」

「いらん、引っ込んでいろ」

「■■さん~」

「あんまりしつこいと撃つぞ」

「とか言いながらそれ水鉄砲じゃないですか」

「……」

 俺は無言で銃を構える。

「どうぞ、撃ってください」

 ハシウエは手を広げる。

「カモン、マイハニー」

「その呼び方はやめろ」

 銃を下ろす俺。

「撃たないんですか?」

「他人の服を水で汚すのはあまり好きじゃない」

「やっぱり水鉄砲なんじゃないですか」

「俺の持ってる銃が何であっても貴様には関係ないだろう」

「ありますよ~。好きな人が持ってる銃が何かって知りたいですよ」

「その辺を歩いているときに人に渡された物なので、知らん」

「危なくないですか?」

「そんなことを気にしていたらこの世界では生きていけないぞ、ハシウエ」

「出ましたね決め台詞」

「……水鉄砲でも高出力のものなら人を消せる。ウォーターカッターは知っているか?」

「名前は聞いたことあります」

「名前通りだ。なので、そういうことだ」

「やっぱり危ないような気がします」

「何を今更」

「俺は■■さんが心配なんですよ。誰かから恨みをかって消されやしないかと」

「いらん心配だ。消されたら消されたときのこと。こんな活動をしている以上、誰の恨みもかわないなどありえない」

「……そう、ですよね……」

「消される覚悟はできている。俺は人生を全うしてきた。いつ死んでも後悔はない」

「俺は■■さんに死んでほしくないです」

「貴様の意見は聞いていない」

「好きな人とはいつまでも一緒にいたい……だから言うんです。いつ死んでも、なんて言わないでください」

「意見の押しつけはやめろ。……だが貴様は安心しても良い、当分死ぬつもりはないからな」

「本当ですか」

「ああ」

「約束ですよ」

「……」

 こんな奴と約束などしたくはないが。

 しかし口先だけで大人しくなってくれるのならそれはそれで都合が良いので、そういうことにした。

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