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私の世界にようこそ  作者: てけと
第二幕 『魔女王の内政』
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私たちは本能を殺す

マオのお話は割と短めなものが多い気がします。

正直、お話をつなげたりするのに苦労しております…

それでもお楽しみいただけているなら幸いですが…

 失敗したなぁ…はぁ…

  何にって…?私が羽を隠すのを忘れたことを…


「マオ…神…様…っ!」


 アミルさんの反応を見てさっと羽を隠してすぐ屋敷に帰った。これはまずい。嫌な予感しかしない…


 まだルルさんのようにすぐ消したり造ったりはできない。これが消えるまで丸一日かかる…何とか明日の祭りの挨拶には消える…


 流石に夜通し動いて、日が出て外ももうすっかり明るくなってしまっていて…魔力をほぼ使い切ってしまった私はそのままベットにダイブして眠る。


 体がだるい…これは明日までは治らない…今日はおとなしく寝とこう…


 意識がもうろうとして眠る寸前に誰かがベットに入ってくる気がしたが…特に気にせず意識を手放すことにした…


 




 すっかり日が暮れて、月が顔を出したころ。私はルルさんに起こされて目が覚める。


「マオ様起き上がれる?無理ならここに食事を運ぶけど?」


 ルルさんが心配そうに私を見ている。


「大丈夫…体がだるいだけで…動けないことはないから…」


 起き上がると私の横で小さく丸まったセフィーがいた。


「あれ?私生きてる?」


 私を殺しに来たのかな?


「私たちは反対したけど…いう事を聞いてくれなくてね、マオ様が殺されないように、さっきまで間にルイ姉が寝てたから大丈夫だよ~?」

「そっか…この子も寂しかっただけだと思うんだよね…」


 何百年も、心を持った魔物として、機械のような本能しかない魔物の中で暮らしていたのだ…ついつい希望を持って、縋るように飛んできたんだろう…


 私はセフィーの頭を撫でてあげる。真っ白な髪がサラサラで気持ちがいい。


「セフィー?起きて?」

「ん…ご主人?」

「ご飯食べにいこ?」

「わかった…」


 セフィーの手をとって、私はルルさんの後ろをついていき、食堂に向かった。








「マオ様、お体の方はいかがですか?」


 カインさんが私の座る椅子を引きながら、心配してくれる。


「大丈夫だよ…怠いだけだし…」


 心配してくれてありがとう、と言って椅子に座る。


「今日は元気が出るような、精の付く料理を作りました!みんな疲れたでしょうし!いいお肉も手に入ったので…」


 アリサさんが腕まくりしながら私に言う。


 おおー!アリサさんの料理は何でもおいしいから楽しみ!!


「じゃーん!これです!」


 アリサさんが給仕する。

 深めの器にに入ってる白濁色のスープ。スプーンですくっても何も入ってなかった。


「これが?元気の出る料理?」

「ふふふ~!まあ飲んでみてください!」


 進められてズズッと口に運ぶ…これは!


 濃厚の一言である。これは牛?牛の旨みが舌に押し寄せてきて、でも臭みとかそういうのは全くない。香草だろうか?すこし鼻に抜けるようなこの香りも素晴らしい。それほど濃厚なのに後味がさっぱりとして、すこし舌に旨みの余韻が残る程度だ。


 これはっ!?


「アリサさんを私のお嫁さんに欲しくなってしまうよ…」


 胃袋を掴まれるとはこういう事なんだね。


「ありがとうございます。マオ様がおっしゃるなら、いつまでもお傍にいますよ」と笑いかけてくれる。

「体が怠い私に気を使って、胃に優しいものにしてくれたんだね…心配無用だよ!お腹空いたよアリサさん!」

「ええ…そうおっしゃると思いまして…」といろんな料理をテーブルに置いていくメイドさんたち。



 夕食の時間である!



 各々が好きに食事をし、終えるとみんなでご馳走様をし、お風呂に入る。


 女の子同士のお風呂なんてカップを確認したり、私の体を洗ってくれたりそんなたわいもないことだ。

 セフィーが私とおんなじ身長なのに私より大きかったのは言っておこう。どこがとは言わない…



 ドラゴンなのに!



 セフィーは人の生活が気にいったのか、他のメイドさんと楽しくお話していた。

 この調子で人を好きになってくれれば、憎しみという感情が消えなくとも、人と好きだという想いが、それを塗りつぶして、きっと彼女は人と暮らしていけるだろう。


 





 私は寝間着に着替え、ベットに座って考える。これはいつもの癖だ。


 私の気持ちを確認するために、考える。


 元の世界に戻りたい?私はあの世界で死んだ。戻りたくない訳ではないが…


 私はこの世界で生きていくと、召喚された日に決意した。

 そしてこの魔法がある世界で幸せの魔法を完成させる。そう目標を定めた。


 

 そうしないと…心が折れてしまいそうだったからだ。



 死んだって言われて、はいそうですか頑張ります。とはならないよね…

 そんなことを考え、私は人知れずここでちょっとだけ…ほんのちょっとだけ涙を流す…



 しかしそんな鬱な思考を私はこの世界で会った人たちを想い、吹き飛ばす。


 この世界は楽しい。ちょっとだけ不安もあるけど。それを上回るほど嬉しいことでいっぱいだ。



 私はこの世界に来れてホントに良かった!そう思えるほどには。






 さて…今日はルイさんの所かな!なんて思ってるとセフィーが入ってくる。


「セフィーどうしたの?」

「ご主人…泣いてるの?」


 はっ!として私は涙を拭く。


「いやぁ~眠くて欠伸しただけだよ~」


 私のことはいいから、と話を促す。


「あの……私は怖いのです…」


 俯いてセフィーが話し出す。


「ん?私のことが?」

「いえ…その…ここの人はみんな私に優しく話しかけてくれます…私が魔物って知ってるはずなのに…今まで…誰かと話して…その心を知ることなんてなかったから…嬉しくて…楽しくて…でも…」


