魔女王の城
俺は屋敷に入る前に引き返そうか迷っていると。魔女王は俺の腕を取り、城の中に引っ張っていく。
もう引き返せそうにないので…諦めることにした…
「ちゃんと逃げずに付いて行くから…とりあえず腕を離してくれ…」
なんか首筋がチリチリするんだよ…多分あのメイドの殺気だろう…
「お兄さんは私とくっつくの嫌?」
「無理やりは嫌だな」
「そっか…」
そう言って魔女王は俺の腕を離す。ゾクっと背筋を冷やす視線が向けられる。
「おい…そこのメイド二人、俺を殺したいなら勝手に殺せ…焦らすなよ…殺気がうっとおしい」
「では…」と剣を抜くメイド。
「ルイさん!?」
「マオ様を悲しませる男は死ぬべきだよね?」
「ルルさん!?だめだよ!」
そう言って二人を抱きしめる魔女王。
「愛されてんなぁ…とりあえず俺は俺の用件が終わったら出ていくつもりだ…そう殺気立つな」
「無礼を働いたら即座に斬り落としますからね」
「叩き潰すよ?」
「好きに切り刻み、叩き潰して、すりつぶせよ…そんなんで死ねるんだったら、俺はもうこの場所にはいない」
好戦的なメイドだな…獣人たちも臨戦態勢になっているが…
「お前らも…一切の戦闘行為を禁止する。破ったら俺はすぐ消えるからな…俺なりに次は考えがある」
「わかりました…」
「ルイさんもルルさんも!お兄さんたちと戦闘行為は禁止!殺気も!破ったら…わたしはお兄さんと共に消えます!」
「「…はい…」」
勝手に俺を巻き込むんじゃねえ…
大きなリビングに案内され、そこにミカヅキ卿と嫁達、メイドもいた。
「ん?ミカヅキ卿?帰ったんじゃないのか?」
「卿は…無駄なようですね…いえ‥マオさんの屋敷?城?のメイドさんの質が良いので、家のメイドにいろいろと教えてもらってるんです」
「そう言えば気にしてなかったけど、そのメイド三人は、奴隷なんだな…なるほどな」
「まあ立ち話もなんだし!座って座って!」と魔女王が勧める。
真ん中に魔女王が座り、俺、ココ、リリア、シユ、ミーコ。その反対側に、ミカヅキ卿、シャル、サーニャ、ミーシャ、メイド三人。
もうサーニャはいいんじゃないかな?こっそり置いていくことを考えておく。
「さっさと本題に入って、解決したら帰るぞ。ココ」
「はい。ではこの度はシンの為に、お力を貸してくれることを感謝します」
「私にできることなら協力するよ!でもいくつかこっちのお願いも聞いてほしいな」
「お願いによるが?俺の行動を縛るのは無しだ。俺が死にたいときに、死ねるようになる為に、この場所まで来てるんだからな」
「むぅ…管理者さんに聞いた通り…なんだね…どうしてそうなったのかも、ミカヅキさんから聞いてはいるけど…」
「わかってるなら言うことはない。話を戻す。どうやるんだココ?」
「シンの異常な回復能力は、スキル?と言うモノの所為なのですよね」
とココが紙を出す。
「シンのスキル≪超神速再生≫ですね」
「んー…ミカヅキさんが吸い取れたり?」
「それだとシンさんを殺しちゃうと思うけど…いいの?」
「「「「「「だめ!!」」」」」」
俺はいいんだが…
「私の魔法でスキルを消す…?でも…」
「はい。シンのステータス?の数字を見ると異常です。この体力っていうのが体の生死の数値なら…シンはそのスキルをとれば、触れれば死んでしまうレベルでしょう」
俺の体力は3しかない。戦闘力3のごみ以下だった。
因みにココで540ある。
「俺はそれでもいいけど?」
「シンは黙っててください。それで考えたんです。シンは不老不死なのか、不死なだけなのか」
俺の問題なのに黙れって言われました…
「私の予測では不老不死です。シンは何も食べなくても生きていけます。つまり代謝を行っていない。このスキルは死んだり生まれたりする細胞そのものも回復している…というより元に戻している」
「確かに俺は髪が伸びたり、爪が伸びたりしないな」
「まるで時間が止まってる感じなんだね?」
「そうです魔女王様。ならどうしてそうなるのか…異常すぎる再生能力を抑えるにはどうするのか…そこでこの一文字です」
「「「神?」」」
「これだけ消せば、シンは老いて死ぬことができるのはないでしょうか…?」
逆に言うと歳をとらないと死ねないのか…
「つまりココちゃんが言いたいのは…」
「そうです。神殺しの魔法を…使えないかと」
「やってみないとわからないけど…神を殺す…かぁ‥無理だね…私は殺すとか危害を加える魔法は創れないんだよね…」
