生きたい理由
「とりあえず…俺にサーニャを嗾けたやつに、文句を言うことにする」
馬鹿だろ。こいつがどんだけ切羽詰まってたのか…俺が最初に会ったから良かったものの…
「ツバサはいい人。あんまり怒らないであげて?」
「サーニャ…お前わかってんのか?俺だったからよかったものの…あの力が暴走してたら、ココを殺すとこだったんだぞ?」
「うっ…」と苦い表情をする。
「獣化して泣いてたってことは薄々はわかってたんだろ?」
「…もうココには会えないなって…シンを殺したら…もう森に走るしか…」
そんな切羽詰まってる奴を離したらどうなるか…はぁ…
「気持ちはわかるが…もっと自分を大切にしろよ…いなくなったら泣く奴だっているんだろ?」
とサーニャの頭を撫でながら諭す。
「シンがそれを言いますか?」
「シン…にいわれたく…ないよ…ね」
「先生がそれいいます?」
「お兄ちゃん…それはないよね」
釈然としないが…ごまかすためにサーニャを撫でまわしておく…気持ちよさそうにしてるから大丈夫だろう…
「「「「サーニャだけズルイ!!」」」」
「あ‥後でな…今日は用事があったのを忘れてた…リリア昨日の素材を売った金と、渡してた金返してくれ」
「そういえば…返してなかった…ね」
皮袋ごと返してくれる。中を見ると金貨3枚ほどは入っていた。銀の身分証も受け取る。
「んじゃあちょっと行ってくる」
さっと家を出る。このまま逃げてもしてもいいかもしれない。要は同郷を訪ねれば、何とかなるみたいだしな。
想われるってのは重い…俺には背負えないくらいにな…
北の出入り口周辺の屋台に…いたいたあの辺だな。
「昨日の弁償代だ。銀貨50枚ほどでたりるか?」
品物を売ってる獣人の男に声を駆ける
「律儀だねぇ…ってか多いよ!銀貨5枚もあれば全部売れたことになって大助かりだ」
「んじゃあ迷惑料込みで10枚だ」
銀貨10枚置いて次に行く。
そうして屋台を全部回り終わって、昨日吹き飛ばした衛兵の所に行く。
「昨日吹き飛ばした人にあやまっといてくれないか…?これでうまいもんでも食ってくれってな」
銀貨20枚渡しお願いしておく。
「あぁ…言っておくよ」
さて…どのみち魔人国か…だったら…このまま北?北東方面かな?歩いてりゃいつか着くだろう。
そう思いそのまま北門を出ようとする。
「魔人国なら、この町から東に出たほうがいいですよ?」
「そうなのか…ありが…と…読まれてたのか…」
俺の後ろに装備を整えた5人が立っていた。
「ツバサの所に行くなら、ココに会えたよ、ありがとうって言いたい」
逃げ場はないってか…
「わかったよ…もう逃げないから…いったん夕食の食材を買って帰ろう。ココの案に全面的に賛成する」
全面降伏である。
「約束ですよ?」
「わかった。俺は約束は守る主義だ」
そう約束し、とりあえず市場で食材を買って帰る。米はなかった。
夕食を食べ終わり、シユが俺の膝の上に乗る、シユの頭を撫でてやりながら話を促す事にする。
「んで?ココの案としてはこの先どうするんだ?」
「はい。首都より東にある町へ向かいます」
「町?経由するとかじゃなくてそこが目的地か?」
「はい。そこが今回の目的地ですね」
ん?魔人種族の国に行くんじゃなかったのか?もう来るように手回しした?
「そこから飛空艇で、魔人国首都に向かいツバサ…今はツバサ・ミカヅキという貴族さんらしいですが…それを待ち伏せします」
「飛空艇あるんだな…しかし…三日月翼ね……」
それっぽい名前ではあるな。
「ミカヅキ卿は現在魔人国家にてとあるクエスト受けて、奥様方とデートした後、依頼の鉱山の方に向かうようです。その後報告にまた首都に戻り、その後魔女王の町に向かうでしょう。そこを待ち伏せます」
行動読みすぎだろ…
「三日月が魔女王の町に行くなら、魔女王と一緒にいるときに会ってもいいんじゃないか?」
手間が省けるしな…
「二人が敵対した場合、私たちはシン様を守り切れないでしょう。一人なら何とでもなりますが…ほぼ可能性はないとはいえ、ゼロではない。なので一人づつ会っていただきます」
一人なら何とかなるのかよ。自信過剰か?いや…ココにそれはないか…冷静な分析の結果だろう。
「で?俺は三日月に会ってどうすればいいんだ?」
「いいのですか?私の策に乗っても?」
「いいぞ。どうせ俺は当てもなく彷徨う予定だったし…ココに任せる」
「じゃあ成功報酬はシンの人生をもらいますね!」
「それは断る…」
ココの策を聞き、頭に入れておく。もう仕上げの段階だ。そんなに難しいことはなかった。
「俺は何したいんだろうな…」
風呂から上がり、ベットの上で寝間着姿のミーコを撫でながらポツリと言葉を零す。目標が達成されて、俺が死ねる体になったら…そんなことを考える。
「ん~?先生はやりたい事とかないのですか?」
撫でられて気持ちいいのか、目を細めながらミーコが聞いてくる。
「いざ問われると…難しいよな~ミーコはなんかあるのか?」
「先生と一緒にいることです!」
「じゃあもし、俺がこの先もミーコといるよ。て言ったら次にミーコがしたいことはなんだ?」
「先生にこうやって、ずっと優しく撫でられていたいです!」
そうか…こいつらは…本能で動いてるから…考えるまでもないのか…
「生きる…それだけじゃ…だめ?」
リリアがベットに入ってくる。
「そうだなぁ…何か目標とか、夢とか、生きがいがないと…俺は無理かもしれないな…」
何かしていないと落ち着かないんだよ…
「シンはめんどくさい」
サーニャが俺の横に座る。
「俺はめんどくさいぞ~?俺に付いて来るなら、そりゃぁもう、ぶん回されてひぃひぃ言うぞ?」
「楽しそう!!」
ベットに入ってた、シユが目を輝かせる。
この世界は生きるだけで必死な人が多い。俺が贅沢言ってる自覚はあるが…
「そんなのはこれから見つければいいですよ。シンのやりたいことを好きなように…シンはやっと自由になれるのです!」
ココが部屋に入ってそう言う…
「その為に私は、シンの前に立ち塞がる障害を、全て潰して見せましょう」
「おう。任せた」
それだけ言って俺はミーコを撫でるのやめ、布団に潜り込む。
「私の番を忘れてますよ?」
そう言ってココが俺に覆いかぶさる。
「そうだったな…」
俺の胸の上にある頭を右手で撫でてやる。左手に尻尾が置かれる。ふわふわな毛並みに撫でたくなるが…
「尻尾を撫でるとか…どこの変態だよ…」
人でいうと…尻を撫でるようなもんだろ……そんなのは痴漢……そもそも尻尾を撫でられて喜ぶ動物が…いるかよ…
そんなことを考えている間に…シンは眠りに落ちる。
いつもお読みいただき有難うございます。




