弘治の内乱
皆様あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
---天文24年(1555年) 能登国 七尾城---
「逆臣温井総貞!覚悟!!」
年が明けて天文24年になった頃、能登国では畠山七人衆の筆頭として権勢を振るっていた温井総貞が、畠山義続、義綱親子とその他の重臣達によって誅殺された。
これは当主の義続が権力を取り戻す為に起こした行動であり、義続達の背後には実虎の支援があった。
実虎が義続達に付いている事を知った他の重臣達は権力を振りかざしていた総貞の事を良く思っていなかったのもあり、義続側に付くとこれに協力した。
総貞が殺された事を知った総貞陣営の三宅綱隆ら三宅氏は加賀の一向宗と共に反乱を起こすが、越後上杉家の支援を受けた義続陣営相手に苦戦し、さらに一族の三宅続長、三宅宗隆などの寝返りによって敗戦。
敗れた三宅氏は加賀へと逃亡し、反乱も次第に鎮圧されていき、能登の実権は義続の元に戻ってきたのだった。
そしてこの内乱の間に実虎は総貞の治めていた越中西部に侵攻、難なく制圧することに成功し越中国は越後上杉家の支配下となった。
「実虎殿、この度はお力を貸して頂き誠に感謝致します」
「無事に能登を取り戻す事が出来たようで安心致しました。それにこちらも越中の支配を認めて下さって感謝致します」
現在七尾城にて実虎が義続を訪ねており、互いに感謝を伝えあっていた。
「なんの、元々直接統治はしていない土地でしたから問題ありませぬ。それより、この後はやはり加賀へ?」
「えぇ、将軍義藤様をお助けする為には北陸街道を抑える必要があります。予定していたより楽に越中を手に出来ましたから近い内にと考えております」
「実虎殿であれば問題ないでしょうが、加賀は厄介な土地。何か策はおありで?」
「加賀から本願寺を一掃しようとは考えておりませぬ。我が憎むは一部の腐敗した僧達、その者共を排除出来ればと思っているのですが…」
「ふむ…それならば私と個人的な付き合いのある杉浦玄任という僧がおります。かの御仁は今の本願寺には珍しく真面目な方でこの能登にも何度か教えを説かれに来ましたが、加賀一向宗の指導者も務めておられます故話を聞いてくださるかどうか…」
「無理を承知でどうか!」
「承知致しました。ですがあまり期待はされませんように」
そうして義続から繋ぎを取ってもらうと意外にも了承を得たようで、能登国の山奥にて秘密裏に会うこととなった。
「お初にお目にかかります、拙僧は加賀本願寺の指導者を務めております杉浦玄任と申す者です」
「越後上杉家当主、上杉実虎でございます。この度は話し合いを受けていただき感謝いたします」
「まさか敵対している勢力の大将から話をしたいと言われた時は驚きました。それで、話とは?」
「我ら越後上杉家は現在加賀一向宗と争う立場にあります。ですが、我はなにも一向宗全てを一掃しようとは考えておりませぬ。本願寺の中に巣食う腐敗した者達を一掃したいと思っております」
「ほう…?」
「玄任殿は真面目に教えを説く僧だと聞き及んでいます。そんな玄任殿のような僧に人々の救いとして教えを説いて欲しい。その為に玄任殿のお力を貸して頂きたい」
玄任は考える素振りを見せると、次第に口を開いた。
「仮に加賀を手に入れる事が出来たら、残った我らはどのように保護していただけるのでしょうか?」
「まず第一に加賀の国主は冨樫家であると認めていただく。そして政に口出し等はしないと約束していただき、自前の武力を持つ事などは容認しよう。とはいえこちらでも守備兵は各寺社に配備させるつもりです。また荘園で得た金銭等についてはこちらから口を出す事はしませぬ」
「武力を持つことを容認?荘園について手を出さない?それではまた同じ様な事になりかねませんぞ」
「そうならぬ為に膿を出し切るのです。それにあなた方のような僧ならそのような愚を犯さず寺社の持つ力を正しく使ってくれると信頼しての事です」
正直甘いと言わざるを得ない実虎の条件に驚いた玄任。
しかし玄任も今の本願寺の現状を憂いており、実虎の提案はそんな本願寺の現状を打ち破り、寺社の本来あるべき姿に戻れるのではと希望を抱いた。
「…わかりました、出来るだけのことはやってみましょう。ですが、私を含め真面目な者は極小数、あまり期待はされますな」
「それでもご助力頂けるだけで充分。必ずや約束はお守り致す」
こうして玄任の協力を取り付けた実虎は着々と加賀侵攻の手筈を整えていった。
---加賀国 尾山御坊---
そして玄任は加賀へと戻ると早速同志を集める為信頼のおける者達に話をし、少数ではあるが仲間を増やしていく。
それと同時に本山である石山本願寺宛に現在の加賀一向宗の現状を訴える文書を送るが、玄任の動きを怪しんだ七里頼周に呼び出され事になる。
「玄任殿、何やら最近慌ただしく動かれているようですが…何をされているのです?」
「近い内に越後上杉や朝倉家が攻めてくるかもしれないと思い、その対策に動き回っているだけでございます」
「ふむ…では石山の法主様宛になにやら文を書いていたようですが…あれは?」
「石山から援軍を送って欲しいと書いただけです。流石にこの両家を相手取るには指揮官不足かと思いましてな」
「ふっふっふっ…それはこの文でございましょうか?この内容を見るに、仰っている事とは何やら違う内容が書かれているようですが」
頼周の懐から出てきた文は、まさに玄任が石山宛に送った文であった。
実は頼周は前々から玄任の事を監視しており、この文に関しても使者を襲い奪った物だった。
「…なぜ頼周殿がその文を?」
「以前から怪しいとは思っておったが、まったく余計な事をしてくれるものだなぁ。今下手に動かれるのは面倒なんだ」
頼周がそう言い指を鳴らすと、密かに潜んでいた僧兵達によって取り囲まれてしまった。
「くっ!貴様のような腐った坊主が居るから組織の腐敗が止まらんのだ!」
「うるさいのぅ、貴殿のような正義漢がいてはこの楽園を維持できん。貴様こそこんなにも甘い蜜が吸えるのに何故それを享受しない?」
「民から受け取った物は我らが正しく教えを説いていくのに使うべきもの!それを己の欲望を満たす為に使うなどあってはならない!」
「はっはっはっ!まさに坊主の鏡のような男よのぅ。そんなお主に良い事を教えてやろう、石山にいる位の高い者達は皆儂のような考えを持っておる、お主が無事に文を送れていたとて上の者達によって握り潰されるであろう」
組織の腐敗がそこまで進んでいた事に愕然とする玄任を縛り上げると牢屋へと放り込んだ。
邪魔者を排除出来た頼周は、石山宛に玄任が敵に内通していたとの報告と改めて指導者の補充を要請する文を届け、事態の揉み消しを図った。
そして後日、石山から下間仲孝や下間頼照など下間一族が加賀へ派遣され、こちらも上杉、朝倉両家を迎え撃つ準備を済ませると遂に冨樫家の武力蜂起という形で戦いの火蓋が切って落とされる事になる。
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