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私の世界にようこそ  作者: てけと
第一幕『イレギュラー』
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死にたい少年と死なない体

主人公視点だと姿の描写が書きにくいので…ここで簡単に紹介

御門 慎二(みかどしんじ)18歳 身長は175cm

やせ形の体系で、顔は童顔、髪は茶色がかった黒髪、クセ毛で、短髪よりちょっと長め。 


 サブタイトルを変更しました。

 森の深い場所。ここは樹海といわれる、普通なら人がいるような場所ではない。


 そんなところに……一人の少年がいた。


 ようやく死ねる。

 

 感慨深く少年はそう思った。


 この糞みたいな世界に勝手に生み出され、無意味な生を呪った。

 

 生まれたときからずっと虐待されていた。まだ理性がなく本能でしか生きていなかった、俺は必死で生きるすべを模索し、結果親に必死で媚を売ることにしたのだ。


 必死で笑顔を作り、ゴミを食わされてもおいしいといい、一切泣かず、部屋の隅で息を殺して、存在を消し、必死になんとか生き延びようとしていた。


 世間体があり、学校には行かされていたが、問題など起こせるはずもない、静かに誰ともかかわらず、義務教育が終わるまで、耐えることにしていた。


 中学卒業とともに家出をした、あのクズどもから離れ、やっと自分の人生が始まる。ここからは好きに生きていいんだ!そう思った。


 しかし、その後もいろいろ騙された、世間知らずの中卒なんて、格好の的だったのだろう…もうどうでもいいと思った。自分はそういうものなのだと理解した。

 そして…ある日から、吐血交じりの咳をするようになった。

 生まれてから誰にも必要とされず、そして死の恐怖に震えながら、若くして何もできず、何も成すこともなく死んでいく。



「このクソったれな世界にもし神がいるなら…この悲惨な人生を送った、俺の最初で最後の願いを聞いてくれよ…」



 もう二度と人間には生まれませんように…


 そう言い残し、御門 慎二は18歳でこの世界で死を迎えるのだった。




(えぇ!? ちょっ…ヤバッ!!)



 そんな間抜けな声が聞こえた気がした。













「んっ…?」 


 深い森の中で目が覚める。


「あれ…?俺は死んだはず…だと思うが…」


 そうつぶやき体を起こす。


「胸の苦しみがない…?咳も…え?まさか死ななかったのか?」


 なぜ?疑問が次々と浮かぶ。

 勝手に治る類の病気じゃないのはわかっていた。病院に行ってはいないが、あの咳と吐血は半年前からだった。胸を刺すような痛みは日に日にひどくなり、意識も朦朧としてきたので、誰もいない森で死のうと、最後の力を振り絞って、歩いていたのだ。


「治ってるどころか…今まで受けた傷が全部ない…」


 小さいころから拷問に近い虐待を受けていた。その時のやけどの痕や切り傷、痣がすべて消えているのだ。


「ま…さか…」


 嫌な予感しかしない。神とやらの奇跡なのか…残酷にもまだ生きろというのか…しかし彼はもう生きる気がないのだ。


「自分で自分を殺すのは…嫌なんだけどなぁ…」


 そう思ったのもつかの間、正面のほうから何かが近づいてくるのが見えた。


「なんだあれ…?熊?」


 明らかに巨大な熊っぽいなにかが、彼に近づいてくる。


「熊にしてはでかいな…なんか目が赤く光ってるし」


 しかし彼はどうでもよかった。生きる気がないというのは恐怖もないのだ。自殺しなくていいのは手間が省ける、とかそう考えている。

 その熊は彼の生きていた世界では異常だった。3メートルほどの大きさで目が赤く光り、毛の色が灰色をしているのだ。


 そして彼は立ち上がる


「できれば即死がいいなぁ…」


 そう言いながら彼は熊っぽい何かに近づいていき…


 バキッ!!


 熊っぽいなにかが、右前脚を彼の頭に叩き込んだ。6メートルくらい吹き飛び、木にたたきつけられる。

 普通の人間なら、即死どころか首だけ飛んでいくほどの威力である。しかし…


「…?」


 彼は何事もなかったかのように、また熊っぽいものに近づいていく。

 熊(仮)も疑問に思ったのか、また近づいてくる彼に今度は…


 ザクッ!


