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私の世界にようこそ  作者: てけと
第二幕 『イレギュラーは獣人に愛される』 
40/189

孤児院

 首都に向かって出発した俺たちは、おおよそ順調に旅路を進めていた。


 定番(テンプレ)の盗賊も出ることがない。ココによると、獣人は同族愛が強いから盗賊なんて滅多になる人はいないそうだ。


 おおよそといったな…順調じゃないのは夜だ…俺はいつも通り寝たい、でもココがそれを許さない。

 最初はココを縛ってベットに転がして、外で寝ていたが…日を重ねていくごとに、拘束を解いていたり、そもそも捕まえられなかったり、睡眠薬でも買っておけばよかったか…

 今はめんどくさいが、早めに野営の準備をし、周辺の魔物を調べ、対策をして安全に寝ることになっている。

 見張り?だから夜は寝るもんだって…俺はともかく、ココに見張りをさせて寝るとか…何かあっても俺は起きないからな。




 馬車で走り続けて数日、次の町が見えてきた。


 首都に近づいてるからだろうか、最初の村に比べるとだいぶ文明が進んだ感じがするな…


 ちゃんと加工してる木材を使って家を建てている。若干地面から浮いている全体的に四角く、窓とかもちゃんとついている家だ。ログハウスっぽいといえばわかりやすいだろうか。


 この町はそこまで人族を嫌悪していないらしく、冒険者の身分証を出したら歓迎された。

 適当な宿に一泊だけ頼んでおく。通り過ぎてもいいのだが…ちょっとした休憩みたいなもんだ。

 俺はココと別行動にして、冒険者ギルドに顔を出すと言っておく。絡まれるのはもうごめんだからな…


 前回の村で懲りてくれたのか、渋々ながら了承してくれた。





 冒険者ギルドは土台に石材が積まれておりその上に木材の建物が建っていた。冒険者ギルドだけ、いちいち豪華なんだよな。

 ギルドに入り、受付に向かう。受付の女性が狐耳だった。これは…


「すまん‥聞きたいことがあるんだが…」

「はい。なんでしょうか?」

「狐族…なのか?」

「ええ…それがなにか?」

「狐族の集落ってどこかにあったりするのか?」

「それはちょっと…お教えすることはできませんね…」

「そっか…」


 いろいろ説明してもいいが…ココがいないと説得力に欠けるな…なんてタイミングが悪いんだよ…


「訳あって狐族の集落を探しているんだ…信用できないかもしれないが…」

「はぁ…でしたら冒険者の身分証をお預かりしてもいいですか?」

「ん?まあいいけど…」と首から鉄のドックタグみたいなものを渡す。

「少々お待ちください」そう言って狐耳の女性は奥に消えていった。

「名前くらいしか書いてないよな…あれ…」


 しかし失敗したなぁ…ココを連れてくれば絡まれ、連れてこなかったら重要な情報が転がってる。なんか悪意を感じるな…

 まあそれももうすぐ終わりそうだな…集落に送り届けたら…とりあえず首都とやらにいって、情報を収集するか。俺には情報がなさすぎる…


 しばらくすると、狐耳の女性が帰ってくる。


「こちらをどうぞ。ありがとうございました」と銀でできたタグを渡してくる

「あの…俺が落とし…渡したのは鉄の身分証なんだが…」


 どこの不思議な泉だよ…あの話も、もし落としたのが形見の大事な斧だったらどうするんだよ。勝手にすり替えんな!


「いえ…この身分証についてあまりご存じでないのですか?」

「ん?ただの身分証明書だろ?名前しか書いてないのに…ほかに何かあるのか?」

「…では説明いたしますね…」



 あの身分証明書には≪認識≫という魔法がかけてあって、それで全冒険者の情報を管理しているそうだ。


 それによると俺は、レイルの町にてギルドの不正を暴き、冒険者を救い、貴族を裁いた。そして先日立ち寄った村を救い、横暴な冒険者の態度を諫めた。その功績をもって銀に昇格したんだそうだ。


