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私の世界にようこそ  作者: てけと
第三幕『イレギュラーは死を手に入れる』
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空の旅

「なんで朝起きるとこうなってんだ…?こいつらはいったい俺に何をしてるんだ…?」


 朝起きると裸で散らばってる獣人たち。俺も上半身だけ裸にされている。


 とりあえず今日は日課のシャドウトレーニングをする。昨日買い出しした分で簡単に作れる朝食は考えてある。


「そう言えば近くの厩舎にミーとカンジがいるって言ってたな…」


 少し早めに切り上げ、ミーとカンジに会いに行くことにした。今日からまた一緒に旅に出るからだ。


 

 厩舎に行くと、ミーとカンジがいた。しかし…


「これは……そうか…頑張れよ…」


 ミーとカンジを撫でてやり、厩舎の管理してる獣人と少し会話してから、厩舎を後にして、家に戻ることにした。





 家に帰りさっと朝食を作って、全員で飯を食う。


「ミーとカンジは連れてかない」


 首筋にリリアが噛みついてるが無視して、今回の計画の初っ端からへし折る。


「え?どうしてです?ミーとカンジがダメならほかの馬を?」


 ココが動揺している


「俺はほかに馬を買う気も、借りる気もない。ミーとカンジがダメなら馬車は無しだ」

「なんでミーとカンジは連れて行かないんです?怪我でもしていましたか?」

「ミーが妊娠してる」

「は?…ホントに?」

「顔を見ればわかったが…厩舎の獣人に確認してもらった。間違いない。だから連れてかない」


 慈愛に満ちた表情をしていた。あれはそういう事だろうと。


「何でシンは動物なら、そこまで心を通わせれるんでしょうか…理由は理解しました。ではどうします?魔人国はやめときますか?」

「それは行くぞ。飛空艇のある場所まで、空の旅だ。首都から出たらそこから飛んでいく」

「シンがそう言うなら…」


 昼までに準備を済ませ、家を出て首都の東に向かう。

 首都を出ると森に入る。ある程度入ったところで、


「そう言えば武器作ってなかったな…何がいいんだ?」

「私は…武器はいらない…邪魔になる…だけ」

「私は以前、シンに頂いた剣が…」

「先生!私もお姉ちゃんと一緒!」

「短めのタガーが2本」

「私もサーニャと一緒です!あと投げナイフなどあればいいですかね…」


 今全員が持ってる武器をベースに造っとくかな…


「んじゃあ今持ってる装備を俺に渡せ。んで…この周辺範囲50メートルほどの木を切ってくれ、邪魔だ」

 大き目の斧を渡しておく。


 全員が木を切ってる間に、武器を造り直す。

 集落にあるという武器を消しておいて…ココは前と同じでいいな…片手剣をベースに創造する。

 ミーコも自分で削ったのだろうか?ちょっと短めの片手剣をベースに、前と同じに。ミーコはもう一つ糸を武器にしているようで…魔物の糸を強度の高いピアノ線にしておく。

 シユとサーニャのタガーはちょっと長めの黒いコンバットナイフ。投げナイフはそのまま強度をいじって、ミーコのピアノ線をくっつけて回収しやすくしておく。

 リリアはいらないそうなのでわざわざ作らなくていい。


 一通り武器をいじってると、辺り一面木が無くなっていたので、具現化を開始する。


「風の向きはどうだろ?」


 空に向けて大量のタンポポの種のようなものを飛ばす。


「上空の方は割と安定して東に向かってるな。大体近くに降りれればいいか…」

 

「「「「「きれい…」」」」」


「呆けてる場合じゃないぞ~準備できた奴からこの籠に乗れ」


 周りで切った木を使って作った大き目の籠だ。

 気球、原理はとても簡単だし俺でもわかる。あとは風をしっかり読んで、進むだけだ。


 全員乗り込んだとこで、ガスに火をつけ、気球を膨らませていく。そして…


「よし…重りを消して…安定するまで捕まってろよー?」


 空に浮かび上がる。ガスは俺が生成できるので、まっすぐ飛空艇のある町まで向かう。


「飛んだ!!すごい!!」


 とミーコは楽しそうにしているが… 


「はしゃぐなよー落ちても助けられんぞ」

「この浮遊感…こわい…」

「怖いですお兄ちゃん…」


 足にしがみついてるシユとサーニャ。


「ココとミーコは操縦を覚えてもらうぞ?」

「「はい!!」」


 と目を輝かせる二人。


「もう地面が…あんなに遠くに…ふふ」

 

 空の風が気持ちいいのか、ご機嫌なリリア。


 俺はたまに風の向きと強さを図るため。気球の周りにタンポポの種のようなものを撒く。

 そしてそれを見て、風の向き、強さを分析して気球を操作する二人。

 割といい風に乗れたのか、翌日の朝には…飛空艇の停留所ぴったりに到着した。


 風任せに飛ぶ気球で、着地場所がドンピシャってありえないからな?街はずれでいいって言ったのに…







 朝早かったためか、誰もいなかったので即座に気球を消し、籠を木材に造り替えて、その場を後にする。


「流石に眠いな…徹夜とか…ミーとカンジの為なら仕方ないが…飛空艇はいつ出発だ?」

「馬車だと2日かかる予定でしたので…明日のお昼になりますね」


 俺がやりすぎだ、と怒ったので、ションボリしてるココが言う。

 こいつは夢中になると、完璧にこだわりすぎる…もっと適当でいいのに…


「んじゃあ俺は、明日の朝まで寝るから…飯は適当に食っといてくれ…お金は全部任せる」


 銀貨1枚だけ抜き取り、あとは全部ココに渡す。


 ココたちと別れ、適当な宿に入り、一部屋頼むと…


「ご予約のシン様と奥様方ですね。2階にご用意しております。ごゆっくり…」

「予約?…人違いじゃ?」

「いえ…?…間違いありません」

「そ‥そうか…ちなみにこの町ってここしか宿がないのか?」

「いえ?10数件ほどあると思いますが?」

「…すまん…変な事を聞いて…休ませてもらうよ」


 いつ予約したんだ?俺の考えはすべてお見通し?でも気球は初めて見たはずだ…なぜ?

