私の中の獣
サーニャ視点です。
小さいころから私の髪には白い毛が混じってる。これは私の中の獣の毛だ。私たち狼族で稀に生まれるらしい。そして…いつか獣は私の体を奪い、森に帰る。理性などない、人を捨て…魔物を蹂躙する…王として…
獣になったとき、私は周りの人を傷つけ…殺すかもしれない。そうならない為にも、私の一族は定住せず、放浪し生活する。この獣は…私の一族ではとても崇められている…だから私は少し自分が誇らしかった…
しかし…この獣は…私の家族は守ってくれなかった…何が神獣だ…私はこの獣が嫌いになった…
そしてとうとう…その時が来た…最近…獣を抑えられなくなってきて…特にご主人様に力を流された時…私の獣が確かに反応した。
私が私じゃなくなる前に…その前に…ココに会いたかった…
でももう終わってしまった……
(憎い憎い目の前の人族が憎い憎いココヲ憎い憎い憎いカエセ憎い憎い憎い殺せ殺せ殺せ殺せ)
ココと共にいるはずの彼が、違う獣人をおぶって歩いてる。なんで?どうして?そんな私の困惑と怒りがトリガーになったのか…私の中は殺意と憎悪で埋め尽くされ…
私は獣になった。ただ目の前の敵を殺し喰らうだけの存在として。
そこからサーニャである私の意識は薄れる…
ふとワタシの頭を温かいものが撫デル。ナンダ?とても心地いい気がすル…でも殺さなキャ、タべないと…
ワタシは目の前にイル獲物を、敵トシテ認識。全力を持って排除すル。切リ裂き、削り、喰い殺ス。
ふと嫌なニオイを感じタ。上空に飛ぶ。大爆発が起キル。
そして上からナニカが降ってキテ…
私はそこで意識が戻る。体は動かないけど…私の中の獣は、彼に服従したようだ…
背中を優しく撫でてくれる手が好きだ、お腹を撫でてくれる…とても気持ちがいい。
私と獣で、彼を好きになってしまったのか。だったら…獣のままでも…
しかし私はサーニャに戻った。私の中の獣はとても寂しそうにしていた…
彼の許可を取れたら、たまに変わってあげてもいい。
この獣も私の一部だから。
そして私は彼女と再会する…やっと…会えた…そう彼女の胸で泣いてしまった。
「では第一回シンを誘惑する会議、始めます」
シンが寝た後リビングでココが皆の前で言う。
「うふふ…楽し…そう」
「まずは情報の共有です。サーニャの合流が私の予定より、かなり早かったのは予測できませんでしたが…まあ問題はありません。今後まだ増えていく可能性もあります。まずはシンについて知っておきましょう」
「ココ?これは一体?」
彼を独占したい、とは思わないけど…この場にいる全員がシンの事が好きなの?
「サーニャはシンに惹かれてないのですか?別に強制するものでもありません。参加は自由です」
もちろん惹かれてはいるが…
「シンは動物は好きです。ミーとカンジの扱いを見れば一目瞭然です。ならば私たちも好きになってもらえる可能性はあると思います」
私が獣だったとき、彼は気持ちよさそうに私を撫でてた…
「はい!お兄ちゃんは子供と遊ぶのも好きです!とても楽しそうにしてました!」と手を上げてシンの情報を語る犬族の子
「私の所でも、先生は楽しそうに遊んでました。それはもう…惚れ惚れしてしまうほどの笑顔で…」
彼が不意に、楽しそうにする笑顔にはつい胸が高鳴ってしまう。
「むぅ…しかしそれは、シンがこの先、生きていく意味に、繋がるかもしれませんね。覚えておきましょう。ほかには?」
「シンは…一度寝ると…起きない…ね…まるで死んだように…夜這いかけたけど…まったく反応がなかった…わ」
「なんせ…魔物に殺されながらも寝るほどです…しかし…リリアでも反応がないとなると…」
顎に手を当て考えるココ。夜這い?まるで当たり前のように言ってるけど…
「サーニャのご主人様のように、シンは簡単に落とせないです。彼は好意を抱いてくれてるから、こちらもそれに応えてあげよう、なんて思いません。好意を抱いてくれてるんだ、ふーん?だから?という人です」
戸惑う私にココが説明してくれる。ツバサのことをなぜココが知っているのかも気になるが…
「私たちが何もしなければ、シンはいつの間にか、私たちの前から消えるでしょう。だからシンを射止めないといけません。これは戦いなのです!」
いなくなるのは悲しい…考えると思った以上に悲しくて…
「私も協力する」
「ありがとうございます。まずはシンが寝ている間に…」
そうして2時間ほど会議は続いた。
ココからシンについていろいろ聞いた。ツバサについても少し話した。
「そっか。死ぬ旅…」
「はい…私も最初は嫌だ。止めたいって思いましたが…」
「でもシンは、それを乗り越えないと、私たちに向いてくれない」
「そうです…なので彼の願いを叶える。できればその前に…シンを…射止めないと彼が去っていく気がして…」
俯いて体が少し震える彼女。一番彼のことをわかってるからだろうか…
ココがそういうなら、彼はそういう人なのだろう。
「厄介な人を、好きになっちゃったね」
と私は苦笑いでココを抱きしめる。
「そうですね…でも私は彼を追いかけるって決めたので…諦める気はありませんよ?」
「私も頑張る」
しかしその夜は、シンを誘惑するどころか、シンの匂いに酔っちゃって………
そこからは魔人国に向けて、空の旅だ…初めて乗ったけどなんだろう…この浮遊感と揺れが気持ち悪い…シユも同じようだったようで…私たちは早々にリタイヤして、ベットに潜り込んだ…
たまにシンが撫でに来てくれて…ちょっとは気持ち悪いのが、和らいだ気がした。
そして魔人種族の国の首都。デモニアに到着する。
いつもお読みいただき有難うございます。




