謁見
日に日にスピカは自分を取り戻してるようにに見えた。
2日後にはシャルの元にいても、叫ばなくなったし、5日ほど経つと家の中を一人でうろうろ出来るようにはなった。
そして7日ほど経った頃だろうか、やっと少し喋れるようになった。
そしてスピカを家で匿ってから、10日後の朝。
王城?もちろん行ってない。
「ご主人様…失礼します。手紙が届いております」
僕の書斎に入ってきたミカが、封蝋のされた手紙を持ってくる。
「また王からかな?」
「ツバサ様……お父様…から…ですか?」
途切れ途切れ喋るスピカ。僕が本を読んでるときはずっと膝の上にいる。
封をナイフで切り、中を読む。
「城に来いってさ…どうする?」
「外に…出るのは…怖いですが……ツバサ様…と…一緒なら」
「僕の予想だと、スピカは僕と引き離されると思うよ?身分が違いすぎるからね」
「ひぃ…いやっ…いやっ!?」
スピカを抱きしめてやり安心させる。
まだたまに発狂しそうになるのだ…
「スピカをあそこで死んだことにして、匿ったほうが良かったのか…」
それだと僕のせいになりかねなかったしな…
「すいま…せん…ツバサ様…」
体が震えているスピカ…仕方ないか…
「助けるときにスピカを背負う覚悟はしたからね…スピカが良ければ、ずっと僕の傍にいるといいよ」
「ありがとう…ございます…」
最悪…国を敵に回す覚悟で城に行くべきかもしれないな…
「ミカ。2日後、城に行くと返事しといてくれ。あと出掛けるよ、全員準備して、玄関に集合させてくれ」
「かしこまりました」
あの城の兵士を全員、叩き潰すつもりで準備しておこう。
2日後の朝、城に行く準備をする。城に行っても恥ずかしくないよう、みんなにドレスを買っておいた。
「ツバサ!みてみて~?かわいい?」
シャルがくるくる回る。
「可愛いなぁ~可愛いというか…とても綺麗だよシャル」
へへへ~と嬉しそうに笑うシャル。
「こんな綺麗なドレス…ちょっと恥ずかしいわね…」
「とても似合ってるよミーシャ」
「お待たせしましたご主人様」
ミカとほかの二人も合流する
着付けを手伝ってたメイドたちも今日はドレス姿だ。
「私たちは、ご主人様のくれたメイド服でも、よかったのではないでしょうか?」とアミ
「自分たちにこんなドレスは、もったいないというか…」戸惑うナギ
「メイド三人もとても綺麗だよ。せっかくだしね。たまにはおめかししてもいいじゃないか」
もちろんスピカもドレス姿だ。ずっと僕の手を握って横にいる。
「んじゃあ行きますか」
覚悟を決めて、城に向かう。
馬車が城に着くと、城のメイドさんが迎えてくれる。
奴隷の首輪に怪訝な顔をしたが、何も言わず案内してくれる。
謁見の間に案内され、玉座の前で待たされる。
跪くべきなんだろうか?別に忠誠を誓ってるわけでもないので、そのまま呆然と立つ。
60歳くらいの恰幅のいい白髪の老人が歩いてくる。白いひげを喉仏まで伸ばした威厳のある顔立ちだった。
王が玉座に座る。周りのメイドが跪く。いちいち仰々しいな。
正直僕としては、喧嘩するつもりで来ている。いちいち媚びる必要もない。
礼儀を尽くすべきものには尽くすが…
「再三、王の申しつけを無視するどころか、不遜な態度まで取るとは…極刑に値するぞ?」
横にいる側近が、僕に冷たい目線を送る。
周りにいる衛兵が、槍を構える。
「一応忠告はしておきますね?この城の全兵力をもってしても、僕は止められませんし、僕は敵対するならすべて蹂躙します。この国ごとでも」
僕の嫁とメイドに手を出すなら、もうこの国はいいや。別の国へ行こう。そういう覚悟もしている。
「はっ!大口を叩き…」
「止めよ」
王が側近を止める。
「しかしっ!」
「聞こえんのか?二度は言わん」
王は立ち上がり、僕の目の前まで歩いてくる。
「すまんな…この度は娘を救ってくれて感謝する…出来ればそちらの屋敷に赴きたかったのだが…ワシは身動きがとりづらい身でな…」
「お察しいたしました」
王は軽く頭を下げる。
「お呼びいただいたのはそれだけですか?」
「ワシもいろいろ考えたのじゃが…娘を見て決めようと思ってな」
スピカの方を向き、優しく語り掛ける
「スピカ…お前はどうしたいのじゃ?」
「私は…ツバサ様…と共に…ありたいと…思います…」
「そうか」
とにこやかに笑い。玉座に戻る。
「此度は、わが娘を救い、逆賊共の討伐をした、金の冒険者ツバサに褒美を与える」
老人とは思えない張りのある大声で内容を告げる。
「まずは、一代貴族の称号を与える。そして我が娘スピカを其方の嫁として認めよう」
つまり僕は男爵の貴族位を持ったわけか。一般市民が王女をもらうわけにもいかないからか?
