この世界の情報
「ん…?」
いつも通り日の出のちょっと前に起きる。今日はベットがボロボロになってない。安全って素晴らしいな…
しかしいつもと違い、自分の横に体温を感じる…
ふと掛け布団をめくり、隣を見てみると…
そこには狐耳を生やした、金色の髪の毛が見える…
「シン…様…おいてかない…でくださ…い…」
(そりゃ不安だよな…生きることに絶望してたら、いきなり故郷に帰れるかもしれない。夢だと思っても仕方ないのか…)
あとはこの宿のベットなんかより、俺が具現化したベットのほうがふかふかだし…今晩は2つ具現化するか…
俺は死ぬ方法がわかるまで、生きようとすることはしないつもりだ。
もし万が一俺にとって大事な人ができたとしても、大事な人は俺より先に絶対死ぬからだ。そんなの俺の小さな心では耐えきれない。
だからフラグはバキバキにおっておかないといけない。フラグメイカーはほかの主人公がやってくれるだろ?
何を言ってるんだ俺は?
とりあえずベットから這い出て服を着替える。今日はギルドに一回行って犬歯を渡しに行く。
さすがにこんな朝早くに開いてはないと思うので…
宿から出て宿の裏にある井戸から水を引く、これはご自由にだそうだ。顔を冷水で洗いしっかりと目を覚ます。
そして重めの木刀を具現化し素振りする。今まで襲ってきた魔物を思い浮かべながら剣を振る。
死なない今の体を盾に魔物を倒すのもいいが、ココを故郷に返す約束は守りたい。生きる強さを見せてくれた彼女の約束だけは守ってあげたいのだ。
もし旅の途中に死ねるようになったとしても、約束を果たす最後までは生きなければならない。そう思い、ちょっとでも戦闘能力を挙げておこうというわけだ。
そうして3時間ほど剣を振り続け、もう一度井戸で水を引き、体を軽くふいておく。
そして荷物を取りに部屋に帰ることにした。
「お…おはようご…じゃいま…す…シン様…」
「おはようココ」
部屋に帰るとココは起きており、白いシャツと短パンをはいていた。昨日具現化しておいた服だ。
狐耳に金色の髪、髪は肩より少し下まで伸びており、窓から吹く風でサラサラとなびいている。
容姿は幼く、10~12歳くらいくらいか? 普通に俺の世界なら美少女と呼べるだろう。
金色したふさふさのしっぽがふらふらと横に振られている。
「なんかあったのか?」
なぜか彼女はとても恥ずかしそうに俯いていた。
「いえ…その…何でもありません…」
「その服じゃ恥ずかしいか…ちょっと待ってろ…」
服が貧相すぎたのか?レザージャケットとひざ下まで隠れるズボン、あとは赤黒い色のフード付きのローブを具現化する。
「そういうわけではないのですが…」
「まあとりあえず今日は町に出るから、耳としっぽは隠しておけよ。宿は夕食しか出ないからご飯も食べに行かないとな」
「いえ…そんな贅沢するわけには…」
「ココはガリガリだからなぁ…もうちょっとにくをつけたほうがいいぞ?」
「にく…ですか…?」
「せっかくかわいい顔してるんだから、もうちょっと栄養とって健康になればもっと魅力が出ると思うぞ?」
「かわいいっ…ですか…シン様がそうおっしゃるなら…」
「獣人の国でココが幸せになるためにも、俺ができることならなるべく協力する。がりがりで両親の前に出ても、心配されるだろうし。獣人国まで長い旅になりそうだ、町にいる間に英気を養っておくぞ」
「はいっ!」
そうココを言いくるめ、宿を出る準備をする。ココにはフードを被って耳としっぽを隠してもらう。俺は具現化してある皮袋に貨幣とウルフの犬歯を入れて出かける準備をする。
「んじゃあまず冒険者ギルドに行くけど、そのあと町を回ろうか」
「はいっお供します!」
まずは冒険者ギルドにより実力テストの方のウルフの犬歯5体分を受付嬢さんに渡す。
「…はい。これで実力テストのほうはクリアとなります。明日の筆記テストで合格すると冒険者身分証を発行させていただきますね」
「ええ、では明日また来ますね」
「お待ちしております」
受付嬢さんが頭を下げながらそう言い、俺は冒険者ギルドを後にした。
絡まれるようなテンプレはなかった。冒険者になるための試験が割と敷居高いそうなので、そういう乱暴な人は除外されるのかもしれない。
受付嬢さんが一瞬、驚いたような顔をしてたのは気のせいだよな……?
