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|久しぶりに訪れたそこは以前と変わらず居心地の悪い場所だった。
意を決して呼び鈴を鳴らす。
『はい。』
年配の女性の声はお手伝いさんの玉木さんだった。
「希望です。」
私がひと言告げると門のロックがはずされた。
『お待ちしておりました。どうぞお入り下さい。』
私は苦々しい思い出を胸にしまい、敷地内へ踏み入れた。
アプローチを歩み続けると玄関前で待つ玉木さんが見えた。
最後に見たのは10年前。
記憶の中の玉木さんよりかなり年をとっていた。
玉木さんはひと言『お嬢様、ご無沙汰しております。』とだけ発し、私を家の中へ招き入れた。