依頼を終えて
入った洞穴は意外と複雑でもなく、ただまっすぐ道があり、その先に土魔法で作ったドアがあった。
特に見張りがいるわけでもなく、戦闘もなくここまで、歩いてきた。
躊躇せず、ドアを開けて中に入る。すると…
大量の魔法が僕に向かって放たれる。
咄嗟にしゃがみ、土魔法で壁を張る。
ドドドドドドドドッ!と、まるでガトリングガンに一斉掃射されたかのように、壁が削られていく。
壁はすぐ削り切られ、壁が無くなっても数分ほど攻撃が続き。
舞い上がる土埃や、蒸発した水で霧が生まれ…ドアも跡形もなく吹き飛んだ頃、攻撃が止まる。
視界が晴れ、僕の姿がないのを確認すると…
「はぁはぁ‥流石の化け物も、跡形もなく吹っ飛んだようだな…」
「まったく…どれほどの化けもんか知らないが…これだけ人を貸したんだ…高くつくぜ?」
ローブを被った100名ほどの魔法使いが、この大きな広場にいた。
当たりかな?
「ああもちろん…先回りして準備した甲斐があったぞ…望むものは出来る限り準備しよう」
「まずは人族の、性奴隷だな。獣人はタフで死なないが…やはり人族がいい。壊しても当分持つように、多めに寄越せよ?」
「あいつさえ消せば、どうにでもなるから構わん。このあと、首都にいる第三王女を攫えば…」
「先に攫って、人質にすればいいじゃねえか。なんでそうしない?」
「使い道があるんだよ…易々と死なせるわけにはいかん。人族は攫うのに少しかかるが…それでもいいか?」
「いいぜ?獣人が壊れるまでには寄越せよ?あと武器と食料もな」
「もちろんだ。それはすぐ運ばせよう…」
「たかが一人殺すだけでこれなら、いい仕事だったぜ?今後もヨロシク頼みたいものだ」
「ああ、人種族領に来るなら、連絡を寄越せ、仕事の出来次第では融通してやる」
ドォーンッ!!とたった一つだけあった、出入り口が、岩で塞がれる。
「な!?」
視界を遮り、すぐ天井に張り付いていた僕は、スタッと話をしていた二人の前に降りる。
「こんなに盛大な歓迎を受けられるなら、少しは正装でも、してくるべきだったかな?」
ドドドドドォーン!と洞窟が崩壊していく。100人ほどいた魔法使い共は、岩で生き埋めになる、
降りるときに、天井にひびを入れておいた、間もなくここは崩落するだろう。
「化け物がぁぁぁ!!」と剣を振りかざす盗賊。
こいつは用があるので、持ってる剣ごと、手を握りつぶし。後ろで魔法を放とうとした男に、その剣を投げつける。
刺さりはしなかったが…そのまま剣が当たったところが、吹き飛んで死んだ。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!?」と悲鳴を上げている男の首根っこを掴み、ズルズル引きずり、洞穴を後にする。
洞穴の、出口より少し前で、男を降ろし…
「さて…僕の嫁を、まだ狙おうとしてるんだな?お前がボスか?」
「……」
「ちがうかぁ…まあゆくゆく絶滅させるつもりだし、いつか会うだろう」
足を踏みつぶし、土魔法で洞穴を封鎖する。ゆっくり死んでいく恐怖を感じさせるために。
「頭は潰したから、もう一回拠点を築くにしても、時間がかかるだろう、なら後は町の冒険者と、衛兵の仕事だよね…しかし…僕がここに来る情報が漏れていた?」
今日は人の出入りがないと言っていた。ここに来ることは知っていたとしても…まあいっか…そういうことを考えるのは苦手だ。
策は真っ向からねじ伏せればいい。脳筋みたいになっているが…先を読み合う戦略とかは苦手だ…
結局もう一つの洞穴も、蹂躙しに行った。あっちは食堂のようだった。料理人はもちろん全て駆除した、あそこの洞穴にもう生物はいないだろう。
「ツバサさんは容赦ないいっすね…」マラヤが困惑した顔でそう言う。
「ん?魔物を倒すのに何を躊躇するんだ?」
「いえ‥なんでもないっすよ~」
「マラヤは…その…元盗賊なんですよ」とコルが教えてくれる。
「いわないでよ!?殺さないで下さいっす!!」マラヤが僕の前で土下座する。
「殺さないよ…まあ洞穴にいたら、容赦はしなかったけどね?」
「マラヤは…自分で考えて、盗賊をやめたのよ…それを私たちが受け入れたの」とヨウが補足する。
「敵対しないなら何もしないよ?敵対するなら女でも、僕は容赦しないけどね」
「逆に愛されると、愛してくれるけどね?」とミーシャが余計な事を言う。
僕が愛に飢えてるみたいじゃん?
