再会
サーニャと共に、首都に戻る。さっき壊してしまった商品を売っていた商人達がいた。
「すまん。今手持ちがないけど、明日必ず弁償するよ」
「いや…魔物から守ってくれたんだ。命に比べりゃ安いもんよ」
そう言ってくれるが、しっかり顔を覚え、明日来る事にする。
「あ‥しまった…リリア何処の宿取ったんだ…」
もう日が暮れて夜になっている…どっか道で寝るか?
「シン。あの子の匂いなら辿れる」
「おお‥助かる…あと俺を宿に送り届けたら、ココの所に行ってもいいぞ?」
匂いがたどれるならココの場所にも行けるだろう。
「ん。大丈夫。すぐ会える気がするから」
「そっか…すぐ?」
数分歩くと匂いがするという宿に到着する。
「割といい所…借りたんだ…よな…?」
宿というか…家である。普通のそこら辺に建ってる、レンガ造りの大き目の家だった。
二階建てで長方形の窓が所かしこについており、屋根は寄棟造りになっている。
「サーニャ?ここで合ってるのか?」
「ん。間違いない」
恐る恐るドアをノックする。
「リリア?シンだけど?いますか?」
丁寧語になってしまう。何で家借りてんだよ。緊張するだろ…
ばんっ!!とドアが開き、何かに抱き着かれる。
「シンッ!!!!!やっと会えました!!!!」
とココが全身で俺の腰のあたりに抱き着いてくる。
それを捕まえて引きはがし、サーニャに投げつける。
「お探しの品だ。受け取れ…」
「ココ!!!!やっと会えた!!」
「サーニャちゃん!?なんでここに!?」
俺はづかづかと家に入り、また抱き着かれる。
「お兄ちゃん!!やっと捕まえたよ!」
「先生!約束ですからね!!」
シユとミーコも…そういう事か…
「うふふ…シンは…やっぱり…愛されてる…ね?」
「もう色々諦めたからいいよ…」
眩しいまでに本能に忠実に生きる奴らだ…まったく…これはさすがに参った。
落ち着いたところで、リビングに集まり、椅子に座り話を聞く。
「色々疑問はあるが…答えてくれるのか?」
「もちろんです!」とサーニャの横に座るココが返事する。
「んじゃあ…この家は?」
「シンの為に買った私たちの愛の巣です!」
「は…はぁ…俺のやった武器はどうした?」
俺の具現化だけで作った武器はある程度場所がわかる。リリアとサーニャにつけてるのは、俺の髪と周りの草や木、魔物の毛皮をベースに作った物だ。俺が死んでも消えないように。これのある場所はわからない。
「感づかれると、シンが逃げていく可能性があったので…泣く泣く集落に置いてきました。それに…シンの力ありきではなく、私たちがちゃんと、自分たちの力だけで強くなるためです」
「頑張ったんだな…俺と別れてどんくらい経ってるんだ?」
時間の感覚は気にもしてなかったのでわからない。
「シンと別れて212日ですね。もうすぐ一年です」
「そんなに経ったのか…一年は何日だ?」
「300日ですね」
「ちゃんと俺を守れるほど強くなったのか?」
俺はお前らをちゃんと守れないぞ?
