この世界で生きる
ツバサ視点に戻ります。時間はちょっと戻ります。
シャルとミーシャが誘拐された…?
思考が停止する…まてまてまて!
震える手をギュッと握りしめ、深呼吸する。今は落ち着け…落ち着け…冷静さを欠いたら…多分僕は…
この世界を壊すかもしれない
だから落ち着け…感情を爆発するべきはここではない…そう言い聞かせ…
数分かけこの感情を落ち着かせる…そして
「どういうことですか?詳しくお願いします」とギルド職員のお兄さんに聞く
「実は…ツバサさんに絡んだ冒険者覚えてますか?鉄の冒険者の」
「はい…」あのスキンヘッドの強面だろう。
「あの冒険者の素行を調べていました。すると冒険者見習いをを脅し、金を巻き上げていました。それを発見し、私共は彼のランクを銅に落とし、厳重に注意しました。しかし…最近妙な行動をするようになって…突然私共の監視の目を掻い潜り、消えました」
「きえた…?」
「多分裏の情報屋を雇ったのでしょう…あいつらはそういうの得意ですから…そして先日とある死体が発見されました」
「まだ話が繋がらないのですか…?」
「すいません…その死体は…とある食事屋の亭主さんです。なぜそこの亭主さんが殺されているのか…いつもそこでご飯を食べてる冒険者…つまり…」
「なるほど…ミーシャの行きつけ…か…」
「はい…衛兵の情報によると、東門から人くらいの大きさの荷物を持った二人組が出ていったとの情報も得てます。して…ミーシャさんとシャルさんは今どこにいますか…?」
「まだ帰ってません…見つけた」
「?」
「いえ…こちらの話です。僕は今からすぐ出ます。お兄さんは衛兵さんを集めて後で追ってきてください」
「…わかりました…無理はなさらないように…」
「はは…今無理せずどこで無理するんですか…笑わせないでください」
まったく笑ってない目でギルド職員さんを見る。
すぐ部屋に装備を取りに行く。
「サーニャ、ミーシャとシャルが攫われた。協力してくれ…」と僕は お願いする
「もちろん」
真眼は意識しないと見えない。遠くを見るときは意識ごと飛んでしまう。常時発動型の能力ではない。そこは不便だ…しかしさっき草原に隠れるように移動してる二人が見えた。間違いなかった。
色々考えてしまう…この世界に来てからのトラブルは全部僕を起因にするものだ。
僕が勝手にジャンプしてシャルと出会う、シャルを連れてギルドに行くから絡まれる。スライムの生息地であのスキンヘッドがいるのは知っていたが…まさか…シャルの飛んでる姿を見られてるとは…それにワームも僕のせいで地中から出てきたんだろう…あの光景を見ればわかる。
誰のせいでもない、自分の所為だ、世界のせいではないのだ…そして管理者はそのトラブルに勝つためにこのスキルを…そう言っていた。
力はある…なら僕は立ち向かおう…どんな理不尽にも…これからもしかしたら人も殺すかもしれない。
しかし…それが仲間のためなら…どんな怪物とでも戦おう…
僕は覚悟を決める。この世界で生きるために。
「まずい…ワームに襲われてる…」真眼で定期的にシャルとミーシャを見ている。
「なぜワームに…」
「飛ぶよ。サーニャ僕に抱き着け」
正面にサーニャを抱き左手でで支える。右手は剣を持っている。
サーニャは僕の背中に手を回してぎゅっと抱きしめる
「口は閉じろよ、舌をかむぞ」
助走をつけて、ドンッ!と地面をえぐり、ミーシャ達のもとに飛んでいく。
目に留まらぬ速さでワームに接近し…
「うわあああああぁぁぁっっ!」と恐怖を声を出して押しつぶす。
ザンッ!と体を起こして上から襲い掛かろうとしていたワームを右手に持った剣で通りざま斬りつけ体が断たれ、横に倒れる。
両足で着地し、サーニャに指示を出す。
「サーニャ、向こうにシャルたちを攫った奴が逃げてるから。追いかけて。殺すな。生きて連れてきて」
「わかった」
そういうとサーニャは駆けて行き闇に消えていった
後ろを見ると、ミーシャがシャルに覆いかぶさるようにして庇っている…真眼で見る限りどちらも無事なようだ…
「ありがとうミーシャ…シャルを守ってくれて…僕は覚悟を決めたよ…もう逃げない…」
そうしてワームに対峙する。夜だからか体を全身だしている。どちらも7メートルから10メートルほどだろうか?
