生きる為の旅に
町をシユとミーコとブラブラ歩いて、夕方に城に帰る。
城に帰ると、ココと魔女王に呼ばれたのでそちらに向かう。
応接間のような部屋に案内され、中にあったソファーに座る。
「出来たのか?俺を殺す魔法が…」
「お兄さんを殺す魔法は創れないよ?創るつもりもないよ?」
「シン。このナイフを…」
ココから刀身が白いナイフを渡される。
「これは?」ナイフの刃をまじまじ見るが…刃がついてないなこれ。
「そのナイフはミスリルって言う、魔力が通しやすい金属でできてるんだよ?それに私の創った魔法を付与しといたよ!」
「後はシンが、そのナイフを使って、サーニャやリリアの首輪のように造ればいいと思います」
「因みに、魔女王が創った魔法ってのは?」
「マオって呼んで?」ジーと俺を見つめる魔女王。
「…マオが創った魔法ってのはどんなのなんだ?」
「私が創ったのは、神に触れる魔法だよ。イメージはこの世界の管理者さんだね!」
「はい。なので今そのナイフは、神に触れる魔法が付与されています。なので…」
「俺が殺すイメージで造りなおせばいいんだな…」
俺は神…この世界の管理者って言うのか?に会ったことがない。だからそれはイメージできない…
なので俺はそのナイフに、殺すイメージを…リリアやサーニャの首輪に込めたイメージを…?
違うな…ありったけの怨念と殺意を込めて…このナイフに、神と俺を殺すイメージを…
数分かけて…丹念に…俺の恨みを込めて…殺す殺す殺すコロスコロス
「ふぅ‥これで出来たのか?」
真っ白だったナイフはしっかりと刃が付き、刀身はまさに漆黒と呼べるほど真黒になっていた。
剣の峰になぜか六本の白い線が入っていた。
「お兄さんはそこまで…」とマオが悲しそうな顔で俺を見ていた。
「ええ、マオ…きっと…シンはこのままだと…」とココも悲しそうな顔で見ていた。
「なんだよ?成功したんだから喜べよ」
なんか失敗した空気になってるぞ?
「では私はちょっと、席をはずしますね」とココが立ち上がり出ていく。
「んじゃあ俺も…」
「お兄さん。ちょっと私と話さない?」
俺の服の袖を握って逃がさないようにするマオ。
じーっと上目使いで見られ…俺は観念して、話を聞くことにする…
「お兄さんは私のこと覚えてる?」
「うーん…俺の手品を見に来てた女の子だよな…?多分?」
「手品だったんだ…私はお兄さんの魔法を見て、魔法使いを夢見たんだよ?」
確かに俺は、手品ではなく魔法と言って各地で手品をしていた。魔法って言ったほうが夢があるし、子供も楽しんでくれるからだ。
「そっか…幸せの魔法…やっぱりあの中学生だった女の子なんだな。可愛くなったな」
「ふふふ~惚れた?私に惚れちゃった?」
「ないない…色恋してる暇はないんだよ…俺にはな‥」
「むぅ…でもそのナイフができたんだから、もうお兄さんの旅は終わりじゃないの?」
この先あと50年か?60年か?不死の効果が残ってるなら100年以上は生きるかもしれない。
あまりにも死が遠い。俺はまだこれを使っても化け物のままだ…
「まだ不完全なんだよな…まあ一段落と言ったところなのか」
俺がやろうとしてる事に、一歩近づいたというべきか。
「まだ続けるんだね…死ぬ旅を…」
「ちょっと違うな…俺の死を探す旅は…ここで終わりだな‥」
「じゃあ何のために、お兄さんは行くの?もしよかったら、この町で暮らしてもいいんだよ?」
そんな提案をしてくるマオ。この町だったら、何不自由なく暮らしていけるだろう…しかし
「それもいいんだが…俺はこの世界で、生きる為の旅をする。その為に行かないといけない所がある」
「…行かないといけない所?でもお兄さんが、死ぬための旅をやめるなら…いつかチャンスはあるのかな?」
「そうだな。旅を終えて帰ってきたら、ちゃんと想いに応えられるかもしれないな…」
「…じゃあ私たちもいつか報われるのかもしれないね」
「そうだといいな」
「…さて!私はお兄さんに聞きたいことがたっくさんあるんだからね!」
空気を換えるようにマオが声を出し、ソファーに俺を押しやって隣に座る。
「何でも答えてやるぞ?」
「お兄さんも首都観光したんだよね?どうだった?」
「そりゃ…すごーいだな。俺みたいな似非魔法使いには眩しい光景だったよ」
「私と一緒だね!あれは心躍ったなぁ…」
