獣人の町
獣人国最初の町が見えてきた。町というか…あれは村だな。
横には不機嫌そうにしているココが座っている。馬車の中にいればいいのに…
御者をやりたがり、手綱を渡した瞬間に馬が止まり、何しても動かなくなったのだ。俺が手綱を握るとまた進んでくれた。なんでだろうな…
村の前には丸い耳を付けた獣人が立っていた。
俺を見るなり。
「人種族の分際で何しにやってきた!」と武器を構える。
なるほど、レイルの町とは逆なわけだ。人種族が差別される村なのか?まあ別に構わないが…
「あ~っと…俺は冒険者のシン、関所の獣人から書状ももらっている」と書状を取り出し、そいつに渡す。
それを見るなり無理やり納得したのか。
「すまない…歓迎しよう。はいってくれ」と言って通してくれた。
尖らせた木を斜めにして村の周りを囲って柵にしてある。家は丸太で作った簡素なものしかない。
とりあえず宿を探したいな…と周りを見ると、俺を見るや否や、隠れたり、ひそひそ話したり、明らかに睨んでくるものもいた。相当嫌われてるようだな…これは…
まず冒険者ギルドに向かうことにした。人の定住しているところには必ずあるのだ。
冒険者ギルドだけは、ちょっと大きめに作られ、丸太ではなく、ちゃんと加工された木材で建てられていた。
ギルドに入ると、中にいるのはすべて獣人だった。受付も獣人であった。
「おう?非力な人種族がなぜこんなとこにいるんだ?」
犬の耳を付けた2メートルくらいの大きさのごっつい男が絡んでくる。
「絡んでくんじゃねえよ…めんどくせぇ…」と無視して受付に向かう。
「おぉ!可愛いお嬢さん…こちらでご飯でもどうですか?」
矛先を変えココがナンパされてるが無視する。
「できれば俺でも泊まれる宿を融通してほしいんだが…」と受付の猫耳の獣人に聞く。
「そうですね…人種族が泊まれるようなところとなりますと…ここより北側の端に、私と同じ猫族の経営している宿がございます。そこに連絡しておきますので、日が暮れたころに訪ねてください」
「助かる…あとこの町のクエストを受けたい、宿のお礼に困ってる塩漬け案件とかでもいいぞ?」
「それはこちらも助かりますが…お連れさんがナンパされてますよ?」
「ここはあいつの国だ…惹かれ合ったのなら止める義理は俺にはない。で?クエストを頼む」
「では…この町はいま食糧難にあります、それはこの村の北側にある湿地帯からリザードが大量発生し、畑を荒らしまわってるのです」
「食糧難が塩漬けってやばくないか?」
「これはもともとこの町の衛兵の仕事ですが…手に負えなくてですね…それに村もそれほど報酬を出せないので…」
「リザードの素材は買い取ってくれるのか?」
「もちろん。それはギルドが買い取らせていただきます」
「んじゃあ受ける。達成条件は?」
「リザードの大量討伐です。夜に畑を荒らされるので、夜に畑を荒らされた形跡が無くなれば達成となります」
「んじゃあすぐ出る。宿の方よろしく頼んだ」
「はい、お任せください」
そして踵を返し冒険者ギルドを出ようとするが…そういえば
「ココ俺はいくけど、どうする?ここでのんびりしと‥」
「いきます!」
「んじゃあいくぞ」
あっ…とでっかい獣人がかなしそうにココを見ていた。
大きな池のようなところに、でっかいワニのような魔物がいた。尻尾は短く、二足歩行でも歩けるようだ。
「しっかしコレどーすっかな…」
沼地というか池だこれ…手で地面を触れてみるとズブズブっっと深みにはまっていく。
「さすがに戦えないよな…」
遠距離から?弓なんて使えないし…槍を投げる?んー?槍を落とすか
俺は手をかざし
「ココ離れてろ…必殺スピアレイン」とやる気なさげに声を出す
空中に数十本の槍を具現化し、空から落とす。
ズドドドドッとと槍の雨が降り…
「ガアアアアァ!」
と当たりそこなった数体のリザードが二足歩行でこちらに走ってくる。