「もちろん!金の冒険者程度なら余裕で倒せるほどには」
「ならいいが…俺は死を探す旅をやめないぞ?それでもいいのか?」
「ふふふ…死ぬための旅じゃなく死を探す旅になってますね。もちろんシンが安らかに死ねるまで、共にありたいです」
「そうか…なら俺に言うことはない。好きにするといいさ…」
もう好きにさせておこう…俺がどうこう言うレベルは越えている。
「俺はもう寝る…いろいろ疲れた…明日また聞くことにする…」
「はい!では…」
寝室に案内してくれる。そこにはデカすぎるベットがあった。ほぼ一部屋がベットだけで占領されている。
しかし疲れた俺は、何にも考えずベットに倒れ込み…そのまま意識を落とした…
朝日が昇ると同時にいつも通り起きる。
「はぁ…でもまあ…そのくらいはもう許してやるか…」
俺の胸の上にココがうつ伏せで寝ており、右腕にシユが、左腕にミーコが丸まって寝ていて、その左右にサーニャとリリアが、全員裸で寝ていた。俺の服も剥ぎ取られていた。
「俺が何かするわけでもないしな…」
全員を起こさないようにベットから這い出て、風邪をひかないよう、毛布を掛けてやる。
日課のトレーニングをしたいところだが…今日は朝ごはんを作っておくか…
調理場には一通り食材はそろっていた。
「お?魚がある…朝はやっぱこれだよな…」
食材をちょっとづつ味見しながら、作るメニューと組み合わせを考えていく。
「米でもあればなぁ…この硬いパンは…クルトンでも作るか…魚は…包み焼かな‥香草は…サラダのドレッシングは…酢はこれか…マヨはめんどいしな…攪拌すんのが…いい香りのする油もあるしこれで…」
朝から獣人5人分、しかもよく食うのが二人もいる。朝早くから多めの朝食を作る作業に取り掛かる。
柔らかい白パンだけは買いに出かける。パンのいい香りがしたのですぐ見つかった。
作れないこともないが…発酵に時間がかかるから…今から仕込んだとして、できるのはお昼すぎたころだろう。そもそもイースト菌はあるのか?
俺が起きてから2時間後くらいに、いい匂いがしてきたからだろうか?全員起きて下に降りてきた。
「まず服を着てから降りてこい‥」
全員裸のままで姿を現す。裸族なのかこいつらは?
「ふぁい‥」と目をコシコシするココ達はそのまま2階に引き返していった。
全員がリビングにそろったところで朝ご飯を食べる。
パン、魚の香草ときのこの包み焼、牛乳っぽいなにかでつくったクルトン入りシチュー、肉を載せたサラダ、イタリアンドレッシング風を添えて。
焼き魚でもいいんだが…米がほしくなるから却下した。
「よく噛んで食べろよー。まだ下ごしらえしてる分があるから、おかわりはあるぞ。特にリリアとサーニャは腹いっぱい食っとけよ」
「くやしいけど、おいしい…魚お代わり」
「はいよ」作ってた分を渡してやる。
「シンの作る料理はやっぱりおいしいですね…あとで教えてください」
「いいぞ?これは俺の故郷の味だ」
「先生すごい!!料理もできるんだ!スープおかわり!」
「はいはい」とシチューをよそってやる。
「お兄ちゃんを追いかけて正解だったよ!お肉頂戴!」
「野菜も食えよ…」とサラダもいれる。
「シン…血を…」
「勝手に吸っていいが…ちゃんと飯も食え」
もうかれこれ一時間ほど飯に夢中になって食っている。約一名俺の首筋に噛みついているが…
食べ終わって後片付けをし、全員机の上に突っ伏してダラダラしている。
「普通にお店出せるレベルですよね…しかも高級な…」
「仕事で料理をする気はもうないな…」
「人種族の町で、おいしいもの食べたけど…それ以上」
「お褒めに預かり光栄だ」
「私たちの独り占めだね。ミーコ」
「そうだね!シユ」
「とても…美味しいけど…シンの血には…勝てない…ね」
「俺の血どんだけうまいんだよ…」
俺は今後の為に本題に入る
「んで…ココの事だ。俺が次に考えてることは予測してんだろ?」
「はい。シンならこの後、魔人種の国に行くのではないかと?」
お見通しかよ…
「正解だ。何か情報はあるのか?」
「そうですね…私たちは既にほぼ正解に近いところまで来ていると思います」
「というと?」
「シンが死ぬ方法はほぼ見つけてあるというか…まだ確信はしてませんが」
「聞かせてくれ」
「はい…シンは転生者とおっしゃいましたね?」
そんなこと言った気もするな…曖昧だが…
「あぁ…そうだな。それがどうした?」
「この世界にその転生者と思わしき人が2人います。どちらもこの世界の人の力を大きく超えた力を持っています」
「ほう?…その二人なら俺を殺せると?」
「私はシンを殺させる気はありません…ですが…シンの異常な回復能力を抑えられるのではないかと…」
この力が死ねば…
「この力が死ねば…シンは私たちの為に生きてくれるでしょう?」
心を読むな…
「それも悪くはないと思ってはいるが…俺は存外気まぐれだからな。約束はできないぞ?」
「そうちょっとでも思ってくれてるなら…私たちは嬉しいです」
とみんなが頷く。
「そしてその一人が…サーニャのご主人様です」
「ほう?サーニャそうなのか?」
サーニャが戸惑いながら考える。
「確かにあのご主人様…ツバサはいろいろおかしかった。ありえないほどの身体能力に、他人に力を与えたり、遠い敵の位置が分かってたり…あとは異常な光魔法を使う、シャルという少女もおかしかった」
んー?それが俺の死とつながるか?
