私の守りたい人達
ミーシャ視点です。
ワームの調査依頼が終わり、私はシャルとともに、街に繰り出すことにした。
シャルに買い物に付き合ってほしいとお願いされたからだ。
シャルはなんていうか…とても無垢でまるで赤ちゃんのように純粋な女の子だ。最初会った時はあんなに小さい子だったのだ…いきなり少女になっていたのには驚いたが…精神的には成長していないのだろう。
私は簡単に他人を信用しない。それで何度も騙されているからだ。騙される方が悪い、そう言われ続けた。
正直に言うと私はツバサを信用していなかったし、むしろ金づるにしてやろうとか思っていたりもした。
でも…あんな簡単に人を信用して、しかも本人を前に騙されてもいいですよ、なんて言われたら…ずるいわよね…さすがに私もそこまで人間は腐っていない。手放しで人を信用しちゃうツバサが、逆に心配になってしまった。
シャルもそんなツバサを見て育ったかのように、純粋に人を信用しちゃう。色で例えるなら真っ白、できれば人の悪意に触れないように生きてほしい…そういう悪意は私が引き受けよう。このパーティーに入ったときそう決意した。
シャルはさっき、ツバサからもらった報酬の銀貨5枚を握りしめ、真剣に品定めしている。
ワーム調査で私はひどいことを言ったと思う。だってあれだけの力があるのだ。ついいろいろ期待してしまう。でも今冷静に考えると…彼はまだなりたてだ、それに私たちは銅の冒険者だ。あの場面で逃げるのは当たり前だ。むしろ逃げ切れたことを感謝するべきだろう…
ダメだな…私は…このままでは彼におんぶにだっこだ。寄生するためにこのパーティーに入ったわけではない…むしろ彼…ツバサとシャルを人の悪意から守ってあげたい…なぜだろう、ツバサとシャルを見てるととても眩しくて…微笑ましくて…昔、私が持っていたものを見るかのように…
「ミーシャ!買い物終わったよ!」
「いいもの買えた?」
「うん!これでツバサが元気になってくれるといいな…」
「ふふふ…シャルになら、なにもらってもツバサは元気になるわよ」
「だといいな~」
ほんと…なんなんだろうなぁ~この気持ちは…人の悪意にさらされ過ぎた私には、眩しすぎる…
「おなかすいたし…いつものやつでも食べに行かない?」
「いくー!いつものはおいしー!」
私とシャルは、いつもの店でいつものメニューを頼む。
そればっかりかよ、って思われるかもしれないが…私はここの食事が好きなのだ。
冒険者になったころの思い出の場所なのだ…
「おじさんいつもの!」
「はいよ」
おじさんいつもは元気よく返事してくれるのに…体調でも悪いのだろうか?
カウンターに食事が置かれ、席にもっていく。
「おいしー!」
そう言ってシャルはもぐもぐと頬張って食べている。かわいいなぁ~もう…
そして私も手を付けるが…
「ん?おじさん味付け替えた…?」
するとシャルがバタンっ!と机に突っ伏した。
「えっ!?」
何事だっ!?と思ってると私も体がマヒしてきて動けなくなる。口も動かない…
「な…ん…で…?」
意識はあるが体が動かない。口動かなくてて喋れなくなる…
誰かに持ち上げられる。そして大きな布袋に入れられた…
荷台に乗せられたのだろうか。ガラガラと車輪が回る音がする。
すると私たちを攫った人の声が聞こえた。
「うまく行ったな!お前の情報のおかげだな!」
「いえいえ、旦那の作戦あってのものですよ。ちゃんと代金はいただきますよ?」
「もちろんだ!これでもあの町で相当駆け出しを搾り取ったからな…金はたんまりある。しかし…あの小僧のせいで…冒険者のランクは下がったがな…忌々しい!!」
「あの駆け出しですか…しかしそのおかげで希少な天人族を手に入れたんでしょ?」