 涙を地面に落としながら、彼女は言葉を口にする。


「私は…私の本能が怖いのです…私の本能は言います…こいつらは敵だ…殺せ…殺せ…蹂躙しろって…」

「そっか…」


 それは…自分の知らない自分が心の中にいるのだ…でもそれは…


「ご主人の…魔法がなかったら…私は…どうなってしまうのでしょうか…こんなに嬉しい気持ちにしてくれる人達を…私は殺さないといけないのでしょうか…それは嫌…でも…私はこの本能に…勝てるのでしょうか」


 泣きながらそう言う…不安で不安で…誰かに優しく勝てるよって言われたいんだろう…そうしてあげるのも、優しさなのかもしれない…

 

 でも私は…それでは…自分の意志で勝てない…だからっ!


「セフィー甘えないでっ!!」


 私は強く言う。そして思う。そんなのは()()()()持っているものだ。

 私は一度死んだ。お母さんにもお父さんにも、友達にも魔法使いのお兄さんにも…もう二度と会えない。悲しい…もう動きたくない。気を抜けば、悲しみに沈んで、浮かび上がれなくなるほどに…

 何とか前を向いて、歩いて…私を想ってくれてる人が悲しまないように、私は私の本能(かなしみ)を必死で抑えた…


「私だって…戦ってるんだよ…負けちゃうと心が死んじゃうからね…」


 せっかく気分を変えたのに…また涙が零れてしまう。


「勝てるのかって?そんな気持ちじゃだめだよ…大切なものを想って…勝つんだよ‥?負けそうで、辛くなっても…私は絶対に勝つ!そう…決めたんだから!」


 私は負けるなんて微塵も思っていない。きっといつかこの本能(かなしみ)が消えるまで…


「だから!セフィーもそんな気持ちじゃだめだよ…」


 甘えないで…自分の意志で…そうじゃないときっと、いつか負けちゃう…


「………私だけじゃないんですね…ご主人も…」


 セフィーが俯いてた顔を上げて私を見る。


「それでも、もし、辛くて辛くて、心が壊れそうになるなら…」


 私を殺して逃げればいい‥そう言おうとして、抱き着かれて、止められる。


「一番好きなのはご主人ですよ…自分の命を当たり前のようにかけて…ルイとルルが言ったように…ずるい人です…」


 ふふふ…と笑みがこぼれて…


「私はわがままだからね…苦労するよ?」


 背中に手を回してあげて…優しく抱きしめてあげる。


「いいですよ…ご主人のために私は本能に絶対勝ちます…だからご主人も…辛くなったら言ってくださいね…」


「うん…ありがとう…」


 私とセフィーで手をつないでルイさんの部屋に向かう。ルイさんかルルさんと寝る、それは譲れなかった。







 朝アリサさんが起こしに来てくれる。私は朝食を食べ、開催の挨拶の準備をする。


「え…これ着るの私…?」

「手伝いますね」 


 ルイさんと数人のメイドさんが私の寝間着を剥いでいく。


「ええ!?もうちょっと控えめなのが…アーッ!」






 


 日が昇り、時間でいえば10時くらいだろうか。祭りの開催の挨拶が始まる。


 とても大きなステージが、町長の屋敷の前にある。まだカーテンは閉められているが、ここであの町長様が挨拶をされるらしい。


 一目見ようと集まった民衆が、近くの道を埋め尽くす。屋敷近くの建物の窓からもたくさんの人が体を乗り出している。


 そして幕が開かれる。屋敷で働いているメイドや執事が、横に60人ほど並び、ステージの真ん中にある、この世界にはないマイクを挟みルイとルルが立っている。



 そしてステージ横から町長様が登場する。



 まるでウエディングドレスのような背中が開いた真っ赤なドレスに、黒い肘まである手袋をつけている。

 髪も後ろに編み込まれ、アクセントに花が飾られている。

 そのとても可愛らしい姿に、見に来ていた人々は、つい見惚れて呆けてしまう。


 顔を真っ赤にして、意を決したようにマイクに向かい、開催の挨拶を始める。



「町長のマオです!今回は私の町の祭り!マ…オ…祭りの開催に協力していただき、ありがとうございます!」


「今回このような祭りを企画したのも、皆さんにお願いがあるからです!それは…」


「私はただの町長です!この町に寄り添いたい、一人の住民として!だから…あんまりその…特別扱いしてほしくありません!」


「この町を大きくしたのは、ここにいる皆さんです!ありがとうございます!私のわがままに答えてくださって…本当にありがとうございます!」


「そしてこの町を、いい町にしていくのは、あなた達です。名前こそマオの町で私の町みたいになっていますが…ここはみなさんの町です!だから…」


「私の為でなく、皆さんの家族のために、愛する人のために、大切な人のために、この町をいい町にしてください!」


 お願いします!と可愛らしい笑顔で言って最後を締めくくる。


「では!!ここに!マ…オ祭りの開催を宣言します!!みんな精一杯楽しんでくださーい!!」


 ワアアアアアァァァァ!と歓声が上がり…



 マオ祭りが始まる。

いつもお読みいただきありがとうございます。

正直まだ一話が投稿される前に書いているものですが、誰も見ていなくても最後まで書きます。

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