幸せの魔法
私は祭りの翌日のお昼過ぎに、狐族の獣人さんの元へ訪れた。
護衛という事で、ルルさんとセフィーが付いて来ることになった。
狐族さんの家に入れてもらい、椅子をすすめられたので座る。ルイさんとセフィーは立ったままだ。
「教えてくれますか?彼の事を…」
期待を込めた思いで聞く。
「私もそこまで詳しくは知らないのですが…彼の名前はシン。どうやら死ぬ為に旅しているそうです」
一人目…管理者さんから聞いてた話だ。
「その旅を終わらせてあげるために、貴方のお力をお貸しください。魔女王様。との事です」
「もちろん…それは私の一つの義務でもあります…そして…楽しくなる魔法について聞いてもいいですか?」
管理者さんのお願いを聞くのは、私をこの世界に呼んでくれたお礼だ。
「そこについてはあんまり書かれてないのです…魔女王様が幸せになる魔法を目指していると、お聞きして、カマをかけてみてほしいと、そうですね…彼は『俺はみんなが楽しくなる魔法は得意なんだ』と言ってたそうです」
まだ確信はできない…同じような人もいるかもしれない…
「では私にも、シンと言う方の、情報を分けてください」
「協力いただけるという事ですので…喜んでお話いたしましょう。彼は死病クエストを受注し、現在向かっているところです。解決して戻り次第、彼を慕っている同族が、魔人国首都に誘導するはずです」
「…いつごろです?」
「彼女の予測では…あと63日後の獣人国発の飛空艇で向かうようですね。彼の気まぐれで、獣人国首都に、あなた方を招待する策もあるそうですが…本筋は飛空艇でしょう…」
あなた方?
「もう一人いるのですか?」
セフィーの感じてた三人目?
「ええ…こちらはツバサ・ミカヅキ卿様です。すでに魔人国への誘導は済ませておりますので…この町に68日後に到着する予定です」
若干の誤差はあるかもしれませんが…と獣人さんは言う…綿密すぎる…どこまで計算されているんだろう…
「もし獣人国に来いというなら行きます。なので…その時は教えてください。あと飛空艇が出発したときも、連絡をください」
「かしこまりました…ご協力感謝します…では私はこの話を彼女に届けるので…本日はありがとうございました」
「いえ‥こちらこそ…逐一情報お願いします」
そうして屋敷に帰る。私の頭の中は彼の事でいっぱいだ…希望を持つと、違った人だった時の絶望が心を押し潰してしまうかもしれない…それでも…期待せずにはいられなかった…
私はお兄さんをどう思ってるんだろう?すごい人、楽しい人、子供のように笑って…あんな楽しそうにされたら、周りだって楽しくなるよね…そんな彼にドキドキして…恋だったのかな?隣で私もいっしょに魔法を使って?それはいい…きっと楽しいだろう…ふふ…そんなことを思うとついニヤけてしまう…
私は魔法に憧れたのではなく…魔法を使う彼に憧れたのだろうか?
そして彼と旅をしながら、周りの皆が笑顔になって、そしていつか家庭を作って…子供もできて…彼は子供が好きだから、溺愛するだろうな…ふふふ
「…ぉさま‥マオ様!!」
「ふぁい!」
と情けなく手を挙げてしまう。
「起きてました!」
「そうじゃありません…最近ボーとしてはニヤけるの繰り返しですが…どうしました?」
ルイさんが心配そうに、私の顔を覗き込む。
「いや…なんでもないよ?」
「そうは見えません…何かありましたら…私たちにも、それを背負わせてください」
「ルルさんとルイさんも…一緒に?」
それはどうなんだろう…彼を独占…したい?…でもルイさんとルルさんも一緒に家庭を気付く?彼とイチャイチャするルイさんとルルさん…嫉妬する?たぶん私ならそこに混ぜてもらうだろう…三人一緒に愛してもらって…それに…彼の周りは笑顔が絶えないだろう…
ならそれも一つの幸せの形なのかもしれない…皆が笑いあって…幸せそうに暮らす…それが幸せの…魔法?
「そっか…」
「マオ様?」
「ううん…私の思う、幸せの魔法…見えた気がしたんだよ。もう大丈夫だよ、ルイさん。結論は出たよ…」
「マオ様の目指した魔法が?」
「うん…この魔法はきっと…魔力なんて使わないものなんだね…お兄さんが言ってたのはそういう事だったんだね…想像して、想い浮かべろ…この世界じゃなくても…きっと使えた魔法」
「魔力を使わないのに魔法ですか?この世界?」
首を傾げるルイさん。可愛いなぁ~
「ふふふ!そんな素敵な魔法を使う人を、私は知ってるんだよ!」
そう言えばみんなに私の事を詳しくは話してなかったね…そこから話さないと、彼の事は説明できないよね。
そこからまず準備しよう。彼なのか…まだ定かではないけど…どのみち同郷を歓迎するのだ。
私なりに精一杯お出迎えしなくては!
私がボーっとしている間に30日ほどたっていたようだ…どんだけ考え込んでいたんだろう…恥ずかしい…
ちょうど頼んでたメイド服と執事服。あとバッチが届いた。これをみんなにあげるついでにお話をしよう。
いつもお読みいただき有難うございます。




