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私の世界にようこそ  作者: てけと
第二幕 『イレギュラーは獣人に愛される』 
36/189

獣人国へ

 レイルの町から西に向かい街道を走らせる。


 幌付きの馬車を具現化で作ってある。素材は木に見えるが実は強化プラスティックである。鉄で補強し、車輪も鉄で、スプリングを付けて揺れを軽減させる工夫もしてある。

 この馬車は襲撃されても大丈夫なように、とても頑丈に作ってある。夜は魔物に備えてこの馬車に手を加え、簡単な家を作る。野営とか見張りとかめんどいからである。


 夜は寝るもんだぞ?


 今は馬車を馬に牽かせ、俺が御者をしている。最初はてこずったが、慣れればどうという事はない。手先は器用なのだ。


 ココはレイルの町でのダメージがひどかったようで、まだ寝ている。馬車にベットを出してそこに寝かせている。


「打ち身程度だったらいいんだがな~」


 町で買っておいた薬を塗ってはいるが…素人目では頭部のダメージとかそういうのはわからない。


「次の町まで起きなかったら医者でも探すか…ん?この世界は魔法があるんだっけ?そういう魔法もあるのか?」


 シンは割とのんきに考える。焦ったところで自分にできることは限られている。なら自分にできることを冷静に淡々とこなすだけである。


 



 馬車で走り始めて2日ほど、まだ寝ているココには、干し肉を使ったス―プを定期的に飲ませている。

 俺は夜以外は淡々と馬を走らせていた。



 すると大きな外壁で囲まれた、町というよりは、防衛拠点のような…そんなところにたどり着く。

 すると門の前にいた丸い耳を付けた獣人に声をかけられる。


「ここより向こうは獣人族の国である。人種族が何の用だ?」


 ふつうこっち側は人種族が見張るべきじゃないのか?なんて考えるが割とどうでもいいので。


「冒険者だ。訳あって獣人を保護して、国まで送って行こうかと思ってな…」と身分証を見せる

「ほう…鉄の冒険者か馬車の中を見てもいいか?」

「寝てるから静かにみろよ?」


 そういうと獣人は、馬車の後ろ側についた扉を開け、中を見る。


 レイルの町を出たあたりでココの奴隷契約書は破って捨ててある。つまりもう首輪外れている。


「初めて見るタイプ馬車だな…何というか異様だ…」

「特注だ。詮索はやめてもらおうか…」

「すまない…確認した。そしてお礼を…我が同胞である獣人種を、保護していただき感謝する」

「気にすんな」と手をひらひらさせる。

「この先の町で優遇してもらえるよう、書状をたしなめておこう。少し待ってもらえるか?」

「ありがたい…ここに医者とかいないか?」

「簡単な光魔法を使えるものがいる。呼ばせよう。その間に書状を準備しておく」

「頼んだ」

 

 光魔法?と思うがそれが回復魔法なのだろう。死霊系の敵に効きそうだな…俺もあわよくば死ねるんじゃ?なんて馬鹿なことを考える。


 門を通り抜け、馬車を端に寄せる。するとピンっと伸びた兎耳を付けた獣人の少年がこちらにやってくる


「隊長に言いつけられ来ました!けが人はどこですか!」


 あれ隊長だったのか…まあ書状書くくらいだもんな。


「ああ…馬車に乗ってるから見てやってくれ」


 すると少年は馬車に乗り込み、


「可愛い…」と呟く。


 おい…


「別に発情するのはいいが…そいつが寝てるからって襲うなよ?」

「そそそ…そんなことするわけないじゃないっすか!ちょっと見せてもらいますね…」


 ゴクリっとそんなのどを鳴らす音が聞こえたので…


「おい‥俺が見てほしいのは頭の方だ…体はもう大丈夫だ」そう言って少年の首元に刀の刃を当てる。

「ひぃ…わかりました…」

「まったく…そいつが起きたら好きに告白でも、性交でもしてろ。寝てる間はやめとけ」

「はい!」となぜか目を輝かす少年。

「では…」と額に手を当て呪文を紡ぐ。

「ヒールライト」と魔法名を唱えると手が輝き、ココを照らしていく。

「んー?特に異常なところはないです!近々目が覚めるかと!」

「そうか…助かった」

「いえ!この子のためならお安い御用っす!」


 獣人って惚れやすいのか?



 

 しばらくして隊長がやってくる。


「これが書状になる。町の門番に見せれば融通を利いてくれるだろう」

「助かる」と書状を受け取る

「もう日が暮れるが…ここで一晩過ごしていくか?」

「ありがたい提案だが…兎耳の少年が、こいつになんかしそうで怖いからお断りしとく…」

「すまん…獣人は本能で好きになってしまったら、抑えられる奴は少ないからな…あいつにはよく言っておく…それにそのお嬢ちゃんはかなり可愛いからな…気を付けるんだぞ」

「…はぁ…わかった…世話になったよ…」


 思った以上に厄介な旅になりそうだ。そう思いながら馬車を進め西に向かうことにした。









 獣人国に入ってから5日ほどたった。一つ目の町まであの関所から6日ほどでつくとか言ってたので。

 思ったより早く着きそうだな~とおもいつつ夜寝る準備をする。


 道を外れ、森に入り、馬を馬車から外し、塩と水を与え離してやる。具現化で首にひもを付けてある。位置がわかるようにだ。

 馬車から車輪を消し、地面に馬車を固定する。車輪のあったところに半円の形でできた鉄をはめ込む。


 そして馬車を覆うように、鉄のドームを作り。

 俺はその外のちょっと離れた場所で眠る。見える獲物の方に魔物は寄ってくるので、その為だ。

 いつも通りベットを出し、そこに入って眠るのだった。


 



 ドンドンドンっ!という音で目が覚める。


「んっ?」


 鉄のドームから音がする。朝日が昇るまでもうちょっとあるだろうか?