「希少どころじゃないな…伝説だろ?しかしこれは売る気はないぞ?俺の嫁にして孕ませて、天人族を産んだら売ってやる」
「そういう契約ですからね。かまいませんよ。笑いが止まりませんな。どれだけの金になることか!」
「スライムの生息地で小僧もろとも殺そうかと思ったが…俺は運が良かったな!」
はははは!と笑う。
「しかし一緒にいたこの女はどうするのですか?」
「あぁ…このあたりは今ワームが暴れてるらしいからな…そのための餌よ」
「だから麻痺毒にしたのですか…足止めしてもらうために」
「そうだな!すぐ食われたんじゃ足止めにならんからな!天人族は眠ってる間に奴隷になって俺の嫁というわけだ」
「さすがですな。私が懇意にしている奴隷館につきましたら手続させますので…」
「金貨2枚だったな。安い買い物だ」
「ですなぁ~今後もよろしくお願いしますぜ?」
がははははっと薄汚く笑う男どもの会話を聞いて反吐が出ると同時に…
私の所為だ…私があの食事屋に拘らなければ…悔しい…が今は麻痺が解けるのを待つしかない…彼を頼って待つのではない…私にできることを今すべてやるのだ…そして彼女は自分の魔力に集中する…
「出やがったか…」
ドドドドドッっとワームが一体草原を走っている。日が落ちている為、外で活動しているのだろう。
「女捨てて逃げるぞ!」
「へい!」
私は投げ出され、布袋から出される。
「せいぜい引きつけてくれよ!じゃあな!」
まだ麻痺は解けない…落ち着け…体の痺れ…これはつまり神経の伝達能力が狂っているのだ…つまり…痺れ…電気信号を正常に…
「なっ!?」
ドドドドドッ!と男どもの前に2体のワームが現れる。
「3体だと!?にげきれん!」
「ダンナ!命あっての物種です!ここは逃げましょう!」
「くッ…しかし…」
彼の目の前には莫大な金のなる木があるのだ…しかし…
「おしいが…あの小僧の悔しそうな顔を想像するだけで我慢するとしようか!」
そういうと2人はすべてを投げ出して逃げていく。
シャルも投げ出され、転がる。
「シャ…ル…っ!!」
何とか麻痺を解除したが完全ではない…よろよろと立ち上がり、シャルのもとに急ぐ
そしてワームはシャルを飲み込もうとして…
「させない…我が魔力を…糧に…天から轟き我らを…守れっ!!」
「サンダーウォール!!」
空から落雷が落ちるが、地面に落ちず、シャルとミーシャの周りに帯電する。
バチッバチッという音にワームが怯み止まる。
その間にミーシャはシャルのもとにたどり着き覆いかぶさる。
シャルは落とされたときに頭を切ったのか、額から血が流れているが、スヤスヤと眠っている。よほどきつい薬だったのだろうか…
しかしミーシャはまだこの魔法を制御できていない…
「だめか…魔力が持たない…」
魔力をどんどん吸っていく…本来は雷を魔力を使って誘導し、自分たちの周りをまわるように道を作るのだが、彼女はただ雷をそこに帯電させるように魔力でとどめているに過ぎない。
目の前の餌にあきらめることなく、そこに立ち尽くすワーム。
これは…さすがに詰んだかもね…
「ツバサ…ごめんね…シャルを守れないかもしれない…」
そして魔力が尽き…雷は空気に霧散していく、ワームは餌を求めて近づこうとした瞬間。
ぅぁぁぁぁぁああああっ!という声と
ザンっ!…ドオォーンッ!
と音が聞こえ…ワームが一体切り裂かれる。
「サーニャ、向こうにシャルたちを攫った奴が逃げてるから。追いかけて。殺すな。生きて連れてきて」
「わかった」
「ありがとうミーシャ…シャルを守ってくれて…僕は覚悟を決めたよ…もう逃げないっ…」
ツバサの声を聴いて、安心して…ちょっと休むね…と意識を落とした…
いつもお読みいただきありがとうございます。