僕を敵と認めたようで2体とも僕の方に襲い掛かろうとしている。
正面にいたワームが口を開けて突進してくる。
右に飛びのいて、左足で横に蹴りつける。後ろには守るべき仲間がいるのだ。
ワームは左の方に飛んでいく。そして右側にいたワームが上から襲い掛かってくる。
飛び上がり、右手に持っていたロングソードを、横一線に斬りつける。
ザクッ!と口が上と下に分かれる。その程度では死なないのか、そのまま押しつぶそうとしてくるが、力の限り両手で剣を刃を向けず、横にして振り下ろす。
口があったところが吹き飛び粉々になるが…鉄でできた剣はひん曲がり…使えないと判断し、すぐ捨てる。
真眼を使い左側を見るとワームが地面に潜ろうとしているのが見える。
「逃がすか!」
地面に着地した瞬間すぐ生き残りのワームに向かって駆ける。しかし地面に潜り切ってしまったので…
地面ごと踏み抜く。ドドドドンッ!と踏み続ける。
たまらず地面から湧いて出たワームのどてっぱらを、力の限り右手で殴りつける。
まるで爆発したかのようにパァンッ!と破裂し…ワームは動かなくなった…
ワームの緑色の体液を浴びながら一息つく…
「ふぅ~」と残心する
ワームの体液に酸のような効果があってツバサの服が溶けていっているが…特に気にせずシャルたちの元へ向かう。
「大丈夫?ミーシャ…」
「えぇ…麻痺は治ったんだけど…魔力切れで体がだるいだけよ…」
「シャルは…」
「大丈夫…寝てるだけよ…」
僕はボロボロになった服をビリビリッと破き、足から血が出てるミーシャと頭から血が出てるシャルに巻いていく…
「女の子の体なのに…傷になったら大変だ…」
「あら?ツバサがもらってくれるでしょ?」
「はは…もちろん、ミーシャが良ければね…」
「ご主人様」
「サーニャか、ご苦労さま」
サーニャは気絶させた二人の首をガシッとつかんで引きづって持ってきた。
「ご主人様、殺そうか?」
殺気を出して男どもを殺す提案をするするサーニャ。
きっとこの子は自分はもう経験があるから僕ができないならやるよ?と言いたいのだろう…
「殺すだなんて…そんな生ぬるい事、僕は許さない…」
こいつらは生かしながら、殺す。人生を殺してやればいい。
逃げられないように地面に埋めておく、首だけ出して。
「んじゃあ帰ろっか!サーニャはミーシャをおぶったげて」
僕はシャルをいわゆるお姫さま抱っこし、歩いて町に帰るのだった。
町に戻ると東門の前に衛兵10名とギルド職員のお兄さんがいた。
「ツバサさん!ご無事でしたか!」
「ええ…この通りみんな無事です」
「よかった…衛兵を町の町長に掛け合って呼び集めてもらいまして…管轄が違うし夜という事もありまして時間がかかってしまいました…」
「でも今回の誘拐は、完全に衛兵の領分ですよね。町の中の問題ですし」
「犯人が冒険者かもしれない、というのがめんどくさいところでして…」
「確かに…」
町の中での事件は衛兵の管轄だが…冒険者が事件を起こしているなら…冒険者側の問題なのでは?確かにそうかもしれない…
「とりあえずご相談があります」と僕が相談という名の取引を持ち掛ける
「はい。なんでしょう」
「実はワーム3体を討伐し誘拐犯はとらえておんなじ所に埋めてあります」
「…誘拐した犯人は殺しました?」
「いえ、生かしてあります。そこで…」
「いえ…お待ちください。殺すのはなしにしてもらってもいいでしょうか…」
とお兄さんがニヤリと殺気をはらませた顔になり…
「ちゃんと地獄を見せてあげてくださいよ?」
「ええ…もちろん…ちょうどいい案件があったので…ふふふ…」
「ではお任せします」
「お任せください…そしてこれは報酬です」
と金貨6枚も手渡してくる
「多いですね…」
「誘拐犯が金貨3枚になります。ワームが一体、金貨1枚です」
衛兵への報酬にしようと思っていたものです。っと
「嘘かもしれませんよ?」と僕を信用していいのか?というニュアンスで聞く
「確かにワームを3体倒したのは信じられませんが…そんなすぐわかる嘘はつかないでしょう?この後誘拐犯の確保があるので、後日冒険者ギルドにいらしてください。事の顛末をお話ししますので」
「分かりました。では後日」
「お待ちしております」
そういうと衛兵さんを連れて、東門から出発していった。
宿に戻り、シャルを僕の部屋に寝かせ、ミーシャをミーシャの部屋のベットに寝かせる。
「サーニャ…ミーシャのこと頼む」
「まかせて」
「ツバサは過保護なんだから…」
「ミーシャも僕の大切な人なんだから…おとなしく寝といて…」
「もう…わかったわ…シャルのことお願いね…」
「もちろん」
そして僕は自分の部屋に帰り…ミーシャが目覚めるのを待つことにした…
ここまでお読みいただき感謝です。
次の話で三章終了し、一人目の話になります。




