人の心を掴む魔法
「すごい…これはやばいな…」
少し興奮してしまう。そりゃそうだろ…魔法だぞ?初めてファンタジー感を感じる。
生活の中に魔法があふれているのだ。日常的に魔法が使われているなんて…素晴らしいな!!
「シンの目が今迄にないくらい輝いてる…」
「シンが…楽しそうで…なにより…」
俺の隣にいるシユとミーコもすごーい!と楽しそうにしている。
ココは少し席をはずします、とどこかに行った。
「なあおっちゃん。俺でも魔法使えんのか?」
水魔法?で馬車を洗ってたおっちゃんに聞く。
「魔力があれば人種族でも使えるが…ん~?お兄さんの魔力が見えねえ…ちっさすぎるのか?そこの獣人の嬢ちゃんよりもないぞ?」
「は?まじで?というか人の魔力とか見えるもんなのか?」
「魔人種族は人の魔力を見る力を持って生まれるんだよ…常識だぞ?んで…獣人ですら魔法はほぼ使えない…なら兄ちゃんは…その…すまんな…」
「いや…いいよ…魔力もない雑魚が話しかけてすまなかった…」
えぇ~俺の体はホント…元の世界のままだよな…死なないだけの普通の体。魔力もない。力もない。
「先生には先生だけの魔法があるじゃないですか!落ち込まないでください!」
「そうだよ!楽しくなる魔法のほうがすごいと思うよ!」
死にそうな顔をしている俺を励ますミーコとシユ。
「ミーコ…シユ…俺の魔法でこの国を蹂躙する。いくぞ!」
「「はい!!」」
俺は種も仕掛けもある魔法で、この国を殺すために準備を開始する。
「お待たせしました~ってシンとミーコとシユは?」
しばらくしてココが帰ってくる。
「あの人ごみの中心」
と指をさすサーニャ
そこには木でできた簡易なステージで、シンとミーコとシユが楽しそうに何かしていた。
「ではこの大きな箱に…この可愛い獣人の少女に入ってもらいます」
ミーコが箱の中に入っていく。
「ではそこのお嬢さん。この箱にしっかりと鍵をかけていただけますか?もう出られないようにね?」
鍵を渡されて箱に恐る恐るカギをかける魔人種族の女性。
「これはこれは…外れませんね~ではこれに一度布をかけまして~?」
シユが箱に布をかける。
「ん‥はい。私の魔法で中には誰もいなくなりました。布を取っていいよ。ん?早く開けろって?そんな生ぬるい事は致しません」
シンが大ぶりな剣を出す。そしておもむろに箱に剣を刺す。刺す。刺す。
悲鳴が上がる。10数本差したところで止める。
シンがミーコを殺す事はあり得ないので、傍観しているココ、リリア、サーニャ。
「とどめに燃やしちゃいますか」
箱がボウッっと勢いよく燃える。ひどい…なんて残酷な…と声が上がる。
火が消え、黒く燻った箱が残る。
「しかし~この魔法の布をかけると」
布が箱を隠したと思った瞬間箱が消える。
どよめく観客。
「…ん?中の少女ですか?いやだな~そこにいるじゃありませんか?」
と指さす観客の中にミーコがいた。
おいで、とシンがミーコを呼ぶ。
呆然とする観客
「脱出成功です!協力してくれたこの少女に盛大な拍手を!!」
シンは仰々しくお辞儀をする。
ワアアアアァァァァと湧く観衆。
ステージ上の3人は笑顔でハイタッチして…ステージを降りて行った。
「何やってるんですか…うらやましい…」
ココはそう呟いた。
「大掛かりなのは初めてやるが、割と楽しいもんだな」
ベンチで座って背もたれに体を預けて言う。
「みんなが私たちの思惑通りに動いて、驚いてもらうってのは存外楽しいものですね」
「楽しくなる魔法すごいね!」
と3人で感想を言い合う。
「ズルイです…」むぅ…とふくれるココ
定番の箱の底が開いてて、ステージ裏から脱出。隠密能力に長けたミーコが観衆に紛れる。
観衆の目線をくぎ付けにするために、派手に箱を壊す。簡単な手品だ。箱を消したのはただ下に落としただけだ。
「まあそれより…ココ。こっからどうすんだ?」
さっきどっかいってたの下準備だろ?
