一匹見たら…
僕があんまり遠出したくないのは、理由があるからだ。
なぜなら…
「いい女がいますぜ!お頭!」
「そうだな…さっさと奪って楽しむとするか~」
とこんな感じで、街道で盗賊に出会う確率がほぼ100%だからだ。
最初の頃は、全員縛って街道に放り投げてたが…こいつらは、なぜかすぐ釈放されて、また襲ってくるのだ。
そう言う裏組織が、この国にあるのだろう。どうせまた襲ってくるから、基本全部殺していたが…こう何度も襲われると…うっとうしいな…
何か対策が必要だな…
と思考している間に、盗賊を全員お空の旅(腕力に物を言わせ、空にブン投げる)にご招待して、馬車に戻る。
「おつかれさま。ツバサ」
「んー何とかならないかなぁ…僕から盗賊を寄せ付ける匂いでも出てるのか?」
「ツバサはいい匂いがするよ?」
「安心…する……匂いです……」
「ありがとう…でもなんかしら考えないとなぁ…」
毎回襲われるせいで、移動速度がどうしても遅くなる。
わらわら湧いて来るなら…巣ごと駆除するしかないよね…
飛空艇が出ている町は、駆け出しの冒険者の町の近くなので、今まで通った道を戻る感じだ。
途中、ミーシャの育った孤児院のある町によ寄った。ミラさんと少し、お話したかったからだ。
「お母さん!来たよー?」
入るなり、ミラさんに抱き着くミーシャ。
「あらミーシャ…皆さんもおそろいで…」
「ご無沙汰しております。ミラさん」
「今日はどのようなご用件で?」
「別に…あ‥そうだ」
別に用事はなく、ミーシャの為に寄ったんだけど…そう言えばミーシャに、言ってた事があったな…
「ミラさん、孤児院の経営が終了したら、家で働きませんか?住居などは準備させていただきますよ?」
「「え!?」」とミラさんとミーシャが驚く。
「実は庭で、家庭菜園や、木などを植えて管理したいんですが…それを息子さんに、ミラさんには、屋敷の清掃や雑事を、住み込みではないのですが…食事はお昼と夕食はつけましょう。一日銀貨1枚でどうでしょうか?」
「いいのですか…?」
「もちろん…ミラさん達が来てくれると、僕も助かります」
今回のクエストの報酬で、その辺の準備をしよう。
「まったくツバサは…おせっかいね…」
「なんのことかな?僕はちょうどいい人材を、勧誘しただけだよ?」
書状をたしなめて、ミラさんに渡しておく。もし僕が魔人国に行ってる間に首都に行っても、屋敷に入れるように。
「んじゃあミラさん。僕はこれから嫁達と旅行なので、もし帰ってきてなかったら、屋敷の管理お願いしますね?僕らが帰るまでは、屋敷は好きに使ってください」
そう言って支度金と、契約金として金貨10枚渡しておく。
「こんなにもらえませんよ!?」
「支度金です。それじゃあまた」
「お母さんまたね!今度は首都で会おうねー!」
そう言って教会を後にする。この教会にちょっとだけいた孤児は、どこからか、多額の寄付金があったようで、そのお金で、安全な首都周辺の教会に移動させ、預けたらしい。
準備が終わったら、首都に向かてくれるだろう。家ってのは誰も住まないと廃れていくからね…
そしてまた街道を通って、目的地を目指す。今回、町はほぼ素通りしているので、首都に行くときに比べたら、大分早めに目的地に着きそうだ。とはいえ40日ほどはかかってるわけだが…
夕方に差し掛かったころ、真眼で盗賊が行く先の道をふさいでいるのが見えたので、僕は御者をしているミカの横に座る。
すると‥十数本の矢が、馬車をめがけて飛んでくる。頑丈に作ってあるので、馬車は無傷だが…馬とミカに当たる矢は全て手で掴む。
「ここは通行止めだ!有り金全部おいていけ!!」
曲刀を持った、ボロボロの服の男がそう言う。
「ミカ、今日はここで、野営の準備をしてくれ。僕はちょっと、仕事をしてくる」
「かしこまりました。ご主人様。お気をつけて」
「んじゃあ行ってくるよ」とミカの頭を少し撫でてから盗賊の元へ向かう。
一人見たら30人はいると思え…どこの虫だよ…まったく…
「僕を狙うように、どこかの貴族様から言われているのか?」
「さあな…?しかしこの人数を一人で勝てるとでも?」
前方に10名ほど、森から弓を持ったのが6名、あと隠れているつもりなのか、その奥にローブを被ったのが5名、そして少し離れたところに、一人いるようだ。
情報を持ち帰るやつがいるってことは…そいつに付いて行けばいいかな…