本来は公爵じゃないといけないんだっけ?
「冒険者ギルドに依頼していた報酬に関しては、金貨200枚を進呈する」
「十分すぎる報酬です。ありがとうございます」
「貴族として、姓を名乗ることを許そう、好きにつけるがいい」
「では…ミカヅキと名乗ります」
「ふむ。ではツバサ・ミカヅキよ。今後の活躍期待しておる」
そして堅苦しいやり取りが終わった後、王に食事に誘われる。
ぜひ来てほしいと、まあスピカのお父さんのお誘いだ、受けない訳にもいかないので承諾する。
「王なんて言うのは、既に廃れつつある制度なんじゃが…一部頭の固いやつがいてのぉ…大変なんじゃよ…」アルニ王が苦笑いで話し出す。
「私がツバサの屋敷に行くのでさえ、どれだけの反対を押し切ったか…」とアリオト王妃
「権威を持つと大変ですねぇ~」
とまあこんな感じで意外とフレンドリーに食事をしている。
スピカが僕から離れないので、それを挟んでアルニ王とアリオト王妃が座っている。
ほかの皆はおいしい食事に夢中になっている。デザートもあるらしい。
「しかしこんなに嫁を持つとは…正妻はどの子じゃ?」
「そんなのいませんよ。僕を想って、僕が想ってる子に優劣はありません。王様でもない限りそんなの決める意味はないですよ」
「痛いところをつくの…しかしワシはアリオト以外は娶っておらんがの」
「ふふふ…あなたは甲斐性がないですからね」
和やかに食事をしているが…一個だけ聞いとかなければならないことがある。
「今回の誘拐を裏で糸を引いてた人物はいないんですか?」
王女を誘拐だなんて、そんなこと簡単にできるはずがない。
「調査中としか言えんのぉ‥第一王女も第二王女も、ワシの管轄ではなくなってる故、スピカの夫が次の王という事になっておったのは確かじゃ」
「スピカのお姉さん達はどこへ?」
「騎士団の団長と魔人国に嫁いでるのよ。だから彼女たちを誘拐しても、国は動かないと思ったのでしょう…」
「あれ?僕が次期国王?やめてほしいんですが…」
スピカがビクッ!として震える。膝の上にのせて抱きしめてあげる。
「ワシらが死ぬまでに、王族という制度を消すつもりじゃ。王が民衆を導くのではない。民衆自らが、自分たちの国を導けばいいのじゃよ…そのことに生涯を尽くすつもりじゃ。安心してよい」
「もうすでに、大まかな外堀は埋めてあるの。だから安心してスピカと暮らしてね」
「今回の件に関わった物は必ず見つけて処分する。それまでは頼んだぞ。ツバサよ」
「お任せください。スピカは僕がちゃんと守ります」
その後軽く雑談を交え、食事会はお開きとなった。
またちょくちょく行いたいとのことだ。娘に会いたいのだろう…僕としては断る理由はない。
城を出て家に帰る。貴族になったからと言って、やることは変わらない。
メイドに教育をしつつ、お風呂に水を溜める。
ナギは城での食事でいろいろと感心していたので、また料理の幅が増えそうだ。
王からメイドを数名寄越す、と言われたが断った。信用できない者を傍に置きたくない。
しかしスピカも嫁枠なんだよな…ここ最近ご無沙汰の所為で悶々する。さすがに12歳はやばい。
最低でもあと4年は待ってほしい。
この世界では300日が一年だ。なのでそれまではおとなしくしてもらおう。
そんなことを考えながら、ベットに向かうと、シャルとアミがいた。
アミ?
「あれ?ミーシャは?アミ?」
「ミーシャはスピカといっしょにねてるよ?」
「そっか…アミはなんでいるの?」
「シャルだけじゃツバサの相手はたいへん。だからアミを呼んだの」
僕を野獣みたいに言わないで…
「アミはいいの?そこは奴隷として縛ってないけど?」
「むしろ光栄です!」
「とはいえ…流石にメイドに手を出すのは…」
と言ってたらシャルに押し倒されて、口を塞がれる。
「んっ…ツバサ、みんなツバサのお嫁さんでいいの…だから…愛してあげてね?」
「…シャルに言われたら…断れないね…」と苦笑いをする
「アミ。おいで?」
「は…い…」
アミとも口づけを交わし、三人でその夜遅くまで愛し合った。
いつもお読みいただきありがとうございます。




