空の旅
「なんで朝起きるとこうなってんだ…?こいつらはいったい俺に何をしてるんだ…?」
朝起きると裸で散らばってる獣人たち。俺も上半身だけ裸にされている。
とりあえず今日は日課のシャドウトレーニングをする。昨日買い出しした分で簡単に作れる朝食は考えてある。
「そう言えば近くの厩舎にミーとカンジがいるって言ってたな…」
少し早めに切り上げ、ミーとカンジに会いに行くことにした。今日からまた一緒に旅に出るからだ。
厩舎に行くと、ミーとカンジがいた。しかし…
「これは……そうか…頑張れよ…」
ミーとカンジを撫でてやり、厩舎の管理してる獣人と少し会話してから、厩舎を後にして、家に戻ることにした。
家に帰りさっと朝食を作って、全員で飯を食う。
「ミーとカンジは連れてかない」
首筋にリリアが噛みついてるが無視して、今回の計画の初っ端からへし折る。
「え?どうしてです?ミーとカンジがダメならほかの馬を?」
ココが動揺している
「俺はほかに馬を買う気も、借りる気もない。ミーとカンジがダメなら馬車は無しだ」
「なんでミーとカンジは連れて行かないんです?怪我でもしていましたか?」
「ミーが妊娠してる」
「は?…ホントに?」
「顔を見ればわかったが…厩舎の獣人に確認してもらった。間違いない。だから連れてかない」
慈愛に満ちた表情をしていた。あれはそういう事だろうと。
「何でシンは動物なら、そこまで心を通わせれるんでしょうか…理由は理解しました。ではどうします?魔人国はやめときますか?」
「それは行くぞ。飛空艇のある場所まで、空の旅だ。首都から出たらそこから飛んでいく」
「シンがそう言うなら…」
昼までに準備を済ませ、家を出て首都の東に向かう。
首都を出ると森に入る。ある程度入ったところで、
「そう言えば武器作ってなかったな…何がいいんだ?」
「私は…武器はいらない…邪魔になる…だけ」
「私は以前、シンに頂いた剣が…」
「先生!私もお姉ちゃんと一緒!」
「短めのタガーが2本」
「私もサーニャと一緒です!あと投げナイフなどあればいいですかね…」
今全員が持ってる武器をベースに造っとくかな…
「んじゃあ今持ってる装備を俺に渡せ。んで…この周辺範囲50メートルほどの木を切ってくれ、邪魔だ」
大き目の斧を渡しておく。
全員が木を切ってる間に、武器を造り直す。
集落にあるという武器を消しておいて…ココは前と同じでいいな…片手剣をベースに創造する。
ミーコも自分で削ったのだろうか?ちょっと短めの片手剣をベースに、前と同じに。ミーコはもう一つ糸を武器にしているようで…魔物の糸を強度の高いピアノ線にしておく。
シユとサーニャのタガーはちょっと長めの黒いコンバットナイフ。投げナイフはそのまま強度をいじって、ミーコのピアノ線をくっつけて回収しやすくしておく。
リリアはいらないそうなのでわざわざ作らなくていい。
一通り武器をいじってると、辺り一面木が無くなっていたので、具現化を開始する。
「風の向きはどうだろ?」
空に向けて大量のタンポポの種のようなものを飛ばす。
「上空の方は割と安定して東に向かってるな。大体近くに降りれればいいか…」
「「「「「きれい…」」」」」
「呆けてる場合じゃないぞ~準備できた奴からこの籠に乗れ」
周りで切った木を使って作った大き目の籠だ。
気球、原理はとても簡単だし俺でもわかる。あとは風をしっかり読んで、進むだけだ。
全員乗り込んだとこで、ガスに火をつけ、気球を膨らませていく。そして…
「よし…重りを消して…安定するまで捕まってろよー?」
空に浮かび上がる。ガスは俺が生成できるので、まっすぐ飛空艇のある町まで向かう。
「飛んだ!!すごい!!」
とミーコは楽しそうにしているが…
「はしゃぐなよー落ちても助けられんぞ」
「この浮遊感…こわい…」
「怖いですお兄ちゃん…」
足にしがみついてるシユとサーニャ。
「ココとミーコは操縦を覚えてもらうぞ?」
「「はい!!」」
と目を輝かせる二人。
「もう地面が…あんなに遠くに…ふふ」
空の風が気持ちいいのか、ご機嫌なリリア。
俺はたまに風の向きと強さを図るため。気球の周りにタンポポの種のようなものを撒く。
そしてそれを見て、風の向き、強さを分析して気球を操作する二人。
割といい風に乗れたのか、翌日の朝には…飛空艇の停留所ぴったりに到着した。
風任せに飛ぶ気球で、着地場所がドンピシャってありえないからな?街はずれでいいって言ったのに…
朝早かったためか、誰もいなかったので即座に気球を消し、籠を木材に造り替えて、その場を後にする。
「流石に眠いな…徹夜とか…ミーとカンジの為なら仕方ないが…飛空艇はいつ出発だ?」
「馬車だと2日かかる予定でしたので…明日のお昼になりますね」
俺がやりすぎだ、と怒ったので、ションボリしてるココが言う。
こいつは夢中になると、完璧にこだわりすぎる…もっと適当でいいのに…
「んじゃあ俺は、明日の朝まで寝るから…飯は適当に食っといてくれ…お金は全部任せる」
銀貨1枚だけ抜き取り、あとは全部ココに渡す。
ココたちと別れ、適当な宿に入り、一部屋頼むと…
「ご予約のシン様と奥様方ですね。2階にご用意しております。ごゆっくり…」
「予約?…人違いじゃ?」
「いえ…?…間違いありません」
「そ‥そうか…ちなみにこの町ってここしか宿がないのか?」
「いえ?10数件ほどあると思いますが?」
「…すまん…変な事を聞いて…休ませてもらうよ」
いつ予約したんだ?俺の考えはすべてお見通し?でも気球は初めて見たはずだ…なぜ?