最初は持て余していた身体能力も、これだけ戦闘をこなせば、使いこなしてくる。
「もう僕は、生かして逃がすほど甘くない訳だけど…いいの?」
「減らず口を…殺れ!!」
矢が飛んでくる。魔法がそれに紛れて発動する。爆発したり、押し潰そうとしたり、あらゆる遠距離攻撃が降り注ぐ…だが…
一斉掃射が終わり、舞っていた土埃が少しづつ晴れていく…
「はははは!さすがの化け物も死んだだろ!女どもは報酬の一部だからな!攫ってアジトに持って帰るぞ!」
「は?僕の嫁に手を出す気か?」
街道横の森から、僕は声をかける。
ドサッと遠くで隠れていた魔法使いの死体を置く。弓を射ってた奴は、矢を投げ返して殺している。
矢だけ掴み、投げ返し、すぐ森に入って魔法使いをナイフで切り殺す。最後の魔法使いを殺したタイミングで、そんな聞き捨てならないことを聞いたので、戻ってきた。
「は?」と間抜けな顔をする盗賊。
盗賊の目の前まで飛び、膝を蹴り折り、リーダーっぽいやつは、逃げれないようにしておく。
「ぎゃああああぁぁぁ!?」
「ひぃぃ…」
「にげろぉぉぉ!!」
と逃げていく盗賊を持っていた矢で、サクッと殺し。痛みでずっと叫んでるリーダーとお話をする。
「うるさいな…誰に頼まれた?吐いたらすぐ、殺してあげるよ?」
そういってもう片方の膝もへし折る。
「ぐ…ああぁ‥わからない、ただミカヅキを…殺せば。組織で…優遇……幹部になれると」
ふむ…結構大きな組織があるみたいだな…そこに僕が狙われていると…
おっと…離れてみていた奴が引き返していくな…追わないと…
「んじゃあ。来世はまともに生きてね」
そういって顔面を蹴りぬき殺し、死体は森に投げ捨てておく。
「本拠地に連れて行ってくれるといいけど…まあ無理だろうな…」
そして追跡を開始する。近づきすぎないように、真贋で詳細が見える範囲で…
数時間ほど走る、小さな館に到着する。森を抜けた先に、丘が有って、そこにポツンと館が立っていた。
「これははずれかな…まあ挨拶くらいはしておこう」
館の中から怒号が聞こえるが、お構いなしにドアを蹴り破る。
「失礼しまーす」
「な!?」
「お前…尾行されていたな…」
そう言って、顔に斜めの大きな傷のある男が剣を抜き、目の前にいた男を斬り伏せる。
ツカツカと歩いて、大広間の真ん中で僕は質問する。
「貴方がボスですか?」
「俺如きがボスなわけないだろう。お前ら!」
僕を囲むように、数十名の男が現れる。
「やっぱりはずれか…喋る気はないんですか?」
「この状況で、また勝てる気でいるのか?」
「はぁ…都合よく一網打尽とはいかないか…ではこの館ごと潰すとします…」
ドンッ!という踏み込み音と共に、幹部らしき男を掴み、死なない程度に、窓から外に投げる。
「かかれぇぇぇ!!」
そんな声と共に、一斉に僕に殺到する。
僕は地面を叩く。手の平を広げ、衝撃が拡散するように…
ドッ!と衝撃が辺り一面に広がっていき…
ドドドドドッと森にあったはずの丘が割れて、崩れていく…もちろんその上にあった屋敷ごと…
僕はその場から飛び、さっき投げた幹部っぽい男を抱え森に飛び去った。
「さて…君を生かしたのには理由がある。わかる?」
「ひぃぃ…ばけもの…」
「これ以上僕に関わるなと、お前たちのボスに伝えろ」
「わ‥わかった…伝え…ます…」
そういって男はドタドタと走り去っていった。
これで少しは遭遇率が減るといいけど…
そう思いつつ、馬車のあった位置まで戻ることにした。
馬車まで戻ると、メイドのナギが見張りをしていて、他は眠ってるようだ。
「ただいま。特に異常はない?」
「おかえりなさいませ、ご主人様。街道沿いなので、特に今のところは異常ありません」
「何かあったら教えてね?」
「はい!お休みなさいませ」
夜はメイド3人が交代で見張りをしてくれている。僕が寝る前に半径50キロほどは索敵してから眠るので、大丈夫だとは思うが…メイドの3人がやるというので、やってもらている。
僕は簡単なテントの中に入り眠ることにした。中にはシャルとミーシャとスピカが眠っていた。
メイドのテントと、僕たちのテントは分けて下さい、と譲らなかったので仕方なく分けている。
3人を起こさないように、そっと毛布をかぶって眠る。
明日は飛空艇だ!と少しワクワクしながら眠るのだった。




