義理のお姉さん
飛空艇の旅は、ひと悶着あったものの、その後は順調に進んだ。魔物の襲撃で被害もなく、その後も僕たちは豪華客船を堪能した。
収納のスキルは便利だったが…わりと制限が微妙で…一つの物として、僕の体積を超えるものは、収納できない。つまり大きさは170cm×170cmまでで、重さは50キロ程度まで。
どれだけの数を収納できるかは、まだ分からないが…とりあえず僕の装備一式を、全部入れたり出したりして試した。僕は武器をすぐ壊すので、割と重宝しそうだ。
出来ればあんまり戦いたくないんだけどね…
40日ほどかけて、魔人国領に到着する。この町からまず首都を目指す。クエストを首都で受けてほしいとのことだ。依頼主から詳しい話も聞かなければいけない。
馬車に乗り、数日走らせると、魔人国首都に到着した。魔人国領では盗賊に会うこともなく、ロスなく進むことができた。
人種族領だけなのか?盗賊が多いのは…それとも…狐族が手回ししているのか…?
魔人国では魔石などを使わず、自前の魔法だけで生活しているようだ。その為、人種族に比べるとちょっと生活レベルは落ちる。
まあでもこの光景にはちょっとだけ感動する。
「んー…おいしいんだけど…物足りないよね」
屋台で売っていた串焼きを食べて思う。
「おいしーよ?」
「ええ…でも素材の味そのまんまって感じよね」
「焼いただけとか、一緒に炊き合わせただけとか、そんな感じですね」
ナギの料理の幅を広げるために、買い食いして回ってるんだけど…特に得られるものはなさそうだった。
ナギの料理も、普通に、お店をひらける程度にはなったが…僕としてはまだ物足りないんだよね…
今日一日はのんびり観光して、明日ギルドと依頼主の所に行く予定だ。
今回のクエストを達成すれば、当分動かなくていいし…なんなら、料理研究や、屋敷の改築に精を出してもいいと思っている。
本屋に行って、いいレシピや本がないか探したり、魔道具屋さんに行ってみたり、お小遣いを渡して、各々自由に動いたり、そうこうしていると、あっという間に日が暮れていった。
宿に戻り、明日の行動について少しだけ話す。
「明日は僕とシャル、ミーシャ、スピカで今回のクエストを受注してくるよ。ミカ、アミ、ナギは旅に必要な物を調達しといてね?」
そう言ってミカに領収書のような、紙の綴りを渡す。
「ご主人様、これは?」
「今回の旅の資金は、全部向こう持ちだ、それを見せれば、いくらでも売ってくれるし、その紙に書かれている、貴族さんの方に請求が行くからね。値段はちゃんと交渉して、商人さんに書いてもらって、確認したら、ここにサインして商人さんに渡してね」
「私のサインでもいいのですか?」
「もちろん。それはちゃんと言っておくし、家族の誰がサインしたって、問題ないよ」
そんなことで文句を言われるなら、ここで帰ろう。いい船旅だできただけで十分だ。
「私は奴隷でメイドですが?」
「ん?奴隷でメイドだったら僕の嫁になれないの?ミカはもうミカ・ミカヅキを名乗ってもいいよ?もちろんほかの二人も」
「ふふ…ご主人様は変な人ですね…」
「自覚はないけどね。任せたよ」
「「「お任せください!!」」」
シャルとミーシャに言われ、今日はメイド三人と一緒に寝た。たまには労ってあげて?という事で…
たまにはどころか、ベットさえ大きければ、全員一緒に寝てもいいんだけどね?