「お待たせ」
「いえ全然待ってませんよ?」
そして二人で町を散策する。今手持ちは金貨2枚と銀貨68枚と銅貨99枚だ、金貨ごとに皮袋を分けてる。前の世界でシビアに金銭を管理してたせいか、お金に関しては細かくなってしまう。
獣人国にココを送り届けたら当分お金はいらないのだが…
とりあえず手ごろなお店に入りランチにすることにした。
おすすめのランチを二人分頼みいろいろとココについて聞くことにした。
「ココって歳はいくつだ?」
「正直正確には覚えてないのですが…12歳くらいだと思います。」
「この世界では成人って何歳なんだ?」
「15歳でいわゆる一人前の大人と扱われますね」
「じゃあまだココはお子ちゃまなわけだな…」
「おこちゃまではありませんっ!獣人は成熟が早く12歳ならもう一人前とされてますので!」
「獣人とか大きい声で言わないように…でもまだ12歳なら俺から見れば子供だな」
「そういえばシン様のお歳はおいくつなのですか?」
「たぶん18歳かな?正確にはわからないとは思うが…」
「そうですか…同い年かちょっと上くらいかと思ってました…」
「童顔で悪かったな…」
と何気ない会話をしていると食事が運ばれてくる。この町は内陸地なので基本魚はあんまり流通しないそうだ。よくわかんない肉と野菜のいためものと、パンと野菜スープだった。お値段銅貨20枚也。
「悪くはない味だったな」
「十分おいしかったと思いますが…シン様は口が肥えてらっしゃるのでは?」
元の世界は俺みたいな低所得の奴隷みたいな身分でも工夫すればいくらでもおいしいものを作って食べれたからなぁ…
化学調味料バンザイだな…
「確かにシン様が作ってくれたスープに比べると劣ってましたが…」
この世界で元の世界の料理を再現するのもいいが…当面の目的が達成されないと次には進める気はしないのだ…
1 自分が死ねるようになる。もしくは死んで安らかに終わりたい…
2 ココを故郷に返す。
これは絶対に達成しないといけない目標だ。何をおいても達成しなければならないと思っている。
「ご飯食べたし…ココは何かしたいことはあるか?」
「したいことですか…?」
「俺はこの町に情報収集に来たんだが…ココにこの世界について聞こうかと思ってるから、とりあえずココのしたいこと、欲しいものを情報料にしようかとおもってな…」
「では宿に戻って、シン様とお話がしたいと思いますっ!」
「…俺は助かるけど…まあ明日の試験が終われば、もうちょっとゆっくりできるし、その時までにこの町の観光スポットを聞いておくよ」
「では宿に戻りましょうっ!」
宿に戻りこの世界について聞くことにした。まずは俺の正体?立場を簡単に話す。
「俺はこの世界の住人ではないんだ。俺は元の世界で確かに死んだはずだった。安らかにとは言えないけど…後悔も後腐れもなく、納得して死を受け入れて、安堵して死んだはずだった。でもなぜかこの世界にいた。しかも死ねない体になってた…」
「この世界でほかの世界の人が転生?したという話は聞いたことがありません」
「定番だが勇者みたいな存在も?」
「勇者…?」
「魔物がいるくらいだし、それを統べる魔王とかいないのか?」
「魔人族というのはいますが、あれは人種族と変わりません。ただ人種族より魔法に長けているため、魔法の得意な人種族で魔人族という認識でいいと思います」
「なるほど…魔物とは関係ないわけだ…」
「はい。獣人種は人種族に比べて身体能力が高くいろんな種族があり種族ごとにいろんな能力がありますね。私は狐族で策略や指揮が得意な種族です」
「なるほど…頭がいいわけだ」
「そういうことに長けた種族になりますね。人種族は知恵があるといいますか、いろんなことに対しての応用能力がとても高いですね。それに伴って探求心がとても高いです」
「正に冒険者向きの性格なわけだ」
「そうですね、魔人族は魔法への適性が高く、そのかわり身体能力が低く、魔法への探求心は高いのですが、他種族には閉鎖的であんまりかかわろうとはしない種族ですね」
「魔法とか…ファンタジーしてるよなぁ…できれば使ってみたいな」
「獣人族にほぼ魔法の適正はありませんが、使えないこともないそうです。なのでシン様なら余裕で使えるとは思うのですが…」
「まあその辺はおいおい目標を達成してから、できたらやる方向でいいや…」
「やはりシン様は…その…死ねる機会があれば死ぬのですか…?」
「うん、まあ一回死んだ身だ、今生きてることがおかしいんだよ。だから死ぬというより、もとに戻るというのが正しいと思ってる」
「…私はシン様に死んでほしいとは思いません…」
「ココの気持ちはうれしいが…でも俺は…納得して死んだんだ…それを歪められたくない。もしそれが神による奇跡だとしても」
「それでもっ!!」
「…これは俺の問題だ。でもココを獣人国まで送り届ける…それまでは死なないつもりだか安心してくれ」
「はい…納得はしませんが…いまは考えないことにします…」
「それでいい。自分のことだけ考えてればいいから、獣人国に帰ったら自由に生きるといい」
「…はい…」
この世界についてココからいろいろ聞くことができた。
ココが捕まって奴隷としてこの町で働いてたのは2年くらいらしい。2年もあんな扱いならそりゃ絶望もするか…
狐族は知識を幼少から詰め込まれるそうなので、基本的な世界の知識はいろいろ知っていたらしい。
この町から西に100日ほど歩けば獣人国の首都につくらしいがさすがに遠いな…移動手段を考えたほうがいいな…
その後食事を部屋でとり、お湯をココに渡して、今日はベットを2つ具現化する。
「んじゃあ俺は先に寝るけど…ココは俺なんかのベットにはいらずに、そのベットで寝ろよ?」
「…一緒じゃダメなんですか…?」
「だめだ。嫁入り前の可愛い女の子が人族とはいえ、異性と一緒に寝たらだめだ。部屋は分けられないけど…もっと自分を大切にしろ?」
そういい抱き枕を具現化しておく。
「抱き枕を抱いて寝ればさみしさも和らぐとは思う、これで我慢してくれ…」
もう一つのベットに抱き枕をおいて、俺は布団に入る。
「んじゃあおやすみ…」
「おやすみなさいませ…」
少しはこの世界の情報を得た。そして明日はギルドでテストを受ける。特に問題なく町を出られるといいが…
お読みいただき有難うございます。