「柔らかい腹をさらして走ってくるとか…殺してくれって言ってるようなもんだよな…」
柔らかい腹に、槍を突き刺す。槍はしっかりと刺さるが…
「捨て身かよ…」
腹に槍を刺されても、そのまま大きな口を開きガブっ!っとくらいついてくる。
鎖骨あたりをバキバキっと骨をかみ砕きながら噛みついてくる、そしてそれに続いて数体も俺の方に噛みつき…
一斉に食われたら俺死ねるんじゃね?とおもうが…
「シン様っ!」
とココが俺に噛みついてるリザードを一匹づつ切り伏せている。
最初に噛みついてきたリザードから、バキバキと鎖骨を折る音が何度もしている。つまり噛まれながらも治ってるのだ…治ってかみ砕かれまた治るのループである。
「はぁ…」ため息をつき刀で頭を突き刺して殺す。
一通り討伐すると、素材をはいでいく。鱗の付いた皮、肉 爪 牙 をばらして大きな布袋に入れる。
沼の中で死んでるのは無視する。
「シン様はもうちょっとご自分を大切にできないのでしょうか…?」
「無理だなぁ…隙あらば死のうとするぞ?」
「私を送り届けてくれるのでは?」
「そうだなぁ…なんか聞くところによると、ココって可愛いとは思ってたけどさ」
「可愛いっ!?」
「でもそれは獣人の感覚でも可愛いらしいからな~ならもしどっかの町でココとほかの獣人が惹かれ合って、愛し合うなら、もう首都行かなくてもいいんじゃないか?とか思ってさ」
「それはないですね」
「は?でも本能で感じるもんなんだろ?獣人って、断言はできないだろ?」
「断言できますね。なのでちゃんと送り届けてください…」
「ココがそういうなら…わかった…」
なんか釈然としない気持ちでギルドに帰るのだった…
「とりあえず一通りは倒しておいたからまた明日の朝確認してくれ」
受付の獣人に報告しておく
「俄かに信じられませんが…わかりました。明日確認のため人員を派遣します」
「頼む。そんでこれを買い取ってくれ」とリザードの素材が入った皮袋を渡す。
「これは…少々お待ちください」そう言って革袋を奥にもっていく猫耳
因みに後ろでまたココはナンパされている。しつこく好意を示されると好きになったりするらしいからな。スト-カーと結婚する女性もいるくらいだし。それくらい人の心はコロコロと変わる。気持ち悪い、から大しゅき!になるくらいに。コロコロかわるからココロというんじゃないか?というのは俺の持論である。
そんなどうでもいいことを考えてると受付の獣人が返ってくる。
「素材の買取金額は金貨2枚になります。それでよろしいですか?」
「ああ‥いいよ」
宿を借りる金とちょっと買い物できる程度でいい。
「ではこちらで…宿の方は言ってありますのでご安心ください」
「助かる。世話になった」
そして宿に向かうことにする。ココも後ろからついてきていて、その後ろで俺を睨む獣人の男が気になった。
宿の馬小屋にミーとカンジを預けて、宿に部屋を取りに行く。ちなみに馬車は消してある。
「部屋を2部屋2泊だけ頼む」
「1部屋で大丈夫です」とココ
「…2部屋で2泊」
「1部屋」
「…ココ…この町であの獣人と一生を過ごすか?」
「2部屋で2泊お願いします…」
「か…かしこまりました…2部屋で2泊ですと銀貨4枚になります」
高い気もするが問題ない。
まだレイルの村の小銭が残っていたのでそれで払う。
宿の食堂で夕食を食べ、ココと別れて部屋に戻る。
宿の固めのベットで寝ころび、今後の方針について考える。
「もしココが実際どっかの町でいい感じに恋に落ちたとして、一応あいつの住んでたとこには行って、娘さんは幸せに暮らしてますよって知らせるか。その時は一筆書いてもらおう。あとは…面倒ごとだな…」
睨んでた獣人を思い出す。はぁ…めんどくせぇ…
若干憂鬱になりながら眠りについた。
いつもお読みいただきありがとうございます。