翌日、4人で冒険者ギルドに向かう。僕が受付に向かうと、当たり前のように、狐族の獣人さんがいた。
「いらっしゃいませ。今日はどのような、ご用件ですか?」
「知ってるんじゃないんですかね?」
僕はジト目でじーっと獣人さんを見つめる。
「さて?何のことでしょうか…?」と可愛らしく首を傾げる獣人さん。
「…書状を預かっております。シャル、ミーシャ身分証を」
3人分の身分証を、受付嬢さんに渡す。
「ではお預かりしますね…少々お待ちください」
そう言って、奥に消えていく獣人さん。
疑いすぎか…すべての狐族が繋がってるわけないよな…
少しして、獣人さんが帰ってくる。
「ではクエストを受注しておきますね。依頼主さんの方には、話は通しておきましたので、このまま向かっても大丈夫です」
「ありがとうございます。ではこれで…」
そう言って僕はギルドを後にし、受付嬢さんに言われた場所に向かい、少し小さめの屋敷に到着した。僕の家より、小さいのではないだろうか?
鉄扉をくぐり、扉についてたドアノッカーで扉を叩く。するとスピカに少し似た、女性が白いワンピース姿で出てくる。貴族っぽくないね。
「お待ちしておりましたよ?ミカヅキ卿。そしてスピカ…久しぶりね!」
スピカのお姉さん、カペラさんが笑顔で迎えてくれた。
屋敷のリビングに通され、長方形のテーブルを囲むように椅子に座る。
「ミカヅキ卿。改めてスピカを助けてくれてありがとうございます」
そう言って頭を下げるカペラさん。
「いえいえ…カペラさん。僕のお姉さんになるんですから。敬語はやめましょう」
「そうね!可愛い弟ができてうれしいわ!今回クエストを受けてくれてありがとうね。ツバサ」
「僕はただの、新婚旅行のつもりですけどね」
「まぁ私も、スピカに会いたかっただけだしね」
「「「「え?」」」」
「アダラお姉さまとちがって、私はスピカにすぐ会えないんだもん。聞いたよ?死にかけたってね。心配で心配で…私なりに策を練ったわけ!」
「それが今回のクエストですか?」
「ええ…でも実際受けてくれると、とても助かるわ。魔人族って言うのは、内政に無頓着でね…私の旦那が、いま一人で、頑張ってるようなものなの…」
人種族は割と、人種族全体での団結感がとても強い。みんなで支え合う、得意な分野で仕事を振り分けたり、そう言うのがとても得意だ。
魔人種族は、個の力に偏りがちだ。自分の事にしか興味がなく。自分の求める魔法を、完成させるために、生涯研究する人も多いみたいだ。
獣人種は、血の繋がりをとても大事にする。僕たちのように、貴族が地域を管理するというより、いろんな小さい国が集まってできてる、連邦国家。つまりアメリカとかそう言う感じだ。
「お姉さんの頼みならもちろん、受けさせていただきますよ。旦那さんにもよろしくお伝えください」
「助かるわ…これで肩の荷が下りる…じゃあお願いね?」
そう言って僕に金貨の入った袋を渡すカペラさん。
「え?まだ成功するかわかりませんよ?」
「前金で半分払うわ。残りは成功報酬として、首都の冒険者ギルドで受け取ってね?そう言う約束なの」
「はぁ…そうだ…スピカとメイド三名をこちらで預かって頂けませんか?さすがに、連れていけませんので…」
「いいわよー!うちは家政婦雇ってないから大変なのよ…私も書類仕事があるしね…むしろお願いするわ!」
「スピカいける?」
「はい…カペラお姉さまも…いますし…ミカも…アミも…ナギもいます…から」
「すぐ帰ってくるから待ってね?」
そう言ってスピカの頭を撫でる。
「お気を…つけて…いって…らっしゃい…ませ」
その後メイド三人と合流し、カペラさんの屋敷に案内する。
「カペラさんの屋敷を、僕の屋敷だと思って、しっかり手伝うんだよ?」
「「「はい!」」」
「任せた!」
「「「お気をつけて行ってらっしゃいませ!ご主人様」」」
そうして僕は、懐かしの三人パーティーで、目的地の炭鉱夫の町へ、出発した。