「そうだな~あれは心躍る。俺が魔法を使えるなら、どんだけよかったか…」
「そうか…お兄さん魔力が…」
そう、俺には魔力がない。数値がないどころか、魔力というステータスがなかった。
「手の届くところにあるのに使えないのがな…ムキになって…俺の魔法でこの国を蹂躙してやる…ってホントに思ったぞ」
「あはは…でもお兄さんの魔法は心を掴む魔法だからね。本当に、この国を変えちゃいそうだよね」
「そんなわけないだろ…手品ごときで国が変わるとか…」
「お兄さんの魔法の本質は、手品じゃないよ…もっと別の所にあるんじゃないかな?」
「別の所?」
「私もうまくは言えないんだけど…なんだろうな~?」と可愛く首を傾げるマオ。
「それより魔女王様は魔法に卓越してるんだろ?うらやましい」
「私はお兄さんの魔法を、まだ使えないけど、それでも師匠だとは思ってるよ?」
「魔力もないただの人に、神の如き、魔女王様が師事してるだなんて知ったら、みんなひっくり返るな」
「お兄さんは私に教えてくれたよ?魔法は心で紡ぐものだって。自分が楽しいから他の人も楽しい…ってか神の如きってなに!?」
「知らないのか?マオ神様?」
「ふぇ!?」
その後もまあ…魔法談義をしたり、俺の魔法を教えたり…途中で疲れたのか、俺の膝の上に、頭を乗せて寝てしまった。
神に触れるという魔法を使わせたからだろうな…彼女の髪を梳くように撫でてやる。
夕食ができるまでこうして撫で続けるのだった。
コンコンとドアがノックされる。
「マオ様?夕食の時間だよ?」
夕食の時間のようだ…昨日は調理場にいたので、今日は客としてテーブルに向かおう。
「マオ。夕食だぞ?起きろ」
「ん…もうちょっと…」
「さっさと起きないと…ひどい目にあうぞ?」
「お兄さんに…なら…何されても…いいよ」
許可を得たので、左手で耳を撫で、右手で腹を思いっきりくすぐる。
「ひゃ‥んふふ…あっん‥あははははは…あはは…まいった!…やめてぇ…あんっ‥」
「マオ様!?」
バンとドアを開け入ってくるメイド、髪が短い方?ルルだっけ?
「マオ様から離れろ!」
と言いつつ俺の横っ面をフックで殴ってくる。
「ほら…マオが…早く…起きない…から…俺が…おい!!殴りすぎだ!!」
ひたすらフックしてくるメイドに怒る。人が喋ってんのに顔を殴打すんじゃねえ。
「ルルさんストーップ!」とマオが止めに入る。
「はぁはぁ‥」
「俺がわるかった…だからそんな怒んなよ…」
飯にしようぜ?な?と部屋から出ていく。リビングに行くとみんな席についていた。
「今日はシンりょうりしないのー?」とシャルが残念そうに言う
「まあメイドの見せ場を、あんまり奪うもんでもないしな」
「昨日の夕食は、とても美味しかったわ…気づいたら、もうデザートまで食べ終わってたし…」
「ミーシャも割と、食い意地はってるよな?ミカヅキ卿は貧乏なのか?」
「シンさん…あんな元の世界でも食べたことない、フランス料理のコースが、この世界にあるわけないでしょ…」
「まあ、ナギってメイドに、俺たちの世界のレシピ渡してあるから、これからうまいもんが食えるだろ」
「ありがとうございます!!」
どんだけだよ…立ち上がってお辞儀すんじゃねえ。
「ねえねえ!お兄さん!うちのアリサさんにも?」
「もちろん。あの二人は、才能があるぞ?すぐ俺なんかより、うまい飯が作れるようになるだろう」
「楽しみだよ~」
まあまあ美味しい夕食を食べ、軽く雑談すると、俺は部屋に戻る。
もうすぐ来るだろう獣人たちを待つ。
俺の部屋に入り、俺が起きてるのを見て…寝間着を着たココが俯いて話す。
「やっぱり行ってしまうんですか…シン…」
「さすがココ。お察しってわけか?」
「シンは、他に当てがあると言ってました…なら今回の結果は満足しないと…」
「いや?大満足だよ。ありがとな。俺はこれで死を手に入れたわけだ」
「だったら…私たちと共に生きませんか?」
悪くないとは思うんだ…しかし
「これは俺の…そうだな…ケジメ?…矜持?…まあただのわがままだな」
「シンは本当、自分勝手」とサーニャが潤んだ瞳で睨む。
「うん…俺でもそう思うな‥だけどこれが、俺の最後のわがままだ」
「本当に最後ですか?約束できますか?」と必死にこちらを見るミーコ
