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私の世界にようこそ  作者: てけと
第三幕『魔女王は一人の少女に戻る』
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籠の中の鳥

 町にメイドさんが御者をする馬車が入ったと聞いた。そんな奇特な事をするのは、元の世界の人間しかいないだろう。私もやったし…

 普通御者は、馬車ごと借りるのが普通だ…まったく…御者をするメイドさんに萌えるとは…いい趣味をしているね。

 私は赤を基調にしたドレスを着ている。傍から見ると貴族令嬢だ。今日の為にいろいろ試着して、これに落ち着いた。髪にはワンポイントの髪飾りをして、センター分けにしている。


 まっすぐ私の屋敷に向かっているようなので、メイドさん総出で迎え入れる。庭の鉄扉から玄関までズラリと並ぶメイドさんたち。これは…やってみたかったことだけど、壮観だなぁ…

 私はルイさんとルルさんを後ろに控えて、玄関口で待つ。すると少し大きめの馬車が屋敷の前で止まり…


 貴族風のシックな黒のスーツを着た男性と、綺麗なドレスを着た女性が三名、、メイド服を着た女性が三名が、馬車から降りてくる。馬車はうちのメイドが、厩舎に運ぶ。


 あれが、三日月翼さんかな?可愛いお嫁さんを連れて…メイドさんもなかなか…あの小さな子は…女装?…でもよく見たら、ちゃんと女の子の顔をしている。大きくなったら綺麗な女性になりそうだ。


 三日月さんが恐る恐る鉄扉をくぐる。私は迎え入れに行く…お兄さんは?


「ようこそ。ツバサ・ミカヅキ様。この町の町長をしている、マオと申します。以後お見知りおきを」

「こ‥これは盛大な歓迎を感謝します。魔女王様。僕の方こそよろしくお願い致します」


 胸に手を当て仰々しくお辞儀する三日月さん。

 堅苦しい挨拶はこの辺にして…


「さて…三日月さん。お兄…シンさんは?」

「それがちょっと事情があって、先にこの周辺を納める、貴族さんの所に行きました」

「ふぇ!?なんで?…立ち話もなんだし…中へどうぞ!」

「ええ…お邪魔しますね」

 

 三日月さんご一行を、大広間に案内し、縦長いテーブルの椅子に座るように促す。


「改めまして、私が魔女王のマオと言います。後ろの二人が、ルイとルルで私の側近のような人です」

「ルイです」「ルルです」と二人がお辞儀する。


「僕はツバサ・ミカヅキです。まあ三日月翼というのが前の名前です。こちらから嫁のシャル、ミーシャ、スピカ。そしてメイド見習いのミカ、アミ、ナギです」

「シャルだよ!」「ミーシャです」「スピカと申します」

「ミカです」「アミです!」「ナギです」


 まあいっぱい女の子を囲っちゃって…でも悪い人じゃ無さそうだね。慕われてるのがわかる。


「汐見さん、シンさんの事なんだけど…」


 懐かしい名前を口にする三日月さん…


「マオって呼んでください。その名前の…汐見真央はもう死にました」

「ごめん…んじゃあマオさん、シンさんは先にこの辺を納める、貴族さんの所へ行きました」

「なんで貴族さんの所へ?」

 

 ご挨拶に?そんな律義な人は見たことないけど…?わざわざ町に入るのに、貴族の許可がいるなんてことは…


「聞く所によると、この周辺にいま、銀の冒険者シンとその一行の通行、及び町に入ることを禁止する、というお触れが出回ってるようでして…」

「は?」


 どういうこと?


「ルイさんルルさん知ってたの?」

「私たちは知りませんでした。ですが…カイン辺りなら知ってるかもですね」

「呼んできてくれる?」


 最近思うんだけど…彼らの過保護さは、正直めんどくさい…私が研究に没頭できるから、多少は大目に見てきたけど…私のやることを邪魔するなら別に…


 いらないかな?