「サーニャちゃん、あと敵がミイラ化するとか言ってなかった?」
「ん。まるで体液をぜんぶ吸い取ったような…そのあと元に戻ってたけど…」
人間をやめてたり仮面をかぶってたりしないよな?
「私の分析では、身体能力を奪ったり与えたりする能力、そして身体能力を自由にできるという事は、それに付随して、人の力や能力を見たりする力があると思います。遠距離を見通せるのもその力の一端でしょう」
「そいつに俺の能力を奪ってもらう?そいつが不労不死を望むなら有りだが?」
「いえ‥どちらかというと見通す方が重要ですね。シンの力をまず把握することです。そこから対策をしていきたい」
「まず情報か、狐らしくなってきたな」
「シンの為ならあくどい狐にもなりましょう」とにっこりと笑うココ。
怖いからな?
「それで?もう一人は?」
「こちらの方はいろんな情報が厳重に管理されてて…虚偽も交えて情報が飛び交っているので…私の精査した情報で確実なのは…一つ彼女は幸せの魔法を作成することが目的である。2つ欠損部位を治せる魔法が使える。3つこの世界にない魔道具を多数制作している。最後に人心すら自在に操る魔女王と名乗っている。とこんな所です」
「シャルも欠損部位を治す魔法を使えた。私の尻尾も治してもらった」
「…少しだけ引っかかるんだよな…なんだろう…」
幸せの魔法?俺にはそんな魔法は使えないな…ん?
「センタクカンソウキという言葉を知りませんか?シン」
「乾燥機付き洗濯機なら知ってるがな…まあ機ということは異世界人だな」
この世界に機械という概念はない。
「シンは獣人国で、楽しくなる魔法は得意と言いましたよね?」
「あぁ…あれは俺が元の世界で子供をあやすときに使っていた物だ。魔力なんて使わないぞ?」
ただの手品だ。銅貨を一枚借りる。
「机の上に置いたコインと使うのは手だけだ」
そして右手で机に置いてあるコインを手のひらで掴む。右手を握ったまま差し出し…
「コインはどこにあるでしょう?」
「「「「「右手?」」」」」
右手を開いてやる。コインはない。
「残念右手にはありませんでした。ってこんな感じの魔法だよ」
「「「「「「コインどこいったの!?」」」」」」
コインを掴むときに親指で右方向にコインをはじく。右に置いてあった布の下に滑りこませてある。
種を明かすと…
「「「「「「すごい…」」」」」」
いや…酒の席とかでしか使えないぞこれ…
その後覚えた手品を楽しそうに遊んでたが…
「で?俺がこの魔法を使えることに何の関係が?」
まだ遊んでいたココに聞く。
「オホン…幸せという概念と、楽しくなるという概念が似ていたので、カマをかけてみたところ…釣れたようでして…もしかしてお知り合いではないかと?」
「んー…実はこの魔法は、やってる方も楽しくてな…ハマったころはいろんな町で、逃亡ついでによくやった物だ…やってる方も楽しいから、みんなが楽しくなる魔法だ」
しかし若干覚えているきがする‥顔までは覚えていないが…中学生くらいの女の子が、子供に交じってとても楽しそうにしてたのを…
つい嬉しくてリップサービスもした気もする。
「若干覚えてるかもしれないな…ただその子かはわからないが…」
「先生!!」
「お兄ちゃん!」
「「もっと教えて!楽しくなる魔法!!」」
「いいぞ~ただ少し練習が必要だ…厳しい地味な訓練になるだろう…耐えられるか?」
「「もちろん!!」」
きっと獣人は魔法を使えないから、憧れるんだろう…
…これ前も考えたこあるな…元の世界で…
「実はその一人目のツバサと二人目の魔女王は現在魔人国にいます。どうしますか?こちらに誘導もできますが?」
どうしよう?
いつもお読みいただき有難うございます。




