割る
空を厚い雲が覆い、強風に煽られた高波で海面は酷く荒れている。
大勢の人々の前に、白い装束を身に纏った一人の初老の男性が立っていた。男性の名はモーゼ。モーゼは歩みを進め、断崖に立つと、携えた杖を天高くかかげた。
後方の群衆は息をするのも忘れ、その様子を固唾を飲んで見守っていた。
モーゼが天に向かい、何やら言葉を発した次の瞬間だった。「ゴゴゴゴ…」と辺りに轟音が響き、モーゼの立つ断崖を中心に、海がゆっくりと二つに割れたのだ。
その光景を目の当たりにした人々は口々に、「奇跡が起きた」と歓喜した。
やがて、割れた海から覗いた海底にもヒビが入り、ヒビはそのまま地球を一周して、轟音、衝撃と共に、地球全体を真っ二つに割った。