魔女王の町へ
ツバサ・ミカヅキ卿と別れ、徒歩でとある貴族の町へ向かう。
「その貴族はなんで俺たちを規制するんだ?ココなら予測が立ってるんじゃないのか?」
ココならわかるんじゃないのか?
「それが…いきなり名指しで、『冒険者シンとその獣人たちをマオの町へ入れるな』と触れ回ってるそうで…それに、あそこの町はなぜか、手練れがとても多いのです…強行突破もできません…意味が分からない…」
しかし自分の住む町に、自分の名前を付けるかね?そういうやつなのか?あの子は…痛い子?
「もしかしたら、これから行く街でも、戦闘になる可能性があります。気を引き締めてください」
「…戦闘になってもなるべく殺すなよ?」
「もちろん。シンは私たちが守るので、手を出さなくていいですよ」
「まかせて」
「あれ?サーニャ!?いたのか?シャルは?」
「むぅ!」
とサーニャが俺を叩く。
まあ最悪町ごと潰すか…もしそれでココの策がつぶれても…俺は何となく死ぬ方法を思いついてる。
「私たちは、その町の貴族アミル・マオシン卿に一度話を聞きます。出来れば穏便に町に入れるように交渉します」
「は?マオシン卿?」
「はい。マオシン卿」
マオシン?マオ神?まじで?崇められてる系?それとも…名乗っちゃってるの?痛い子?
「俺…魔女王のところ行きたくなくなってきたな…」
厄介事しかなさそうな地雷原に…俺たちは突っ込むようだ…
「大歓迎だな…嬉しい限りだ…」
町に入るや否や、住民だろうか?多数の人に囲まれる。
ココたちは臨戦態勢だ。
とはいえ…
「戦うっていうより、品定め?」
こちらを図るような目で見ている。そんな事をのんきに考えていると…
上空から剣を俺に振り下ろす鎧姿の男が…
避ける気のない俺の頭がかち割られる前に、ココが飛び上がり剣を受ける。
ガギンッ!と音をたて、両方ともはじかれる。
「恐れ多くも、我らが神を誑し込んだ罪を…死を持って償え下郎」
甲冑にローブ姿の騎士が、そんなことを言う。
「死ねるならいくらでも償うぞ?さっさと殺して見せろ?」
「ぬかせっ!!」
ココがそいつに相対し、剣を交える。そして…
俺に魔法が降り注ぐ、火でできた矢を差され、風で巻き上げられ、氷で貫かれ、岩に押しつぶされ、雷にうたれる。
(おおー攻撃魔法!そう言えば初めて見るな…)
むくっと立ち上がると、ココはまだ戦ってるが、ほかの獣人は消えていた。何処へ?
「今のを無傷とか…化け物か?」と甲冑の男
「喋る余裕があるんですかねっ!」
ココの剣が甲冑の男の剣を跳ね上げ、ココの回し蹴りが男の胴を打つ。
男は数メートル吹き飛ぶが、耐える。
「風魔法の補助ですか…厄介ですね」
「こちらのセリフだ…光獣並みか…それ以上だな…」
ぼへーと戦闘シーンをながめてると、俺が氷に閉じ込められて動けなくなる。
おお!定番の氷の檻だ!これを砕けば俺は死ぬ?
「シン!?」
「よそ見してもいいのか?ウィンドウカッター!」
「くっ…」
魔法で放たれた無数の風の刃を、紙一重で避けていくココ。そこに駆けて行く甲冑の男。
「もらった!」
とココに剣を振り下ろす男。ココは風の刃を避けて、体勢が悪い。しかし…
シュルシュルッという音が聞こえ。
「なっ!?」
糸に巻かれ身動きが取れなくなる男。
そしてココがすぐに口を縛る。ほかの獣人たちが、同じようになった、ローブを着た男達を俺の前に転がす。
「時間どおりですね。ご苦労様です」とココがほかの獣人に言う。
「ココも…時間稼ぎ…お疲れさ…ま」とリリア
「さすがココ。捕縛完了」とサーニャ
「取りこぼしなしです!」とシユ
「お兄ちゃんから貰った糸とても使いやすくていいですね!」とミーコ
俺は周りを燃やし、氷から解放されると、獣人たちを撫でてやる。
「よくやった。俺を囮にするのはあれだが…」
「んっ……殺すだけなら簡単ですが…迅速に取り押さえるにはこれが最善でした」
「シン。ごめんね?」
「心…苦しかった…けど…ね」
「これだけの人に紛れられると…敵の判別が難しいですからね…」
「魔法使った人の匂いを私が教えて捕らえたんだよ!」
シユが教えてくれる…なるほどな。対魔法使いとか今までなかったしな…
それよりどうするか…
そんなことを考えていると、甲冑の男の頭に、真っ白なハトが止まる。伝書鳩?
