主人公たちの戦いの裏で…
三人称視点になります。
ツバサとシンが森の奥深くに飛んでいく。
ミカはナイフを片手に、アミは鉄の棒を両手に、ナギは投擲武器の尖った短い鉄の棒を、指に挟む。
シャルとミーシャも、戦闘態勢に入る。しかし…
獣人たちは逆に武器をしまう。そして…
「私たちは、あなた方と戦う気はありません。そんなことより…おやつにしませんか?」
ココは笑顔でそう言った。
戦闘状態を解かず、ココに着いていくメイド達。シャルとミーシャもいつでも動けるように構えている。
森に入っていき、しばらく歩くと、森には不釣り合いな、小屋があった。
白い木で作られており、全体的に四角く、平らな平屋のような建物だった。真四角な窓が所々付いており、少し大きめなドアがついていた。
ココがドアを開け入ると、大きな丸いテーブルと椅子が11個置かれている。
「お好きな席にどうぞ?シャルさん、ミーシャさん、スピカ王女、ミカさん、アミさん、ナギさん」
そうココは椅子を促し、獣人たちは席に座る。そして…
「シャル、ミーシャ。久しぶり」と二人を、なぜか頭をさすりながら、サーニャが迎える。
「「サーニャ!?」」
と三人は抱き合う。
「どうしてサーニャが?」とミーシャはまだ困惑している。
「みんなのおかげで、ココに会えたよ。ありがとう」
「そっか…よかったわね」
「とりあえず…シャル離して?みんな椅子に座ろ。紹介したい人もいるから」
サーニャに促され、シャルたちも椅子に座る。
「とりえず自己紹介しますね。私は狐族のココです」
「同じく狐族のミーコです!」
「犬族のシユだよ」
「蝙蝠族…リリア」
「私たちは…そうですね、あなた達のツバサさんと同じ世界から来た、シンを愛してる者たちです」
そう獣人たちは自己紹介する。
「あなたがココね。で?私たちの事は知ってる訳ね」
「ええ。もちろん知ってます。これはシンの作ったこーひと、しふぉんけーきです」
そういって、コーヒカップと切り分けられたシフォンケーキをみんなに配っていくココ。
「にが…いけど…おいしい?」とシャルが顔を歪める。
「私はこのままの方が好きですが…苦いのが苦手な方はこちらを」
ココはミルクピッチャーを配り、黒い角砂糖の入った容器を置いていく。
「おぉ…これを入れると、甘くておいしい!」とシャルが喜ぶ。
メイド達も恐る恐るミルクと砂糖を入れて飲む。
「「「おいしい…!?」」」
「ケーキの方もおいしいので、是非食べてみてくださいね」
獣人たちはもう食べ終わり、おかわりを勝手に取りに行っている。シンはかなり多めに作っていたようだ。
「おいしー!!」とシャルもモグモグ食べ、おかわりする。
それに釣られて、ミーシャもスピカもメイド達も、食べ始め…しばらく無言で全員ケーキを食べ続けた。
「ふぅ…で?これは何が目的なのかしら?」とミーシャが口にケーキのカスを付けたまま喋り出す。
「別に…モグ…目的とかは…んっ…ないですよ?」とココがまだケーキを食べながらしゃべる。
「お兄ちゃんは、甘いもんでも食べながら、女子会でもしておいでって言ってたよ?」シユがまたケーキを切り分けながら言う。
「じょしかい?ってなにー?」シユに切り分けたケーキをもらいながらシャルが聞く、
「女の子同士で、お話しすることだそうです」とミーコがコーヒーカップ片手に喋る。
「ケーキがおいしすぎて…話…できない」とケーキを丸ごと持ってくるサーニャ。
「まるごとは…ずるいです…」と悲しそうにサーニャを見るスピカ。
「スピカ様。こちらに確保しております」
「抜かりはないです!」
「これどうやって作ってるんだろう…ほんのり甘くて、癖になる。なのに味が薄いわけではなく濃厚で…気になる…」
ケーキが無くなるまで…女子会どころではなかったようで…なくなるまで、彼女たちはひたすら食べ続けるのだった…
「「「「「「「「「「「ふぅ…幸せでした…」」」」」」」」」」」
謎のご馳走様を終えてやっと話が始まる。
「さて…とりあえず一つ言えるのは…シンはツバサさんを殺す気もないし、ツバサさんにシンは殺せないので安心してもらって大丈夫です。多分?」コーヒーを啜りながらココが言う。