まあ…あまり考えない様にしよう…とにかく眠い…なんかまたベットがでかい気もするが…それすら…どうでも…
夜中に一度、意識が覚醒する。
(生活リズムが1日狂うと取り戻すのに10日くらいかかるからなぁ…)
すぐ寝たいが…一度意識が覚醒すると眠れない。
完全に意識が覚醒して気付く、自分の体を這うように動く何かに…
(なんだ?ホラーは苦手だって……まあアンデットがいるくらいだ…レイスがいてもおかしくないのか?)
恐る恐る目を開ける。すると…裸の獣人たちが俺の体を舐め回していた。時折、首や頭を俺にこすりつけながら。
俺の頬をなめてた、サーニャと目が合う。
「……なにやってんの?」
「……気のせい」
なわけないよね?まあ好きにさせるつもりだし‥
「なんだ…夢か…」と目を閉じる。
そしてまた顔をなめられたり、唇をなめられたりする。
そう言えば発情期の猫とかこういう感じだよな…犬や猫になめられてると思えば…普通か…
「シンがしたいと思わない限り、私たちは一線を越えない、でも…これくらいは許して」
そんなことを耳元でボソッと呟くサーニャ。
しばらくペロペロと舐められる感触を感じながら。おとなしくすることにした。
次の日の昼前に、全員で準備を終え、飛空艇に向かう。
「おぉ…この船が飛ぶのか…まさにファンタジーだな…」
木で造られた、大きな帆船だった。マストが三本あり、両舷には20ほどの砲門がある。
「シン。行きますよ?」
ココに手を引かれて、飛空艇に乗り込む。
どうやってこれが飛ぶんだ…?
俺たちだけ乗り込むとすぐ発進する。大量の水が道を作り、船がその道を通っていく。
「おぉ…風魔法とかで飛ぶんじゃないんだ…」
上空まで出ると、空に大海原のようなものができ、帆を張り、船が進んでいく。
初めて見る魔法にちょっと感動してしまう。
「シン…楽しそう…ね」とリリアが俺の隣にくる。
「これは壮観だな…そういえば俺たち以外乗客はいないのか?」
「ココお姉ちゃんが誘導…じゃなくて運が良くて、私たちだけみたいですね!」
そんな偶然あってたまるか…
「うぅ…シン…撫でて…」
「お兄ちゃん…私も…」
この犬コンビはホント空が苦手だな…
俺の前にすわらせて、背中を撫でてやる。
ありがとう…ちょっと横になってくる…と二人はフラフラと歩いて行った。
シユとサーニャが寝込んでる以外は順調に船は進んでいた。
俺はその間色々暇つぶしに遊んだり、実験したりしていた。
夜になり真っ暗な空を見てふと思いつく。
「シン。これはなんですか?」
四角い紙を乗せた皿を見てココが聞いてくる。
「特に意味はないんだが…この皿の上のひもに火をつけて…海に流すのさ」
具現化で作ってあるので後々ちゃんと消せる。
「見てろよー?」
数百の灯篭を、魔法で作られた海に具現化し、眺める。
「「「すごい…」」」
「綺麗だよなー空に漂う灯篭…幻想的だ」
これはいい絵になるな~
「灯篭流しって言ってな死者の魂を弔って流すんだよ。この一つ一つがまるで人の魂のように見立ててな」
俺の元の世界での死を弔って…この世界で生きる…なんてそんな殊勝な態度…俺じゃないみたいだな…
「シンの今までの死でも弔ってるんですか?」
「いや…まあそういうことにしておくか…」せっかくだしな…
しばらく灯篭を出したり消したりして眺めていると…
すごいスピードで空を飛んでくる小さいドラゴンが、突如海を割って現れる。
ざばぁーん!
「なっ!?敵か?」と身構える。
するといつの間にか目の前に、黒髪の女の子がいた。
「え?」
音もなく、いつの間にか目の前に現れ…
ポスッ!と腰に抱き着かれる。
「魔法使いのお兄さん!!うっ…うわあああぁぁぁぁん」
と突如泣き出す…
流石に獣人三人も冷や汗をかき見ていた。反応できないとかではなく、突然現れたのだ。
一人なら何とかなる?彼女相手にそれは無理だった…
俺は困惑するが…とりあえず頭を撫でて慰めてやる。
「よくわからないけど…おちつけー?よしよし…」
すると小さなドラゴンは船に降り、彼女の横について、俺を威嚇している…
状況がわからんっ!!
少ししたら落ち着いて、彼女は少しだけ話す。
「あんまり離れると、帰るのが大変だから…今日はもう帰ります…」
「あ…はい」
「お兄さん。魔人国に行くなら絶対!私の町に来て、今はあんまり話せないけど…マオの町ってところだから…顔を見て確認できただけで…今日は満足です!じゃあ!絶対来てね!」
そう笑顔で言うと、彼女はまたドラゴンに乗り帰って行った。
「なんだったんだ…」
「シン…たぶん彼女が…魔女王…マオです」
「なるほどな…そう言われれば…」
うっすらと思い出すあの子の面影があった気がした…なんでこの世界に?
いつもお読みいただき有難うございます。