「お呼びでしょうかマオ様」とカインさんが私の元にくる。

「シンさんがこの町に入れないことは()()()()()()?なんで言ってくれないの?」

「…マオ様の安全を確かめるため…彼の動向を少し確認し、マオ様にお会いするのに相応しいかどうか…」

「カインさんは勝手に、私の会いたい人を、調べて邪魔するんだね?そっか…三日月さん」

「どうしました?」

「もしよかったら、私に人種族の国を紹介してほしいな。この国を捨てて、そっちに行った方がいいかも。最近の研究にも、人種族の方が都合がいいんだ」

「はぁ…マオさんが言うなら、いろいろ融通は利きますよ?」

「ルイさん、ルルさん、セフィー、フーコちゃん、ニーアさん、アリサさんだけでいいかな。後はもういらないや」

「マオ様!?」とカインさんが驚く。

「邪魔だもん。そもそも私は、魔法の研究をするために、ひっそり田舎で暮らしたかっただけだし。この町のために頑張ったのも、責任を果たす為にやったことだし…そもそもなんで、責任を負ってるんだろうね?最近考えるんだよ?この屋敷はとても広いし、みんないい人だし、とても幸せだ。でも…」


 屋敷にいる人の事は好きだし、ここにいれば何不自由ないだろう。


「窮屈だよ。私は鳥かごに入ってる鳥なの?私に相応しいって何?言ったよね。私はただの、普通の女の子だって。愛されるのは悪くないよ?でも…まるで割れ物を扱うようにされると…私はあなた達の大事なお人形じゃないんだよ?」


 幸せの魔法も見つけたし…この世界を見て回るのも悪くない。この町はもう私がいなくても、大丈夫だろう。


「というわけで、今回の件が終わったら、私は旅に出ます。今さっき言ったメンバーだけで行きます。この町に帰ってくるかは…わかりません。あとは…もしアミルさんが…シンさんに危害を加えるようなことをしている場合は…あなた達には、私との記憶を失っていただきます。もう二度と関わってこないように」


 捨てるなら、完全に禍根無く捨てる。恨まれないように。


「直ちに伝えます…もうしわけ‥ありませんでした」

「許しません。シンさんが無事、この町に着いたら、聞きますからね」


 失礼します。とカインさんが下がる。

 アミルさんの事だ、多分シンさんを殺して、盗賊の襲撃にでも見せかけるのだろう。

 流石に今回は許せない。


「というわけだから、ルイさん、今言ったメンバーに旅の支度をお願いしといて?」

「マオ様いいの?」

「もし私と同行するのが嫌なら…無理強いはしません…最悪一人でもなんとかします」

「私とルルはどこまでも付いて行きますよ…」

「ありがとう…っと‥そういえば三日月さんは確かお嫁さんの心を、治してほしいとか聞いたけど?」

「そのつもりだったんですが…ここにいるスピカの心はもう…治ってしまいまして」


 おお?それは喜ばしい事だけど…


「シンすごいんだよ~?あっという間に治しちゃって…楽しくなる魔法って言うんだって!」

「魔法なのに魔力は使わないんだってね…」

「種も仕掛けもあるから見破ってごらんと仰っておりました…一つくらい教えてくださってもいいのに…」


 シャルさん達がとても楽しそうに語る。


「ふふ…さすがお兄さんだな~変わってないんだな…」

「シンさんとはまさか…前の世界でお知り合いで?」

「知り合いというか…私が勝手に知ってるだけだと思います」


 多分彼は私の事なんて、覚えてはいないだろう。


「そうですか…でも知ってる人に会うなんて…運命ですね」


 なんてにこやかに、冗談を言う三日月さん


「だったらいいんですけどね…じゃあなんでこの町に?」

「マオさんに一度お会いしておきたかったというのもあります。あと出来れば…うちのメイドの教育実習をお願いできたらと…ここのメイドさんは教育が行き届いてますからね…」

「なるほど…メイド奴隷さんなんだね。それならお兄さんが帰るまでならいいですよ?」

「ありがとうございます…ミカ、アミ、ナギできるだけ吸収しておいで。特にナギはいろいろ教えてもらっておいてね?」

「「「ご主人様のご期待に沿えるよう頑張ります!!」」」


 そういってうちのメイドと共に席を外した。


「いい子たちだね…」

「うん…僕にはもったいないメイド達ですよ」


 彼のために頑張りたいと必死だ。そして彼もあのメイドさん達を想っている。いい関係だと思う。


「まったく…メイド嫁とはいい趣味してるね~」

「ははは…お察しの通りですよ」


 悪びれもなく、にこやかに笑う三日月さん。


「三日月さんはもう、お兄さんと会って話したんだよね?管理者さんから話も聞いてる?」

「ええ…管理者さんの言う通りでしたよ?彼は死に向かって歩くように、旅をしている…今はしていたっていう方が、正しいのかもしれませんね」

「していた?」

「彼にも、僕のように、慕ってくれる人がいました。彼女たちが、少しではありますが…彼を変えたんでしょう…僕らの出番は、あまりないかもしれませんよ?」


 なんて、寂しそうに三日月さんは言った。

いつもお読みいただき有難うございます。

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