「そっか、ありがとうな、時間作ってくれて。俺はもう行くわ」
と席を立つ。ココに肩を抑えられ座る。
「なんだよ…俺にちょっと当てがあるから行きたいんだが?」
「別に魔女王様にそこまでしてもらう必要はありません。神に干渉する。それだけでいのです」
「干渉するだけなら…大丈夫かも?」
「少しこちらも用意する者があるので…」
「じゃあそれまでここで暮らせばいいよ!部屋は余ってるし!ゆっくりしていってね?あと魔女王はやめよう?…マオって呼んでね!」
そうして一旦会議はお開きになった。
やることもないので、城をブラブラ歩く。
すれ違うメイドにちらちら見られるが…別に気にしない…
するとちょっといい匂いがしたのでそっちに向かってふらふら歩く。
今日の夕食を作ってるんだろうか?数名のメイドが慌ただしく料理を作っていた。
へぇーさすが女王の飯だけあって、凝ってるんだな…気になったのでちょっと見学する。
………
「おい!野菜の切り方荒いぞ。均一にしろ、火の通りがまばらになる」
「やりなおします!」
「火を通し過ぎだ…これじゃあせっかくの旨みが全部出ちまう、食感もグズグズだ…これは逆に賄いのスープに使うか…おい!そこ火が強すぎだ、中火以上は使うな」
「はい!」
「俺は肉に集中する。魚と、肉に使う付け合わせの野菜の下処理は言ったとおりにやれ。急ぐな、丁寧にやれ」
「おまかせを!」
外側を強い火でさっと焼くことで、旨みを逃げないように…中は少しレア…集中する…
「よし…盛り付けは任せる…」
「はい!丁寧に美しく!」
「そうだ。抜かるなよ?魚はソテーするつもりだったが…カルパッチョににするか‥出来たら運べ!客を待たせるなよ。客の食事ペースは?」
「現在、スープをお召し上がり中です、あと数分で終わるかと‥」
「魚はまだか?俺が盛り付けに入る。出来次第、魚料理運べ!」
「はい!」
「肉の付け合わせの野菜準備してろ!俺は口直しを用意する!」
口直しの香草のシャーベットを準備し、魚料理が食べ終わったタイミングで給仕させる。
「肉料理盛り付け終わったら休め。あとは俺がやる。お前らの飯は俺が作ってやる」
「「「ありがとうございます!」」」
デザートのミル・クレープを作る。クレープ生地とカスタードを交互に積み重ねていく。この村の特産品のフルーツを砕いて混ぜたクリームも、ところどころ重ね、さっぱりとした仕上がりにする。
ホール型に作ったミル・クレープを切り分け、上にクリームとイチゴのような果物を盛り付けていく。
「よし…あとは食事が終わり次第、適当に出すだけだ。あとは…厨房の賄だな…」
「お兄んさん何してるの?」と魔女王が顔を出す。
「おい。客が神聖な厨房にくるんじゃねえ。おとなしく席で待ってろ」
「こっちのセリフだよね!?」
「追い出せ!」
「はっ!」
「ええ!?あなた達は私のメイドさんだよね?ちょっと!?」
無礼な客を追い出し、俺は賄作りに向かう。失敗した食材は結構あるのでこれを使うか…
「おいしいです…あんな余りだけでこれだけの味を…」
「このみるくれーぷ?もとってもおいしいです!」
アリサとナギというメイドらしい。こいつらが食事を一端に担ってるらしい。
「いい食材を調理して、おいしい食事ができるのは当たり前だ。それを俺は、料理とは呼ばない。特性を掴め、相性を試せ、いろんな調理法を試せ、焼け、煮ろ、蒸せ、揚げろ、温度は適切か?時間は?その食材はどこが適温だ?切り方はそれでいいのか?そういう経験と努力の積み重ねが、お前らを料理人にする」
「なるほど…」
「勉強になります」
「俺の世界のレシピを…あと食材の特性を書いておいた。魔女王とミカヅキ卿には懐かしい味だ。食材はいろいろ試して、あいつらと相談しながら作ればいい」
少し厚めの本を1冊づつ渡しておく。この世界の文字で書いてある。
「「ありがとうございます!」」
「あいつらが、お前らの料理で喜んでくれるといいな…」
「「はい!」」
ちょうどいい暇つぶしも終わったので、調理服をジャージに着替え、寝床に戻る。
久々に忙しく働いて、心地よい疲れと共にベットに入る。そのまますぐ意識を落とした。
朝いつも通りに起き、獣人たちを起こさないようにベットから這い出る。
日課になってしまってるので癖で、トレーニングをする。少し重めの木刀を振り回す。すると‥
「努力は認めますが、動きに無駄がありすぎますね」
昨日殺気を出してたメイドの一人だ。たしか…ルイ?
