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私の世界にようこそ  作者: てけと
第三幕『レギュラーの新婚旅行』
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僕が勝てない異常な彼

 シンさんにボコボコにされた後、僕は狐族のココちゃんの元に向かった。行けと言われたからだ…シンさんにはもう逆らえる気がしないや…


「君が…ココ?」

「はい。私が狐族のココになります。ツバサさん」

「なるほど…君が僕をここまで誘導したわけだ。僕にできることがあったら、何でも協力するけど…その前に…」


 シャルに抱えられ、部屋を出て行こうとしているサーニャに、僕は謝らなければ。


「サーニャ。ごめん…気付いてあげられなくて…そして無責任なことして、放り出しちゃって…サーニャの力の事は知ってたんだ…僕は…」

「ん。ツバサ…私こそごめん。ちゃんと言っとけば良かった。お互いさま」


 そのまま容赦なく、シャルたちに連れていかれるサーニャ。彼女たちは先に、馬車に戻ってもらったんだけど…サーニャは行ってよかったのか?


「っと‥待たせたかな…話を聞かせて?」

「はい。ツバサさんは、シンの力を、どこまで見通せたんですか?」

「一応…一通りは?」

「シンの死ねない理由も…見えましたか?」

「うん…多分これだね。紙とペンはある?」

「こちらに」


 と机の下から、あらかじめ用意していたのか、洋紙と羽ペンとインクを取り出す。


「僕に見えるのは、その人の体力…これは体の健康値だね。数値が0になると死ぬし、病気やけがで減っていく。そして次に身体能力、これは力であったり、速さであったり、そう言うものの合計だね。あとはその人が宿している魔力。そしてスキル…これはいわば特殊な力だね。例えばサーニャだと神獣化というスキルがあった。あとは種族、名前、性別かな。これが僕の見えてる全てだ」


 そう言いながら、シンさんのステータスを書いていく。


 ミカド シンジ


 ???♂


 ??歳


 体力 3/3


 筋力 20/20


 ??? 563500/682500


 スキル ≪超神速再生≫≪創造・具現化≫


「これがシンさんのステータス。つまりこの数値のことだね。一応比較するために、ココのステータスも書くね」


 ココ


 獣人種族♀


 12歳


 体力 540/540


 筋力 400/400


 魔力 12/12


 スキル≪並列思考≫


「数値が分かれているのはなんです?」

「右が最大値で、左が現在の状態。体力は怪我や、傷を負ってると減っていく。筋力は、単純に疲れているか、けがや病気で弱ってても減るね。ココちゃんのスキルは並列思考。これは二つの事を、同時に考えられる力だね」

「なるほど…だとすると、シンは異常ですね…しかし…」

「確かに異常だよ。僕もこんなのは初めて見た。でも多分死ねないのは…このスキルの所為だね」


 僕は≪超神速再生≫を指さす。


「まさに再生だったよ。粉々にしても、一瞬で元に戻る。治ったのではなく、元に戻っただけ」

「確かにこれは厄介ですね…しかし…光明は見えた気がします。ありがとうございます」

「どうしてもって言うなら…僕が吸い尽くして、スキルを捨ててくるけど…それだとシンさんは死ぬからね…」

「ツバサさんにこれ以上は望みませんよ、シンの死を探すのは、私たちの役目ですので」

「そっか…ん?これはコーヒー?」


 元の世界で見たコーヒーサーバに黒い液体が入っていた。


「シンが作った飲み物ですが…飲みます?」

「ぜひ頂くよ。ミルクだけほしいな」


 とても香りのいい、久々のコーヒーだった。美味しいコーヒーを飲みながら、シンさんがこの世界で、どう生きていたのか、そんなことをいろいろ聞いた。

 彼は…死を求めながらも…邪魔だ邪魔だと言いつつも…彼女たちを好きなんだと思う…でもこのままだと…彼女たちは彼より先に確実に死ぬ。自分は若い姿のままで、いつまでも死ねずに。それは…耐えられないなぁ…