「ツバサ~…まりょく~…」とシャルが後ろから抱き着いてくる。
その後ろに、耳と尻尾の治った、猫族の獣人さんが三人いた。
「お疲れシャル…僕も割と魔力消費しちゃって…とりあえず帰ろっか」
とそのままシャルをおんぶし、僕たちは帰路についた。
町に戻ると、食堂に全員で集まる。
「んじゃあこれが今回の報酬ね」
コルたちに金貨3枚を渡す。僕のもらう報酬からしたら、安いかもしれないが、彼女の命の代金を引かせてもらっている。
「え?私たちは偵察していただけですが…」とコルが驚いた顔で僕を見る。
「少ないけど…まあそれくらいで許してほしいな」
「いえ‥多すぎるというか…もらえると思ってなかったので…」
「あの…私たちツバサさんのパーティーに入れたりしないっすか?」とマラヤが言う。
「しないなぁ~それに僕は、当分冒険者として動く気もない。僕にそんなことを頼む前に、君たちはやることがあるよね?」
「そうよマラヤ。私たちは彼らを、故郷に返さなきゃいけない…」そう言って身分証を握りしめるヨウ。
「その移動費に使うといいよ。三人とはここでお別れだね。世話になったよ」
「こちらこそ。またお会いしたい所ですね」
「はは…広いこの世界でそんな偶然はもうないさ」
そうして冒険者の三名と別れる。
獣人三名は、僕に考えがあるので、首都までは一緒に行くことにした。
冒険者ギルドに、盗賊殲滅の報告をしに行くと…
なぜか受付に、魔人国首都にいたはずの、狐族の獣人さんがいた。昨日まではいなかったはず…
「あら?お待ちしておりました。ツバサ様」
「もう驚きませんよ?昨日まではいませんでしたよね?」
「ツバサ様のおかげで、やっと尻尾を出したので、ここのギルド職員は全て処分させていただきました」
そうにっこり笑う狐さん。
「盗賊と通じてたんですか…?」
「外面ではわかりませんからね…最初から潜んでいたのか、後から買収されたのかもわかりません。まだ潜んでいるでしょうが…ひとまず今回の件は一段落です」
「それはよかった。鉱山の件は…」
「そちらの方の確認作業は、私たちで行いますので、ツバサ様は、首都にお戻りただいて結構です。鉱山内の換気につきましても、ほぼ終了致しております」
「僕そこまで言いましたっけ?」
人を貸してとしか、言ってない。
「聞いた情報だけを、鵜呑みにして、調査を怠るなんて…ギルド職員失格ですよ?」
この狐族だけには、僕は勝てないかもしれないな。どれだけ力を持ってても、当たらなければ、意味がないように…
敵対しないことを祈ろう…
「わかりました。では近日に首都に戻ることにします」
「ええ。今回の件、お疲れさまでした」
そうして僕はギルドを後にし、翌日首都に向けて旅立った。
帰りはあんまり襲われないといいなぁ…なんて思いながら…




