責任と…
さて…私は馬車の中で、夜、寝る間も惜しんでメイド服作りに没頭している。
ルイさんとルルさんに、ばれないようにこっそりと…ばれるとどっちかが添い寝してくるので作業できないのだ…いや…添い寝ももちろんいいものなんだけどねっ!
いろいろと隠すために私は魔法を作ってある。
私のスキル魔法創造に関して、いろいろ試している。要はこの世界の概念やイメージを超越して、私が使用用途をイメージして魔法名を付ければ作れるのだ。
曖昧なイメージではできないので、かなり集中力がいるのと…使う魔力量が尋常ではないので、私以外は使えないだろう。
契約の魔法もかなり魔力をつかった。二人同時に使ったのでそれはもう疲れた…魔力は一日で全回復するようで、次の日にはぴんぴんしてたけど…
契約の魔法以外に私が造った魔法は二つ、1つは圧縮である。周りの空間ごと圧縮して小さくする。
そして作ったのが、圧縮の魔法を付与した箱だ。私のポケットに入っている。この箱に私が魔力を流すと1メートル四方ほどの箱になり、もう一回魔力を流すとポケットに入るサイズになる。
質量保存の法則はどこ行った?と思うかもしれないがイメージとしては箱の中は亜空間になっており、その媒体である箱を圧縮で小さくしている。箱という媒体があるおかげで亜空間の範囲を指定できるのだ。
空間に穴をあけて直接放り込むとどこに行ったか分からなくなるのだ…試しにあとで食べようと思っていたおやつを入れておいたけど、取り出せなかった…空間が広すぎて…手が届かなかった。
そうして、メイド服をイメージ通りに紡ぎ…大体完成には近づいてきた…
あと3日ほどで目的地に着くそうなので、それまでには完成が見えてきたのだった。
「マオ様?まさかまた寝てないのですか?」
ギクッ!
箱に作りかけのメイド服をすぐ入れ、箱を圧縮しポッケに入れる。
「いやぁ~よく寝たなぁ~おはようルイさん!」
「…目の下にクマができてますよ…」
「…てへっ」
「今夜はルルと一緒に寝てもらいますからね…」
「は~い」
日が昇ってる間に馬車で移動しながら、これから向かう拠点の情報や、周りの町の情報、地形、生活形態などいろいろ勉強しているのだ。
これから私の管轄になる町なので、いろいろと知っておかなければならない。最低限ちゃんと町を維持できる程度には、権力には多大な義務が生じるとかで。
これらの情報は中継地点だった町でルルさんが調達してきたそうだ。
まあ国を統べるよりは町一個で済んで幸いだったのかもしれない…町一個でこれだよ?国とか絶対できる気がしない…
特に面倒なのは冒険者ギルドだ…町の発展には欠かせないし…いろいろ向こうで挨拶とかしないといけないらしい。
というわけで私の快適な魔法研究ライフを得るために努力は惜しまないのだ。がんばろう…
もちろんルイさんとルルさんもあきらめるつもりはない…
そして夜になり、ルルさんに抱き着いて眠る…今日はメイド服はあきらめよう…
心地よいぬくもりに、睡魔が襲って来て…意識が落ちようとした瞬間…
ドォーーッン!!!