「まあ動きに無駄があるのは承知だ…なんせ素人だ。こんな方法でしか訓練できないもんでな…」
「一戦ご教授いたしましょう。私にもその木の剣を」
「それは有り難いが…お前は真剣でいいぞ。俺はどうせ死なないしな」
「……では」
メイドは腰にさしていた剣を抜いて、俺には対峙する。
「んじゃあ行くぞ!」
俺は突っ込み、メイドの胴体めがけて木刀を振る。しかし剣で弾かれる。
がら空きになった横っ腹に蹴りを食らう。少し後退したが堪え、突っ込んでくるメイドに対応すべく…
上からの斬りこみが来る、半身にして避ける。と思ったら横から蹴りがはいる。
「チッ…」
またメイドが突っ込んでくる、上からの袈裟斬り。木刀でガードする。と思ったら膝蹴りが顔面に入る。
「なるほどな。大体わかった」
次は俺が突っ込む、木刀を上から振り下ろす。それをガードしようとするが、その瞬間俺は木刀を手放し、片手にゴムのナイフを作り、胸に突き刺す…前に手を払われる。
手を払われた反動で、そのまま回し蹴りを放つ。バックステップで避けられる。
そのままナイフを投げつけ詰め寄る。手で止められ投げ返されるが無視。そのまま突っ込み…
「なっ!?」
メイドの驚きの声が聞こえた。タックルして、メイドの上にのっかる。
「油断したな?俺の勝ちだな」
鼻がくっつきそうな距離で俺は勝利宣言する。
「どいてください…」顔を赤くしたメイドが小声でそういう。
「ん?そうだな…」
「ルイさんとお兄さんがいちゃついてる…いつの間に…」
「マオ様!?」
俺はメイドの上からどいてやる。そして、そそくさと城の中に戻っていく、面倒からは逃げるが勝ちだ。
城にいても暇なので、ブラブラと町を回る。なんていうか…変な町だな~?あるところを境に、住居がガラッと変わる。レンガ造りの家から木材の家に。どうやら木材の家には、獣人が住んでるようだ。
獣人の家は見飽きてるので、レンガ造りの方を回る。いろんな商店があり、人も活気づいていた。
俺はよく考えれば、今無一文なので、ただブラブラし、川のほとりで座ってボーとする。
もう町から出て行ってもいいのだが…俺の後ろをついてくる奴がいるので出れない…というか…
「逃げないから出て来いよ…シユかサーニャだろ?」
「なんでわかったのー?」
とシユが出てくる。こっちに走ってくる。
「追跡は犬の得意技だろ?どうせココに頼まれてるんだろ?あと…反対側にミーコもいるな?」
「すごいですね先生は…」シュタっと横に現れる。
「ミーコは逃走した俺を摑まえる役だろ?」
「正解です!」
俺の横に腰を下ろし、頭を膝の上に乗せる二人。
二人の頭とか頬とかを撫でながら…
「ココは準備とやらをやってるのか?」
「そうですね…お姉ちゃんは頑張ってるので…ちゃんと労ってあげてくださいね?」
「ココはいつも頑張ってるよ!」
「そうだな…俺が化け物じゃなくなったら…その時はいろいろ考えてやるよ」
「私たちにとって先生はただの優しい人ですけどね?」
「ねー?」
こいつらが好意を抱いてる原因それは、俺の力によるものだ、それは果たして俺の力と言えるのか?
俺がもし何の力も持ってない、ただの人だったら…
ただの人になった俺を、果たして彼女たちは…好きになるのだろうか?
いつもお読みいただき有難うございます。