「ふふ…割と君たちも、愛されてるね」


 そう獣人達に言って、僕たちは、彼女の想い人と合流することにした。




 馬車に戻ると、とても楽しそうな声が聞こえる。僕でもそんな楽しませることはできないだろう。そう思えるほどに…

 馬車の中をうかがうと、案の定楽しそうに笑う妻たちがいた。ほんの数十分で妻達が…


「僕の嫁が数十分で寝取られてる件」嫉妬と恨みを込めて呟いた。

「人聞きの悪いこと言うな…そんなつもりは毛頭ない。俺は楽しみ、楽しんでもらいたいだけさ」


 楽しそうな顔をして、そう言い放つシンさん。


「ツバサ様!すごいんですよ!この楽しくなる魔法!」


 スピカも楽しそうに…あれ?


「スピカ…まさか…心が…」

「あっ…そういえば…」


 たどたどしい喋り方が治って…よかった…


「スピカ…よかった…」とスピカを抱きしめる。

「シンはすごいね!スピカを治しちゃった。シャルでも治せない心を」

「私たちもつい時間を忘れて、楽しんじゃってたわね…」


 本当…この人にはもう…一生頭が上がらないな…


「俺は人を幸せにする魔法は使えない、それはこれからツバサ、お前が使うものだからだ。ただ…楽しくなる程度の魔法は使えるんだよ。しっかりその子たちと、外にいるメイド、どうしたらそいつらが幸せになるか、想像して、()()浮かべろよ?」


 もちろん…僕は絶対に、僕を想ってくれている、この子たちを幸せにして見せる…


「はい…ありがとうございます。シンさん…」

「俺はただ、俺が楽しいからやっただけだ。他意はないぞ?」


 そんなことを、惚けた顔で言うシンさん。この恩は絶対にどこかで返してやるからな!そう心に誓ったのだった。







 その後、シンさん達とは別れた、なぜか彼らだけ、通行規制を食らっているそうだ。

 もう用事はないが、二人目の転生者の彼女に一応会っておこうと思い、魔女王の町へ向かうことにした。

 スピカは彼から貰ったトランプで、シャルたちと遊んでいる。よっぽど楽しかったんだろうな。娯楽の少ないこの世界では、珍しい物なんだろう。

 僕もリバーシーとか、将棋くらいなら…将棋は駒を作るのが大変だから…無理か…まあ元の世界に有った、簡単な娯楽なら、管理者さんの許容範囲だろう…帰ったら妻たちと遊ぼうかな?なんて考える。


 そしてそこから10日ほどかけ、ようやく目的の町に着く…町?むしろ都市?こんな辺境に首都並みの街があった。


「内政チートか?でもその割には…この世界の街並みのままだな…」


 チートを使うなら、コンクリートと鉄骨で基礎を作ったり、ツーバイフォー工法で作る家だったりするはずだが…。普通のレンガ造りの家だ。

 そして…町の入り口からも見えるあの…城が…魔女王の屋敷なのだろうか?


 痛い子なのかな…帰ろっかな?


 なんて思うが…覚悟を決めて屋敷に行くことにする。

 一応粗相がないように、メイド以外はドレスと、僕はシンさんに作ってもらった服に着替えてある。

 十数分後に、馬車が止まる。一つ深呼吸をして…馬車のドアを開け、外に出ると…


 大きな鉄扉が目の前に、そして赤いカーペットが、屋敷の入り口まで伸びており、その脇にメイド達がずらりと並んで、お辞儀をしていた。


 王城でもこんなことはなかったよ!?


 そして城を見上げ、引き攣った顔で、鉄扉から城に入る僕を、迎えに来てくれる魔女王。


「ようこそ。ツバサ・ミカヅキ様。この町の町長をしている、マオと申します。以後お見知りおきを」


 綺麗ドレスの裾を掴み、丁寧にお辞儀する魔女王。言わせてもらおう…


 お前のような町長がいるかっ!!!

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