「それに、立ち寄った村に猫耳の獣人がいたのは覚えていますか?」

「ん~まあ覚えてる」


「その子からの情報で『獣人の子供たちにも好かれ、性格も良し、差別意識もなく、とてもできた人である』とか書かれてますね」

「…それで?集落については教えてくれるのか?」

「私からは教えられないのですが…一つクエストを受けませんか?」

「それで情報が得られるなら構わんが…」

「クエスト内容ですが、この町には孤児院があります。そこで人が足りないので手伝ってほしいとのことです」

「そのクエストのどこに情報があるんだ…?」

「そこの院長は狐族です。私よりも年上の…彼女が信用するなら私は何も言いません」

「ふむ…わかった‥受けよう」

「ではこちらが報酬になります」と銅貨30枚を手渡してくる。

「先払いとは信用されてるな…」と苦笑いする。

「ええ…『先に払わないと報酬を固辞されて後処理がめんどくなるにゃ』といわれておりますので」とにっこり笑う狐耳の女性。

「さすが策略担当だよ…」


 そして孤児院に向かう。一つの目標の終わりが見えてきた…そうおもいつつ…






 孤児院といえば教会のようなものを想像していたが、大きな庭に大きな平屋のような小屋が建っている。孤児院というよりは、幼稚園?保育園?のような感じだった。

 木の柵でできた扉を開き中に入る。庭には誰もいなかった。なので離れにある建物に向かって歩いていく。多分あそこだろう。


「冒険者ギルドのクエストできました」そう言って身分証を見せる。


 前払いでお金をもらってしまったのでこれは仕事である。だったら礼儀は尽くすべきだ。


「おぉ?受けてくれる人がいたとはね。私は院長のコルだよ」


 腰の曲がった年寄?獣人の年齢の感覚がわからんが…がいた。白髪交じりの金髪で狐耳がついてる。


「コルさんですね。僕は何をしたらいいんでしょうか?」

「やんちゃな子供の世話だよ。あとは勉強を教えてやってくれ。できれば計算を」


 保育士みたいなもんか…


「わかりました」

「んじゃあ付いておいで」そう促されて付いて行く。




 一つの部屋に10人くらいの子供がいた。


「私の貯蓄でこの孤児院を始めて、そして孤児院を出て行った子の寄付で成り立ってるんだが…いかんせん人が足りなくてねぇ…こうして勉強させるのにあぶれる子が出てしまう…ちゃんと知識を持てば生きていけるからねぇ」


 知識は大事だ。知識という土台があって、初めて知恵を絞りだせる。知ってることの多さがそのまま武器になりうる。この子たちにそういう武器をもって、なんとか生きてほしいという事だろう。


「では今日はこの子たちを?」

「あぁ、日が暮れるまでお願いするよ」

「かしこまりました」





「お兄さんだれ~?」「なにしにきたんだよ!」「この人耳も尻尾もないよ~?斬られたの?」「人族だ!」

 ワイワイと俺を歓迎してくれる子供たち。歓迎してくれてるんだよな?


 いろんな種類の獣人がいるな…お?狐耳もいる、猫、犬、あれはなんだ?ねずみか?


「今日一日だけ先生をすることになった。シンだ。よろしくな」


「勉強きらーい!」「お外で遊びたい!」「私は勉強好きですが…」


 まあ遊びたいよな…だが…仕事は達成しなければならない。


「勉強が終わったら、俺が遊んでやるぞー?それはもう楽しいぞ?」


「ほんとー?」「じゃあがまんするー」「私は勉強のほうが…」


 狐耳の子は勉強のほうが好きなようだが…まあ考えておく。


 


 四則計算を教える、なるべく簡単に。覚えるのも大事だが、勉強というのは理解することが一番重要だ。なぜこうなるのかという事、物事を理解させるのが勉強を教えるという事だ。テストに出るから覚えておくように、とか言う教師は話を聞くに値しない。自己学習のほうがマシである。

 因みに「なんで1っていう数字はこの形か理解できなーい」とかいう子もいるが…そこまでは理解させる必要がないと言っておこう。


 そういうもんなんだよ!(逆切れ)



 覚えさせてとは言われてないので、適当なところで授業を終える。日の位置的には15時くらいだと思うので、そろそろ遊ばせてやろうと思ったのだ。


「院長さん、庭をちょっとお借りしてもいいですか?」

 

 離れで事務仕事をしている院長さんに声をかける。


「もちろんいいよ。何もないから、かけっこくらいしかできないけどね」

「ありがとうございます」




 庭に子供たちを集める。そして…


「はい。では今日は鬼ごっこをします」という


「おにごっこ?」「なにそれー?」「動くのは苦手です…」


「鬼になった人は誰かをタッチして、鬼を交代しまーす、それの繰り返しだけど…今回はみんなが鬼の役で先生を捕まえる遊びにするかな」


「すぐ終わりそう~」「よゆうだよ!」「私には無理そうです」


「もちろんこんななにもない所だと先生もきついので…」と手を翳し、具現化を発動する


 そういえば具現化できる質量が最近増えているのだ…原因はわからんが…魔物を倒すくらいしか戦闘はしてない。シャドートレーニングで筋肉がついてきたのか?筋肉の質量に応じてなのか?


