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毘沙門天の化身  作者: 藤宮 猛
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毘沙門天

皆様初めまして、藤宮 猛と申します。


初作品となります。

「…ちよ…らちよ!…虎千代!!」


 誰かが自分を呼ぶ声に目を覚ますと、目の前には涙を流して自分を見つめる女性の顔。

 彼女は手をぎゅっと握り「よかった…!」と何度も何度も呟いてる。

 俺はこの人を知っている…そう、自分の母親である虎御前だ。


「ははうえ…ご心配をおかけしました…」


「よいのです。あなたが無事目を覚ましてくれただけで母は充分です。」


「そう言っていただけると安心いたします。ですが…もう少し眠っても…よろしいですか…?」


「ええ、安心してお眠りなさい。母がそばについておりますよ。」

 すると、母の優しい言葉に安心したのか、猛烈な眠気に襲われた。


 再び目を覚ますと俺は見知らぬ山道の入り口に立っていた。

 しかし、この場所に対して不思議と恐怖感は感じておらず何かに導かれるように山道を登っていくと、上った先にはお社が建っていた。


「待っていたぞ」

 声が聞こえたほうに振り向くと、鬼のような風貌に煌びやかな装具を身に着けた異質な存在が立っていた。


「あ、あなた様は…?」


「我は毘沙門天。多聞天とも呼ばれておる」


 毘沙門天?もしかして、かの上杉謙信が信仰していたあの毘沙門天!?

 ん?上杉謙信…?この名前に聞き覚えがある。というか自分の将来の名前だったような…将来?


「ハハハ!混乱しておるようだな。我がすべて説明するから聞くがよい」

 すると毘沙門天様は今の状況について説明をしてくれた。


 まず自分は病に侵されて死ぬ寸前だった。

 しかし、俺の母である虎御前が息子の快復を願って祈りを捧げたところ、それを見ていた毘沙門天様が自分の中に宿る凄まじいエネルギーのようなものを感じ、興味を持った毘沙門天様が俺を死なせるわけにはいかないと思ったらしい。

 そこで、たまたま天に昇る途中だった強靭な魂を自分の身体に入れることで魂を同化させて生き返らせたのだという。

 ちなみに記憶は虎千代である自分のものしか残っておらず、同化した魂の記憶は何も覚えていない。

 どんな風に死んだのか、家族の顔や名前すら。

 だが、その魂が得た歴史に関する知識は少しだけ残っているみたいで、自分が後の上杉謙信という人物でどんな人生を歩むのか、その程度なら分かった。


 説明を受けても頭はぐるぐると回転しており、自分に起きた神の奇跡を理解することなど出来るはずがなかった。


「まあ理解など出来なくてよい。神の御業ゆえな。」


「えぇ、何一つ理解出来ぬ話でした…」


「それに、二つの魂が一つになっただけでお前は虎千代だ。多少の未来知識を得たくらいに思っておけばよい。」

 確かに自分が虎千代であるという確信めいた感覚がある。

 生まれてから今までのこともしっかり覚えてるし、同化した魂の記憶は残っていない。

 いや、なんか口調がすごく変わってる気がしないでもないが人と話すときは今まで通りに喋れるから問題ない。


「納得できたようだな。口調に関してはまあ許容範囲だ。しかし、上手くいってよかった。正直成功するかわからなかったんだが流石我だ!」


「失敗してたらどうなったんですか?」


「お互いの魂が輪廻の輪から外れてしまうな。そして輪から外れると無の世界に取り残されてしまう」


 かなり危険じゃないか!何てことしてくれたんですか毘沙門天様!!

 神様ってみんなこんな感じなのかな…


「神は変わったやつが多いが、普通のやつもいるぞ」

 それならよかった。普通の神様もいたのか…。

 って、さっきから会話が成り立ってる気がするけどもしかして思考読めたりします?


「あぁ、ずっと駄々洩れだ」

 なんだそれ!読まれてたんですねもっと早く知りたかったです!!


「そう怒るな、神とはそういう存在だ。」


「さて、少し逸れたが状況の説明は以上だ。ここからは虎千代に授ける加護についてだ」

 え、加護も貰えるんですか?


「言ったであろう。我はお前を気に入ったと。」

 確かに言ったけど、そんな至れり尽くせりだなんて…


「お前が思っている以上に我はお前を気に入っているということだ。気にするでない。」

 感謝いたします。

 それで、どんな加護がもらえるんですか?


「うむ。全てにおいて神がかり的な勘が働くようになる加護だ。」

 神がかり的な勘か、全てにおいてっていうのは?


「戦の際に働く勘もあれば、相手が嘘をついているかどうか、自分に迫る危険を察知する勘など、とにかく全てだ。」

 つまり第六感がかなり働くってことか。


「とは言っても、お前の努力次第でこの加護はさらに強力になる。様々な軍略を学んだり、いろんな者と話をしたり、色々な経験を積むのだ。その経験からくるお前本来の勘と俺の加護が合わされば、お前が戦で負けることも、相手との腹の探り合いでも遅れを取ることが無くなるだろう。」


 面白い。

 この加護を上手く扱えるかは自分次第ってことだ。

 戦に負けることがなくなれば、侵略してくる敵から弱い民たちを守ることができる。

 そして領地が増えればそれだけ多くの民を救えて国も豊かになるし、外交なんかでも常に有利な盤面に持ってくることができる。

 もちろん政なんかも大事だが、負けないことやなんかは何よりも良い気がする。


「毘沙門天様、この度は私の命を救ってくださり感謝申し上げます。救ってもらったこの命、授かりし加護を用いて多くの民を救い、日ノ本に安寧をもたらせて見せます。」


「良い面構えになった。そなたはこれより毘沙門天の化身だ。現界出来ぬ我に代わり、戦乱の世を終わらせて見せよ、期待しているぞ。」


「仰せのままに」


 こうして毘沙門天の神に誓った瞬間、まばゆい光に包まれて再び現実に戻るのであった。











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