「ココが起きたのか…それより…」


 周りを見ると猪みたいなのが5体ほどいた。牙で引き裂かれたのか服はズタズタで。ベットからかなり離れていた。


「突き飛ばされたのか…よくそれで俺は起きないな…」


 一度寝るともう起きる間際になるまで起きない…昔からの体質だ。


 ちょっと大ぶりのハンマーを造り出す


「まっすぐ突っ込んでくるなら…」


 ドドドドッとすごい速さでこっちに向かって走ってくる猪っぽい魔物


「オラァァ!」とハンマーを振り下ろす。しかし


「ピギャァ!」と頭を潰された猪が絶命するが、横からも突進してきた猪がいたようで吹き飛ばされる。


「くっそ‥めんどいなこれは…」吹き飛ばされ転がり、木にぶつかって止まる。吹き飛ばされた衝撃で、手から離してしまったハンマーを消し、もう一回具現化する。


 それを3回繰り返し…やっと倒し切る。


「時間がかかりすぎるな…やっかいな…」


 今までは自分の肉を群がって食べるような魔物ばかりだったので楽だったが…ただ敵意をもって俺を食うわけでもなく殺そうとする魔物は初めてだった。


「俺を食いたいわけでもないのに殺そうとすんなよ…まあ今後の課題だな…」

 

 すっかり日が昇ってしまい。鉄のドームの具現化を解除する。


「シン様ぁぁ!!」とココが走って抱き着こうとしてくる。


 俺はそれを避け、倒れないように首根っこを摑まえる。


「おはよう。ねぼすけめ」

「うぅ…あまり心配させないでください…」

「それはこっちのセリフな訳だが…俺が死なないのは知ってるだろ…」

「それでも…心配はしますよ…」

「はいはい、とりあえず飯にするか、肉も手に入ったし」


 むぅ…と納得してない様な顔のココを無視し猪の魔物を一体だけ解体していく。


 さすがに寝起きにドーンと焼き肉はきついと思うので、シチューを作る。

 香辛料は一通りあるのでそれらを調合して、肉の生臭さくらいは消す。


 出来上がったシチューをココに渡し、今の状況を話しておく。


「やっぱりシン様の作る料理はおいしいですね…」

「昔から手先は器用なんだよ…そのおかげで前の世界は食いつないでたしな…」


 これでは胃袋を掴むどころかこちらが…なんてぶつぶつ言っているが…


「今日中に獣人国の町につくが、そこでちょっとクエストをこなしてまた旅の準備を整え首都に向け出発する」

「え?私はどのくらい眠ってたのでしょうか…?」

「一週間ほどかな?いろいろ大変だったぞ。飯食わせたりあとトイレとかな…」

「!?!?」

「気にすんな‥約束は守るって言ってるだろ…」

「いえ…その……何でもないです…」と顔を真っ赤にするココ。

 

 もうお嫁にいけない…とか言ってるが別に何もしていない…


「さすがに体をふいたりとかはできなかったからな、あとでちょっと水浴びするか…」


 別にすべて具現化で作ってるのだ。垂れ流したら具現化を消してもう一回具現化するだけである。


「とりあえず、起きたならなるべく自分のことは自分で守ってもらうぞ」


 そう言ってココ用の刀を具現化して渡しておく。


「お前が寝てる間に、お前を見て、何この子可愛いはぁはぁ好き好き大好き愛してる~、とか言ってた獣人がいたからな。別に好きに乳繰り合えばいいが、首都につくまでは妊娠すんじゃねえぞ?」

 

 そこまでは言っていないが…別に惹かれ合ったなら止める義理はない。


「しません!!まったく…シン様は私をなんだと思ってるんですか…」

「獣人ってそういうもんだと聞いてるからな…まあ俺のことは気にすんな‥従者とかなんなら石ころとでも思っておいてくれ。俺は馬を連れ戻してくるから…」


 そう言って浴槽とお湯を具現化して仕切りを作っておく。


「一週間体を拭けなかったからな、町に入る前に小ぎれいにしとけ」


 と石鹸を放って渡し、馬がいる方向に歩いていく。


「獣人はそういう種族じゃ…ないとは否定しにくいですよね…」


 ココはお風呂に入り。俺は馬を回収しに行く。 


 




 

 馬は近くにいて、草を食んでいた。2頭の馬の手綱をひき馬車に戻る。

 馬車の車輪を戻し、馬を撫でたりブラッシングしたりしてあげる。数日旅をしてると愛着がちょっと湧いてしまう。馬は俺に懐いてくれてるようだし。

 まったく可愛いやつらめ…メスの方をミー、オスの方をカンジと名付けた。俺の元の名前をバラしてつけた。


 ミーは俺に頭を押し付けて撫でろ撫でろと催促してくる。


「ミーあんまり俺に懐くと感じガンジが嫉妬するぞ…ってカンジ、おまえもか‥」


 はははは~と俺は楽しく馬とじゃれていると。風呂に入り終わったであろうココが、後ろに立っていた。


「むーーーー!!なんかシン様が見たことないような笑顔でお馬さんとじゃれてるんですが!」

「お?おわったか?んじゃあ行くか…ミー、カンジ、また頼むな」と2頭を撫でる。


 ブルルッとと返事?されるのを確認して馬車につないでいく。


「私はお馬さんにも勝てないのでしょうか…」と意味不明な事を言っている。

「馬車に乗れよ~出発するぞ」


 そうして俺はココを連れ、獣人国の最東端の町に向かうのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

ココをぞんざいに扱うのはとても心が痛い…でもそれがシンなのです…

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