 土管や滑り台、アスレチックに、迷路のような壁、等々。いわゆる公園にあるようなものを適当に出してみた。


「「「わー!すごーーい!」」」


「さて…10秒数えたら先生を摑まえるんだ。捕まえた人には、なんでも一つだけお願いを聞いてあげよう。制限時間は日が沈むまで!スタート!」


 いーちにーいと数を数え始める子供たち。


 しかし彼らは子供と言え獣人だ。逃げ切るには知恵を絞る必要がある。地の利は我にあり。


 まず見つからないようにする、匂いを消す。もしくはダミーを置いておく。敵(子供)の位置を手鏡で把握する。行動範囲を予測。逃走経路計算。。。



 といろいろ大人げなくすると飽きられるので、ちょっと時間がたってからは隠れるのをやめた。


「くっそっなんで捕まえられない!」「そっちいくよ!つかまえて!」「行動パターンの把握、次を予想。次は右に行くと思わせてそっちは行き止まりだから、左を封鎖して!」


「くっ!?やるじゃねえかガキども!!」と結構楽しんで遊んでしまっていた。


 さすがに子供とはいえ10人に囲まれてはこちらも逃げ切れなくなってくる。

 というかあの司令塔が厄介すぎる…俺の行動を予測すんじゃねえ!

 そして間もなく完全包囲されてしまう。


「ふっやるじゃねえか…俺の負けだ…」と手を上げて降参ポーズをする

「はぁはぁ‥先生何もんだよ…」

「人族のくせに…なかなかやるじゃない…」

「やっと観念したかにゃ…」


 そう俺を囲む獣人の子供たちが各々喋り出す…まだ負けたわけじゃないさ…


 もちろんこれは時間稼ぎである。俺を追い詰めて勝った気でいやがる…もうが日が沈む俺の勝ちだっ!

 ポスっ!っと俺の腰に抱き着かれ…日が沈む…しまっ‥!?


「させません!私たちの勝ちです!」と狐耳の女の子が勝利宣言する。 

「あっもうそんなに時間が…ずるいぞ先生!」

「あっぶねー‥ミーコナイス!」

「負けたな…今日はここまでだ。みんな部屋に戻ろう」

「はーい!」とみんな素直に戻ってくれる。


 というか俺の予想ではこのミーコがここまで計算してた可能性がある。


「先生お願い、聞いてくれるんだよね?」

「計算通りってか?ここまで全部ミーコの作戦だろ?」

「さて?なんのことでしょうか?」と惚けるミーコ

「いいぞ~俺は約束は守る。俺の力を超えない限りは、なんでも叶えてやろう」

「じゃあ…院長先生にもお話したいので…」


 俺とミーコで院長のもとに行くことにした。





「おお、シンだっけね。おつかれ。今日はありがとう」

 

 と部屋に入るなり声をかけられる。


「名前言ってましたっけ?」冒険者としか言ってない気がする。

「あのあとギルドで働いてる娘が来てね…聞いたよ狐族の集落に行きたいって」


 娘だったのか…


「教えてもらえますか?…とそれよりミーコ、話があるんだろ?」

「院長先生!ミーコ、孤児院出てもいいですか!」


 は?まさか?


「ミーコはもう知識は十分だから出てもいいが…いい当てでもあったのかい?」

「うん!私先生についていきたい!」

「ミーコ…それはだめだ」と俺は言う

「ええー!なんでもいいって!」

「何というか…俺はこの世界を延々と旅するから…もう戻ってくれないかもしれないぞ?」

「いいよ!先生と一緒なら楽しそう!」


 むぅ…これはまずい…よし


「ミーコじゃ実力不足だな~俺についてくるなら強くないといけない。賢さはあるけど…俺を守れるくらい強くないとダメだな」

「強く…」

「うん。大きくなって強くなってからだったらいいけどな」

「それじゃあその子を狐族の集落に連れて行ってやれないか?」と院長が提案する。

「なんか意味があるんですか?」

「私は孤児院から動けないからね。その子を集落に連れて帰ってほしいんだ。集落では生きる術を学ぶ。狩りとかもね。だから私は冒険者としてやっていけた」

「まあついでですし…構いません」

「じゃあ頼んだよ。ミーコは準備しておいで」

「うん!」とミーコは部屋を出て行った。


 その後簡単な地図をもらい、狐族の集落があるところを教えてもらう。


「街道を外れて森に入るんだけど…罠がたくさん仕掛けてあるからね。狐族の子がいれば見抜けるとは思うが…注意するんだよ?」


 ミーコは明日の朝迎えに来ると言っておいた。どうせ通り道だし。

 うちの職員になってもいいんだよ?と誘われたがもちろん固辞しておいた。

 庭は具現化を解除して元の状態に直してある。






 割と疲れて宿に帰る。夕食の時間だが…ココがいなかった。

「あれ?どこかで乳繰り合ってるのか?」


 具現化してある物の場所は大体わかる。宿の部屋にいるわけでもなかった。

 

 いやな予感がするな…


 なのでとりあえずココのいる方向に歩いて行った。

お読みいただきありがとうございました。

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