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私の世界にようこそ  作者: てけと
第三幕『魔女王は一人の少女に戻る』
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彼の為に彼を殺す

 夕食の時間になったので、いったん話を切り上げ、夕食後にまた話をすることにした。


「おいしーー!マオ!これ美味しいよ!」

「そうね…さすが女王…いいもの食べてるわね…」

「王城並みですね…おいしいです…」

「ふふふ~アリサさんの料理はおいしいよね!喜んでもらえてうれしいよ!」

「ナギの料理も上達してるといいなぁ~」


 割とすぐ打ち解けた私たちは、もう敬語で話したりしていない。シャルさんはとても無邪気で可愛いし、ミーシャさんも澄ました顔してるけど…内心はとっても乙女、ギャップ萌えいいよね。スピカちゃんはまだおどおどしい少女って感じだ。

 あと三日月さんの所のメイドさん三人はとても仲がいい。まるでルイさんとルルさんのように。仲睦まじいのは見ていて、とても微笑ましくなる。


 デザートまで堪能し、食後少し休憩を取って、話の続きを促すことにする。


「で?お兄さんの話聞いてもいい?」

「そうだね…何から聞きたい?」

「んー…まずは管理者さんの伝言は伝えた?なん言ってほしいって?」

「管理者さんの伝言は『ごめんね?私の手違いで呼んじゃって、どうせなら二度目の人生、この世界で幸せに生きてよ!』だけど…こんなこと言ったら…」


 私もほぼ同じだ、もしそんなことを彼に言ったら…


「怒るよね…勝手な事言うな!ってね…」

「これは黙っとこうか…いっても仕方ないし…」

「んじゃあそもそも、お兄さんが死にたい理由かな?」


 死にたいなんて…いつからそうなったんだろう?気になる…私は楽しそうに魔法を使う彼しか、見たことがないのだから…


「人の悪意って言うものに、彼は生まれてからずっと、晒されてきたんだよ…親に疎まれ、人に嫌われ、騙され、自分のすべてを吸い上げられ、それでも彼は、必死にあの世界で生きた。負けたくなかったんだろう、いつか自分が自由に、何者にも縛られず、楽しく生きていける日が来ると。必死でもがいて、足掻いて、たまに耐えられなくなったら、逃げる日もあった。でも結局捕まって…毎日22時間働いても、生活がカツカツで、男娼もしてたって聞いたな…この世界の奴隷なんて優しいもんだよ…それでも彼は諦めなかった…でもそんな日は来ることなく…最後は、病気で死んだ。医療費なんてなかったんだろうね…一日でも休むと明日を拝めないんだから…」


 彼がそんな…まさか…


「そしてやっと死んで休めると思ったら…転生だよ?無責任に彼に…幸せに生きて?なんて言える?この世界は大丈夫、なんて保証できる?僕には無理だ…だから僕は彼の死に協力する。人を殺すだなんて…と思うかもしれない。マオは優しいからね。でも今回、生きてって言うのは彼への優しさじゃない。それは自分勝手な自己満足だ…だからマオ…どうか彼の死に協力してあげてくれないか?」



 そっか…彼は絶望を知ってるから…誰よりも辛さを、悲しみを知ってるから…誰かを楽しませることができるんだね…こうしてくれたら嬉しいと、自分が望むものを、人に与えられるんだね…

(俺には幸せの魔法は使えないけど…)彼は幸せと言うものを知らない、だからそれを…誰かにあげることはできない…だから使えない…という事なんだろう…


 なんて…悲しい人なんだろう…そう思うと涙が零れて…


「そうだね…彼の望みを…叶えてあげたい…それが彼を殺す事になっても…」


 せめて私は…彼の為に…彼を殺そう…それが私の望んでない事でも…


「ふふ…シンさんはやっぱり、僕なんかより、愛される才能があると思うけどなぁ~なんでそんなに向こうの世界で、嫌われていたんだろうね?運が悪かったとしか言えないね」


 私を見てちょっと嬉しそうに三日月さんがそう言う。


「大丈夫だよ?言ったよね。()()()()()()()()()()()って、この世界でシンさんは、自分を想ってくれる人がいっぱいいる。マオ、君もその一人だけどね」

「うん…」

「彼を想っているのは獣人達だ。きっとそのまっすぐな想いにちょっと揺らいでるんだと思うよ。だから彼は…そうだね、ココちゃんが言うには、彼の異常な回復能力を抑えれば、彼の死の旅は終わるんじゃないかって言ってた」

「そうすればお兄さんは、人生を幸せに生きようとしてくれる?」

「確証はないね…なにせ捻くれてるからね…でも可能性はあるってことさ。だから悲しまないで…マオも彼にまっすぐな想いをぶつけて、彼女たちと一緒に、彼を支えてあげてよ」

「…そうだね…よし!わかったよ、三日月さん!ありがとう!」


 そうと決まれば、私は私なりに頑張るだけだ。涙を拭き、前を見る。

 恋する女の子の強さを、見せてやろうじゃないか!


「んじゃあ…お兄さんはどんな人だった?私は一回会っただけだからさ。ちょっと聞かせてよ!」

「いいよ…まあ僕がボコボコにされただけの話だけどね…」


 三日月さんからお兄さんの事を少し聞いて、やっぱり私の思ってるお兄さんなんだな、って確信する。

 自分の事は死んでもいいなんて、物のように扱うくせに、誰かの為ならすぐ動いてしまう。何かしら理由をつけて、簡単に他人を救おうとする。そんな彼を慕う人が多くなって当然だよね…

 でも最初に目を付けたのは私なんだからね!ココちゃんとは少しお話をしたいところである。

 会うのが楽しみだよ。出来れば彼に、付いて行ければなんて、そう思ってしまうよね。







 そして私は彼と出会う。元の世界では、一回しか会えなかったけど…それでも憧れて、恋い焦がれてしまった彼に…

 この世界では一緒に歩けるといいな…彼の隣にはいろんな人がいるだろう、私もその一人に、加わりたいな、ただの一人の女の子、マオとして…

 少しの覚悟と、高鳴る鼓動を隠し、彼の元に向かう。

いつもお読みいただき有難うございます。

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