「約束するさ。俺の最後のわがままが終わったらさ、想いに応えてあげられると、俺は思うんだよ」
「私はお兄ちゃんが言うなら、構いませんが…」とシユが涙ぐんだ眼で口をキュッと結ぶ。
「シン…そのわがまま…ちゃんと…生きて…帰ってこれ…る?」とリリアが鋭い目で見る。
「俺が俺のまま帰ってこれるかは…保証できないが…その時はお前らが、俺を見つけてくれよ」
愛想尽かしてなかったらな、と俺は笑って言う。
「私を…ただ待ってるだけの…女と…思わないで…くださいね?」とココが途切れ途切れ言葉を紡ぐ。
「知ってるさ…まあ俺が行こうとしてるのは、ちょっと特殊な場所だからな…もし迎えに来れるなら、来るといいさ」
こいつ等なら、もしかしたら来るかもな、と苦笑いする。
「それでシンはもう行くの?」とサーニャが俺の腰に抱き着く。
「ちょっとこの旅は…長くなりそうだからな…今回のご褒美をな?」
「愛して…くれる…の?」と艶やかな笑みを俺に向けるリリア。
「お前らが果てるまでは付き合ってやるよ?こづくりはまた今度だがな」
「シン!!」
「お兄ちゃん!!」
「先生!!」
そうして1対5の戦いが始まるが…生娘如きが束になったところで俺に敵うはずもなく。
数時間後には、指と口だけで全員果てていくのだった…
「さて…んじゃあ行くか」
手術が終わったかのように、桶にある水で手を濯ぎ、神殺しのナイフを胸元にしまう。
部屋を出ようとすると…
「シン……やだぁ…いかないで…」と袖を掴むココがいた。足が痙攣していて立ってるのがやっとなのか…
「意識を保ってるなんてすごいな…じゃなくて…」
ココにキスをする。ココの口内を蹂躙するかのようなキスだ。
「んっ…やらぁ‥あっん…」
ふにゃっと膝から崩れ落ちるココ。
「ココ。これはもらっていくぞ?」
そう言って俺は木でできた指輪を見せる。
ココの目が見開いて、潤んだ瞳から、涙がボロボロと零れる。
「もし俺が帰ってきて…ココが俺を見つけられたら…これをお前に返す。そしたら…俺の左手の薬指に着けてもいいぞ?」
「は…い…ぜったい…みつけます…からね…」
「俺よりいい男が見つかったら迷いなく選べよ?重い愛はごめんだ」と苦笑いする。
「シン…じゃないと…いやぁ…」
そうしてココは果てる。ベットに運んでやり…俺は城を後にする。
城を出て少しするとメイド二名が待ち伏せしていた。
「送り迎えか?ご苦労」
「おとなしく屋敷にお帰りください」
「マオ様にお願いされたからね…捕まってもらうよ?」
メイドのルイとルルだっけか…これがココの最後の悪足掻きだろうな…
「もちろん。推し通る」
「私たちに敵うと…」
ドスンっ!と何かが落ちる音がメイドの後ろからする。
バッ!とそちらを振り向くが…特に何かあるわけではない。
だが…
「ルイ姉!?」
「一体…何を…」
意識を保ってるのがやっとなのか、途切れ途切れ喋る。
「必殺いい子はおねんねしな、だな」
パチンッと指を鳴らすと、ルイが糸が切れた人形のように崩れ落ちる。
別に催眠術ではないのだが…何をされたかわからなくするのが目的だ。
「お前ェ!!」
とまっすぐ突進してくるが。
途中で何かに足を引っかけて転ぶ。そのまま転んだ先の糸に絡まり動けなくなる。
「すまんな…マオを幸せに…この世界で、楽しく生きられるように、支えてやってくれ…」
そう言って糸でぐるぐる巻きになったルルに即効性の麻酔を吸わせる。
「言われ…なく…とも…」
「任せたぞ?」
二人の視線が一瞬切れた瞬間に、ピアノ線でのトラップを配置。剣で切られそうだったので、ルイは先に麻酔を吸わす。
視線誘導は俺の魔法の基本だ。
ベットを具現化して、二人をそこに運び、風邪をひかないように、厚めの掛け布団をかけておく。
流石に俺の目的地は遠いので、自転車に推進ジェットを搭載し、これで移動する。
「まず目指すのは…この世界の果てだな」
そしてジェットエンジンなんて、そう簡単に制御できるわけもなく、月を背景に間抜けにも、どこかの映画のように、空を自転車に乗ってぶっ飛んでいく。
「見てんだろ?管理者。今からお前をブン殴りに行くから、首洗って待ってろ!!」
そう誰かに叫びながら…空を飛んでいく。
いつもお読みいただき有難うございます。
次回8章…明日(4/7)に更新できてるといいのですが…