 胸元めがけて、40㎝ほどあろうかという爪を突き立てる。爪は骨を断ち、貫通し、そのまま持ち上げられ、首に噛みついたと思うと、首を噛み千切られる…血が噴き出る。しかし…


「ここまでされてなんで…俺死なないんだ…?」


 彼はなぜか普通に意識を保ち、冷静に考える。


(痛覚に関しては…幼少期の虐待のせいでほぼ感じなくなっているが、さすがにこれだけ血を失えば意識がなくなって死ぬと思うが…)


 ふと噛みちぎられた首に触れてみると…


「治ってる…?」


 右の頸動脈ごと噛み千切られたはずの首が元に戻ってるのだ。


「幻覚…じゃないよな?実際まだ胸に爪が刺さって…」


 ガブッッ!ガブッ!


 熊(仮)はそんなこと関係なく自分の手ごと、首を噛み千切ってくる。しかし噛み千切られたそばから治っていくのだ。


「……とりあえず…離れろ!」


 思いっきり右足で突き放すように前蹴りする。いきなり蹴られた為、熊が少し後退する。その反動で爪も抜けた。そしてすぐ胸の傷も治ってしまう。


「なんだこれ…?」


 彼は疑問だらけで混乱しているが、とりあえず単純に、一つの答えを出した


「お前が俺を殺せないなら用はないな…」そう呟く。


(しかし逃げきれる自信もない、殺そうにもこちらは手ぶらだし、素手で倒せるような格闘技術を使えるわけでもない。猟銃…は持ってても使い方がわからんし…せめて剣でもあればなぁ・・)


 そう冷静に考えてる間にも熊(仮)はこちらに向かって近づいてくる。


(日本で剣といえば刀か…そういえばよく刀持って脅しに来てたよな~あのクズどもは)


 元の世界で脅威に感じた武器を思い出す…割とのんきに…


(確か刃渡りは90㎝ほどで柄が・・・)


 細かく、具体的に、武器を想像していると…


「なんだこれ?…刀?」


 右手に今想像した通りの刀が握られていた。よくわからないが武器が手にあるのなら…


「邪魔だから死んどけ!」


 右手に持った刀を両手で握り、熊の胴体に向けて横に切るように、斬りつけるというより殴りつけるように、振りぬこうとするが…


 ガギッン!


「ガアァ!」


 熊(仮)の毛は思ったより硬く、刀は弾かれる。そもそも素人が刀を振り回したところで本来の切れ味を発揮できるはずもないのだ。


「かってぇな!」


 そして熊(仮)にのしかかられまた首元を噛み千切られ続ける。


「俺を殺せないなら…邪魔だ!さっさと死ね!」


 そういい彼は刀を両手で握り、突き刺すように振り下ろす。熊(仮)を突き抜け自分まで突き刺しながら


「グガァ!?」


 何度も何度も何度も何度も。


 そして20回ほど突き刺したところで熊(仮)は息絶える。


「ハァ…ハァ…」


 刀は手放すと光に包まれて消えていった…


「いったいどうなってるんだ…」






 そして彼は疑問をひとつづつ解消するために試行錯誤する。


1 自分は簡単には死ねないようだ。傷ついてもすぐに元に戻る。血は出るので精神体とかそういうのではないようだ。


2 自分が想像したものを具現化することができる。それが実際にないものでも具現化できるようだが、生物は具現化できない。イメージに反映されるようで無駄に光る鉄の棒とかも作れた。


 簡単に試した程度なので、まだいろいろとありそうだが…めんどくさいので放置することにした


「認めたくないけど…これ異世界転生ってやつっぽいよなぁ…安らかに死にたかっただけなのに…」


 死を願い、来世も人に転生したくなかった少年は…何の因果か死ねない体を持ってしまった。


 そしてとりあえず一つ目標を立てる。


「自殺もできないし、死ぬ方法を探すか」


 死ぬために前向きになるという、よくわからない感じで、方角もわからず、適当に森を歩きだすのであった。

お読みいただき有難うございます。

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