「多分って…」ミーシャが呆れた顔でココを見る。
「シンはたまに、私の予測を外れますからね…まあ大丈夫でしょう」
「信頼はしてるのね…で?あなた達が、彼のお嫁さんなわけ?」
「シャルたちは皆、ツバサのおよめさーん!」
「「「そんな…恐れ多いので…」」」
「私と…ナギもやっと…愛してもらえた…です」
ツバサの嫁達は、嬉し恥ずかしそうに語る。
「想ってる人に愛してもらえるのは…羨ましいですね…」とココが寂しそうに言う。
「ツバサは優しい」
「お兄ちゃんだって優しいよ?」
「まあ…先生は訳アリですし…」
「私たちは…まだ…シンのお嫁さん…じゃないの…よ?」
俯いて悲しそうにする獣人達。
「こんな可愛い子たちに囲まれて?訳あり?」
「シンも可愛い…って言ってくれるんですけどね。じゃなくて…その…彼は死ねないんですよ。そう言う体なのです」
「死ねない?アンデットか何かなの…」とミーシャが少し震える。
「そういえば…ツバサがグサッってしてもぴんぴんしてたね?」とシャルが顎に人差し指を置いて考える。
「彼は、自分が死ねないなら、生きる価値はないと思ってるようで…ならば私たちに振り向いてもらうために…彼の死を探す旅に協力しようと…」
「それは…辛いわね…」ミーシャが辛そうな顔をする。
自分の立場で想像したのだろうか。
「大丈夫ですよ。これは彼の為であり…そして私たちの為でもある。彼の為に役立てるなら、私たちにとってそれは、嬉しい事です。そしてその為に、あなた達の夫、ツバサさんの力が必要なのです」
「ツバサなら、きょーりょくしてくれるよ!」
「そうねシャル、でも…なんで最初に敵対するようなことをしたの?ツバサは優しいけど、その分、敵には容赦しないわよ?」
「…私の所為」
「サーニャの?」
「サーニャは…シンと会った瞬間…魔物になったの…シンが元に戻して…くれたけど…ね?」
そう言ってリリアはサーニャのチョーカーに触れる。
「…魔物に…?」
「サーニャはサーニャだよ?」
「私は…私の中に獣を飼っていたの。そしていつか私は、その獣と変わる。そうなったらもう…魔物と変わらない」
「…なんで言ってくれなかったのよ…」
「怖かったから。あとは…奴隷の首輪の力なら…そうなった私を、すぐ殺せると思ったから」
「私たちがそんなことで…サーニャを見捨てるわけないじゃない…っ!」
「そうだよ!サーニャが怪我させても、シャルが治すよ!」
「ありがとう…そう言ってくれるのが分かってて、私は覚悟してた。この人達だったらいいかなって…ココに会えなくても…」
「サーニャ!!」とシャルがサーニャに抱き着き。
そのまま椅子に座る。
「サーニャのばか!もうはさないからね!!」
「シャル…痛い…」
「だめ!ゆるさないよ!」
「しばらくそうしてなさい。馬鹿サーニャ」とサーニャの頭を撫でるミーシャ。
「ふふふ…シンが見たら…サーニャはシャルに…預けられそう…ね」
楽しそうに笑うリリア
「それは…困る…」
「そう言うわけで…サーニャをけしかけたツバサさんに、シンは怒ってる訳です」
「それは…私からも謝らないとね…」
「大丈夫ですよ。シンは本当に怒ってる訳じゃないと思います。ただ…ケジメはつけないと…サーニャに謝って終わりじゃ、示しがつかないと思っているんでしょう。シンが、悪役に徹せば、お互いギクシャクしなくていいでしょう?」
シンは怒れないサーニャや、ツバサたちの為に、自ら怒り、ツバサを殴ると決めたのだろう。
「不器用な優しさね」と苦笑するミーシャ。
「彼は結局、根は優しいのですよ…どんなに悪役ぶっても…」
「そんな彼に惚れたのね…サーニャあなたも…」
「ん。でもちょっと後悔。シンは面倒くさい」
「私は先生の、その面倒くささが好きなんですけどね?」
「ミーコとココは、面倒を見るのが好きだからね~私はお兄ちゃんといると楽しいからかな?」
「私は…シンがいないと…生きてけない…から」
「想われてるわねー」
「シャルだってツバサのことを想ってるもん!」
それからは、本来の女子会と言うべきなのか…お互いがお互いの、想い人の自慢話を、延々とするのだった。