「はい。ミカヅキ卿は予想より早く戻ってくるみたいですね。今日はここで宿を取り、明日待ち伏せする街道に向かいます」
「了解。ココの仰せのままに」
ココがとってある宿に向かい、明日の打ち合わせをする。とはいえ三日月がそこを通るのは2日後。明日は街道で野営だ。
俺は先にベットに入って寝ようとする。すると
「シン…この作戦が成功して、シンが死を取り戻せたら…私たちに何か報酬をくれませんか?」
そうココが提案してくる。
「俺の命以外なら好きにしていいぞ?」
「では…私たちをお傍に置いていただけませんか?」
「んー…?今すでに傍に置いてるわけだが…一生と言うならやめとけ、自分でいうのもなんだが、俺は碌でもない人間だ。元の世界の人、すべてに嫌われていたほどにな」
「シンの世界の人は見る目がない」とサーニャ
「俺は俺の嫌いなところをスラスラ100個は言えるぞ?ダメ人間に付いて来ても、お前らの人生がもったいない」
「私は先生のいいところ、1000個はスラスラ言えるよ?」とミーコ
「ぐっ…あのなぁ…お前らはまだ若いんだから…視野を広くだな…」
「私にとって…シン以上は…この世界に…いないわ…ね」とリリア
「んー…あっ!そうだよ三日月がいるじゃねえか!一回あいつを見てから決めようぜ。俺よりもいい男のはずだし」
「私を救ったのはお兄ちゃんだよ?」とシユ
こいつら…外堀を埋める作戦に出てるな……
「シン…どうかお願いです…シンの望むものをすべて用意します。だから…だから…どうか‥」
見捨てないで…と消え入りそうな声で呟き、涙をこぼす。
ズルイ奴だな…突き放すのは簡単だ…背負う覚悟は俺にとってはとても難しい…
だが…
「ほんと…どうせこれもお前の計画通りなんだろ?負けたよ…俺の人生は好きにするといい。だが…お前らの思った通りに、動くばっかじゃないから覚悟しろ。そして俺の人生をやるんだ…もちろんお前らの人生も俺の物だ…はぁ…これでいいんだろ?」
だから泣き止めよとココを胸に抱いてやる。
「はい…ありがとう…ございますっ!」
よしよしと頭を撫でると。ココを手放し、俺はベットに入る。
「んじゃあお休み」
「「「「「えぇ!?」」」」」
そのまま俺は意識を落とす。明日になったら忘れてるかもな。
俺たちは2日後の街道にて三日月翼を待ち伏せする。気分はさながら盗賊だ。
「まもなくです。シン…そろそろ…」
ココが俺に行くよう促す
「おう。予定通りにな。あいつをぶん殴ってくる」
そして俺は街道に鉄の壁を作り、馬車を通れないようにする。
しばらくすると、長いスカートのメイド服を着た女性が御者をする馬車が見えてくる。
「メイド服はなかなか趣味がいいが…メイドに御者させるのは減点だな」
御者は雇えよ。ケチなのか?
そして馬車が止まり、中にいた男一人と、女性4人が警戒しだす。
俺はなるべく下っ端の盗賊っぽく、登場する。
「ひゃっは~、上玉の女が5人もいるじゃねえか~、すべておいていくなら命だけは取らねえぞ?」
曲刀をもち、全身ボロボロの盗賊風の衣装を着て、俺は姿を現す。
少し怪訝な顔をしていたが…
「貴方が、御門さん…死ぬために旅をしているという一人目さんですか?なぜそんな定番な盗賊を…」
見通す目ってのはホントのようだな。しかし御門の名は愛馬にやった。俺はただのシンだ。
「見通す目を持ってるってのは、本当のようだな」
曲刀を消し、近づく。するとメイドが三日月の前に立ち、俺との間を遮る。
「お前ら。俺の邪魔をする奴をどけろ」
そういうと4人が俺の前に現れる。サーニャ以外だ。
「戦うのですか?僕は容赦しませんよ?」
そう言って剣を抜く三日月。
「おれは弱い一般人を巻き込むのは嫌なんだよ。用があるのはお前だよミカヅキ卿」
俺はとっても悪い笑顔で、行ってみたかったセリフを言う。
「ちょっとツラァ貸せや?ぼこぼこにしてやるからよぉ」
元の世界の三下のセリフを…
いつもお読みいただき有難うございます。