 まあ…あまり考えない様にしよう…とにかく眠い…なんかまたベットがでかい気もするが…それすら…どうでも…


 



 夜中に一度、意識が覚醒する。

(生活リズムが1日狂うと取り戻すのに10日くらいかかるからなぁ…)


 すぐ寝たいが…一度意識が覚醒すると眠れない。

 完全に意識が覚醒して気付く、自分の体を這うように動く何かに…

(なんだ?ホラーは苦手だって……まあアンデットがいるくらいだ…レイスがいてもおかしくないのか?)


 恐る恐る目を開ける。すると…裸の獣人たちが俺の体を舐め回していた。時折、首や頭を俺にこすりつけながら。

 俺の頬をなめてた、サーニャと目が合う。


「……なにやってんの?」

「……気のせい」


 なわけないよね?まあ好きにさせるつもりだし‥


「なんだ…夢か…」と目を閉じる。


 そしてまた顔をなめられたり、唇をなめられたりする。

 そう言えば発情期の猫とかこういう感じだよな…犬や猫になめられてると思えば…普通か…


「シンがしたいと思わない限り、私たちは一線を越えない、でも…これくらいは許して」


 そんなことを耳元でボソッと呟くサーニャ。

 しばらくペロペロと舐められる感触を感じながら。おとなしくすることにした。






 次の日の昼前に、全員で準備を終え、飛空艇に向かう。


「おぉ…この船が飛ぶのか…まさにファンタジーだな…」


 木で造られた、大きな帆船だった。マストが三本あり、両舷には20ほどの砲門がある。


「シン。行きますよ?」


 ココに手を引かれて、飛空艇に乗り込む。

 どうやってこれが飛ぶんだ…?


 俺たちだけ乗り込むとすぐ発進する。大量の水が道を作り、船がその道を通っていく。


「おぉ…風魔法とかで飛ぶんじゃないんだ…」


 上空まで出ると、空に大海原のようなものができ、帆を張り、船が進んでいく。

 初めて見る魔法にちょっと感動してしまう。


「シン…楽しそう…ね」とリリアが俺の隣にくる。

「これは壮観だな…そういえば俺たち以外乗客はいないのか?」

「ココお姉ちゃんが誘導…じゃなくて運が良くて、私たちだけみたいですね!」


 そんな偶然あってたまるか…


「うぅ…シン…撫でて…」

「お兄ちゃん…私も…」


 この犬コンビはホント空が苦手だな…

 俺の前にすわらせて、背中を撫でてやる。

 ありがとう…ちょっと横になってくる…と二人はフラフラと歩いて行った。



 シユとサーニャが寝込んでる以外は順調に船は進んでいた。

 俺はその間色々暇つぶしに遊んだり、実験したりしていた。


 夜になり真っ暗な空を見てふと思いつく。


「シン。これはなんですか?」


 四角い紙を乗せた皿を見てココが聞いてくる。


「特に意味はないんだが…この皿の上のひもに火をつけて…海に流すのさ」

 

 具現化で作ってあるので後々ちゃんと消せる。


「見てろよー?」


 数百の灯篭を、魔法で作られた海に具現化し、眺める。


「「「すごい…」」」

「綺麗だよなー空に漂う灯篭…幻想的だ」


 これはいい絵になるな~


「灯篭流しって言ってな死者の魂を弔って流すんだよ。この一つ一つがまるで人の魂のように見立ててな」


 俺の元の世界での死を弔って…この世界で生きる…なんてそんな殊勝な態度…俺じゃないみたいだな…


「シンの今までの死でも弔ってるんですか?」

「いや…まあそういうことにしておくか…」せっかくだしな…






 しばらく灯篭を出したり消したりして眺めていると…


 すごいスピードで空を飛んでくる小さいドラゴンが、突如海を割って現れる。


 ざばぁーん!


「なっ!?敵か?」と身構える。


 するといつの間にか目の前に、黒髪の女の子がいた。


「え?」


 音もなく、いつの間にか目の前に現れ…


 ポスッ!と腰に抱き着かれる。


「魔法使いのお兄さん!!うっ…うわあああぁぁぁぁん」


 と突如泣き出す…

 流石に獣人三人も冷や汗をかき見ていた。反応できないとかではなく、突然現れたのだ。

 一人なら何とかなる?彼女相手にそれは無理だった…


 俺は困惑するが…とりあえず頭を撫でて慰めてやる。


「よくわからないけど…おちつけー?よしよし…」 


 すると小さなドラゴンは船に降り、彼女の横について、俺を威嚇している…


 状況がわからんっ!!





 少ししたら落ち着いて、彼女は少しだけ話す。


「あんまり離れると、帰るのが大変だから…今日はもう帰ります…」

「あ…はい」

「お兄さん。魔人国に行くなら絶対!私の町に来て、今はあんまり話せないけど…マオの町ってところだから…顔を見て確認できただけで…今日は満足です!じゃあ!絶対来てね!」


 そう笑顔で言うと、彼女はまたドラゴンに乗り帰って行った。


「なんだったんだ…」

「シン…たぶん彼女が…魔女王…マオです」

「なるほどな…そう言われれば…」


 うっすらと思い出すあの子の面影があった気がした…なんでこの世界に?


いつもお読みいただき有難うございます。

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