「んーんー」と外してくれとた多分、懇願している男。
「外してやれ」とミーコとココに外すよう促す。
ハトの足に付いていた手紙を読み、顔を真っ青にして、こちらに頭を下げる。
「もっ…申し訳ありませんでした!!何でも致しますので…このことはご内密にしていただけないでしょうか…」
と体をガタガタ震わせる男。
何が書いてあったんだ?
「子犬にじゃれられた程度で、いちいち言うほど子供じゃないんでな。規制を解除してくれりゃ言う事は何もない」
「それはもちろん…馬車も最高級なものを用意し、マオの町へ向かわせましょう」
「とりあえず飯と宿だ。出るのは明日にする」
「すぐ用意します。ご案内しろ」
すると執事のような男がいつの間にか現れ、俺たちを案内する。
「ミーコ。ほかのやつも糸は解いておけよ?あの糸は切れにくいからな…」
「もう解いておきました!」
行動がいちいち早いよな…まあいいことなんだが。
執事に付いて行ってると、でっかい教会が見える。そう言えばこの世界で教会って見たことなかったな。
「あれはなんだ?」
「見ての通り教会でございます。我らが神を祀っております」と執事が答える。
「ふーん‥神っていうとこの世界の管理者とか言うやつか」
「管理者っていうのはわかりかねますが…我らが信仰するのは唯一あのお方のみです」
「どうでもいいや…」
なんか嫌な予感がしたので、無視することにする。
神なんて基本どいつもこいつも碌でもない者である。
宿に着くと、獣人たちは飯を食って、俺は寝床にはいる。
食べなくていい俺は、うまくもない飯を喰う意味もない。
今日は普通の一人用のベットなので、安心して眠る。
無駄に遠回りさせやがって…まあもうすぐ俺の願いが叶う。なら俺はどうするのか…
正直言うと…さっさと安らかに眠りたいところだが…
朝起きて、さっさと支度する。
俺の一人用ベットにぎゅうぎゅうに詰まった獣人に頭を抱えたが…
暑苦しいんだよ…流石にベットから叩きだした。
少し大きめの馬車に乗り込み、出発する。御者もあのマオシン卿の手配した者だ。
マオの町に着くまで止まることなく行くらしいので、御者席に二人乗っている。
馬を酷使するなよ…そう言うと、長距離を走る種類の馬なんだそうだ。その代わり最高速は遅いんだとか。
馬車の中は暇だ…ミーコとシユに魔法を教えながら、馬車は進む。
2日ほどでとうとう、マオの町に到着した。
なんというか…大きな町だった。首都ほどではないが…その次に大きいんじゃないのか?
活気もあり、人でごった返している。
馬車を降り、町長のマオの住む屋敷に向かう。
屋敷?これは城って言うんだぞ…?少なくとも町長が住む家ではない。
そこには…でっかい城があった…中心に4階建ての石壁づくりの塔があり、その周りを、3階建ての建物が囲っている。中心の塔とは2階部分までは繋がってるようで…うん…どこの王族の城だよ…でも魔女王だから…あながち合ってるのか?
これを屋敷という魔女王に若干引いてると…
庭の大きな鉄扉が開き、おんなじ顔をしたメイドを、横に立たせた魔女王が黒を基調にした、美しいドレスを身に纏って現れる。
「ようこそ!!お兄さん!私の屋敷に!」
とそう笑顔で言った。
俺は若干引き攣った顔で
「あ‥はい」
というのが精いっぱいだった…
いつもお読みいただき有難うございます。




