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私の世界にようこそ  作者: てけと
第一幕『イレギュラー』
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生をあきらめる少女

 早速森に入り、ワイルドウルフを討伐しに行く。

 幸いそんなに深くまで戻る必要もなく、町からほどなく歩いたところで出くわした。


「グルルゥ!」


 といつもどおり噛みつかれ…


 ドスッ! 

 

「キュゥ…」 

 

 いつも通り刺し殺す。毛皮をはぎ取るため仰向けに置き、腹部からナイフを入れていく、解体の仕方は詳しくはわからないが、腹部からまっすぐ切り目を入れて剥げばいいだろう。

 


 そう簡単に思ってた時期が、俺にもありました…意外とてこずり、穴だらけになった毛皮を苦笑いで捨てると、犬歯だけ抜いて捨てておくことにした。


 そんな感じで犬歯を抜きつつ5体狩り終わり、町に帰ることにした。まだ日は落ちていないが、元の世界の時間でいえば、15時ぐらいだろうか?

 

 

 帰り道、町の外に広がっている畑で人を見かけた。

 人というか…頭に獣耳がついていたので、あれは獣人だろうか?そういえば町には人種族しかいなかった。まあ人種族の国なのだから当然なのだろうか?

 そう考えながら見ていると、その獣人の少女が、人種族の男に怒鳴られ殴られていた。


「この無駄飯ぐらいがっ!!畑一つの収穫もできないとはっ!!なんのために、お前を買ったと思っているんだ!ほかの奴隷を見習えよ役立たずめっ!」

「す…いま…せ…ん」

「このままじゃ大赤字だっ!!性奴隷にするにも、この町じゃ獣人なんざ抱くやつはいない!!」


 この町では、人種族以外は差別されるようだ。正直どうでもいいが…気にいらんな…


「お前は明日処分する。朝早く森に連れていく。そこで勝手に死ね」


 その獣人族の少女は、特に何の感情も持たず、明日死ぬと宣言されても表情一つ変えないのだ。


 気にいらない…明日死ねる、俺なら安堵の表情をするだろう。逆なら死ぬことに恐怖し泣き叫ぶだろう。何にも感じず意味なく、死ぬことも生きることも何にも感じない。なんだそれは?


 正直嫉妬だ。何簡単に死のうとしてんだ?俺は死ねないのに…死にたくて、もう何もしたくなくて、でも死ねないから死ぬために頑張ってる、という謎な状態の俺を差し置いて、簡単に死のうとしてる、しかも状況に流されて…

 もちろん助けるつもりはないが…簡単に死なせてたまるか…死の絶望と恐怖と生への希望をちょっとだけ教えてやろう。生きる、死ぬという事はどういうことなのか…。

 

「そいつ俺が買ってやろうか?」

 

 その獣人の主人の男に話しかける。


「誰だお前は?まぁどうせ処分する予定だ。買いたいなら構わんが…」

「俺はシン。冒険者見習いといったところか。値段はどんくらいだ?」

「冒険者見習いね、タダでもいいくらいだが、奴隷契約の手続きの手数料で銀貨60枚でどうだ?」

「奴隷契約とかできるのか?」

「これでも奴隷商でな、売れてない奴隷をタダで維持するのももったいないからな。ここで農作業させて維持費を賄ってるのさ」

「なるほどな…」


 それで町の外にこんだけ広大な畑があるわけか…奴隷も維持費がばかにならないというわけか、死なれると大損だしな。


「奴隷にも一時借りるのと身柄自体を買い取るのがあるが…処分前の奴隷だし買い取りでいいな?」

「ああ、もちろんそれでいい」


 俺は金貨一枚手渡す。


「釣りはいらない」

「えらく羽振りがいいんだな。では血を一滴この契約書に垂らしてくれ」


 俺はナイフで親指を浅く切り血を垂らす。


「これで契約は成立したが奴隷に関していろいろ説明はいるか?」

「ああ…一応頼む」


 奴隷契約とは首輪がはめてあり、[命令]の権限を使用すると、奴隷はそれに逆らうと首が閉まっていくようだ。その主人には危害を加えることはできない、主人が死ぬと奴隷も首が締まって死ぬからだ。奴隷解放は契約書を破り捨てれば首輪が取れるらしい。

 要約するとこんな感じだ。


 衝動的な感情で奴隷を手に入れたが、ちょっと後悔している…旅に荷物は持たない主義なのだ。

 まあこの奴隷が生き延びられたらの話である。


「さて…俺はお前を買ったわけだが…お前は生きていたいか?すぐ死にたいか?」

「…ご…しゅ…人様…の…望…む…まま…に…」


 目が死んだままそう答える。さてどうするか…


「ちなみにだが…俺はさっさと死にたい、この世界にも、おれ自身の生にも、すでに興味はない、訳あって死ねないが…」


 こいつが生きたい理由を探って揺さぶることにしようか


「だがお前は違うはずだ。お前には多分親がいる、しかも売られたわけではなく、誘拐されたんじゃないのか?」


 そう言うとわずかだが瞳が揺れる


 根拠は、人種族以外が差別されるこの町で、なぜ獣人種の奴隷がいるのか。ここから西に行くと獣人種の国がある。奴隷に落ちるなんて、食い扶持がなくて身売りするか、犯罪を犯すかだろう。売れるわけのない奴隷を奴隷商が買うわけもなく、ならばどこかで拾って奴隷にしたのではないか?例えば西の方の森とかから…

 穴だらけの推測ではあるが、吹っ掛ける程度の根拠になっているはず?


「お前が頑張れば、国に帰って両親に会えるかもしれんぞ?別に俺は奴隷がほしいわけでもない。お前が何もかもあきらめて、死のうとしてるのが気に食わないだけだったからな」


 そういうと彼女の目に若干の光が灯ったように見えた。


「お…母…さん…お…父…さ…んに会…え…る?」

「お前次第だな」

「生き…た…い…しに…たく…な…い…くにに…かえ…り…た…いっ!」


 意志のある目に戻ったようだ。ふむ…しかし俺は別に偽善者ではない。こいつが死んだところで、俺には関係ないのだ。数ある色んな物語の一つのバットエンドなのだから。


「んじゃあ…ついてこい」


 そういって俺は森に踵を返す。もうすぐ日が落ちる。筆記試験まであと二日ある。それまでどうせ暇だったしな。

 死の恐怖と絶望に、彼女の生きる希望が勝てるのか?もし彼女が生き残れるなら…最後まで面倒は見てやろうとは思う。 


 8割くらいで死ぬとは思うが。

お読みいただき有難うございます。

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