そんな爆発音が馬車の外から聞こえる。
「なになに!?」
私はすぐさま飛び起きる。
「マオ様。ちょっと見てくるね!」
そういいルルさんは馬車から飛び降りていく。
「チッ!今のを防ぐかよ…さすが氷炎の魔女だな…」
「ルイ姉!」
「おうおう。光獣の魔女もお出ましか。」
「貴方たちはいったい…」
ルイは額から血を流し、息も荒い。
「クエストだよ。魔女を統べる王様?魔女王ってのを討伐しろってな」
そこには金の冒険者タグをつけた男がいた。白色のローブを羽織り身長は170くらいで、声からして30~40代くらいだろうか?ひげが喉仏まで伸びておりザ、これぞ魔法使いという感じだった。
銀のタグをつけたものが6人いた。こちらは黒のローブで統一されている…
「そんなことしたら…魔人国が黙ってませんよっ…」
「その魔人国の貴族様からの裏クエストさ。大丈夫だ、お前らの死体は魔物に食われて全部きれいになくなる予定だからな!」
「予想はしてましたが…ここまで戦力を投入しますか…」
ルイとルルは戦闘能力なら、金の冒険者に引けを取らないだろう。しかしあまりにも多勢に無勢だった。
そして奇襲の魔法を防御し、魔力を防御で使いすぎた。
この一帯を爆発させる火魔法を耐えるため。馬車を守るのにほとんど力を回し自分には薄い水の膜をまとうのが精いっぱいであった。
「魔女王を差し出せばお前らの命は助けてやらんでもないが…その気はないようだな?」
ルイはルルに目配せする。ルルはその意図をわかってしまうが…
「お姉ちゃん…」
「分かってルル…これしかないでしょ?」
こぼれそうになる涙をこらえ、ルルはうなずく。
「簡単に逃げられるとは思うなよ~!フレアエクスプロージョン!」
「アクアウォール!!」
ドドォーーーン!!と大爆発が起きる
ルイの出した水の壁に当たり水蒸気によって霧が生み出される。
「マオ様。しつれーするね…」
そういいルルはマオを抱える。
そして…
「ルルさん!?」
一目散に走り出す。これは逃げるしかない。ルイたちだけの戦闘なら正面切って戦うのもありだろう。しかしこれは護衛戦なのだ。対象を奪われたら負けなのである…
「おい!ここはいいからお前ら向こうを追え!」
「おう!」
そういって馬で駆けていく銀の冒険者。
「さて…氷炎よ…貴様なぜ氷を使わんのだ?なめてるのか?」
「ふっ…最初の…防御でほぼ魔力を使ってね…」
「あれも氷を出せば無傷で受けれただろ?」
「さあ…しかし私を魔法だけの脆弱な魔術師だと思ってもらっては困りますね」
ルイは息を整え、戦闘態勢に入る。ルルの全速力に馬如きがかなうわけがない。安心してこいつの相手をしよう。
「魔法を使えない雑魚に負けるほど俺の魔術は甘くないぞ!!」
ルイは片手剣を右手に持ち、まっすぐ突っ込む魔法が使えないなら接近するしかないのだ…それを易々と許すはずもなく…
「ファイヤウォール!」
目の前に火の壁が迫ってくる。
「ウォータシェル」
自分の体に薄い水の膜を張り巡らせそのまま突っ込む。
「とった!!」
ルイは切り伏せる袈裟斬りに…しかし…
「まさかっ!?」
切り伏せたのは幻影だった。そう元々本体はこの場に出ていなかったのだ…
「ウィンドウアロー」
声と共に、風の矢が飛んでくる。攻撃の後で、体勢が崩れていて避けれず…
「くっ!」
肩を貫かれ…ルイは片膝をつく…
(ここまでか…しかし契約の効果はすごいな…マオ様…こんな不安になるとは…マオ様…どうかご無事で…)
ルルは走る、絶対追いつかれるわけには行かない。ルイ姉から聞いていた、マオ様は争い事が嫌いなのだ。だから私たちがそれを担おうと。それ故に警戒はしていたが…
「金が出てくるとは…」
金の冒険者にこんなクエストを頼むのに、どれだけの資金が必要か、さすがにそこまで露骨に殺しに来るとは思っていなかった。
「…る…さ…ん!!!」
マオ様が何か言ってるが止まるわけにはいかない。
スゥッっとマオは息を吸い…
「ルルさん!!これは命令だよ!!!止まって!!!!」
「!?」
体が止まってしまう…駄目だ!だめなのに!マオ様を死なせるわけにはいかない! そしてマオ様が私から降りる。
「マオ様!やめてください!ルイ姉が金を止めてる間に逃げないと!ルイ姉の命が…無駄になってしまうよ!!」
私の頬には涙が流れる。私だってルイ姉を死なせたくない!でも…決めていたのだ。そういう時がもし来たら、ルイ姉が敵を命を懸けて止める。私はマオ様を連れて逃げて、王都まで戻る。マオ様には幸せに生きてほしいのだ…できれば争いなんかしらず、その天真爛漫な性格のまま楽しく…
できればその横に私たちも付添えれば、どれだけ幸せな事だろうか…でも…
しかしマオ様は決意を込めた瞳で私を見る。
「ルルさん…ありがとう…争いが苦手な私のために、いろいろとルイさんと決めてたのは知ってるよ?」
「だったらっ!!」
「でも…ルイさんとルルさんの命をもらってまで私は生きたくない」
「でももうどうにもならないよ…私たちは…マオ様のために生きるって決めたから!だからマオ様…お願いだから…マオ様は生きて…」
「争いは確かに嫌いだし苦手だよ…でもだからって…なんも考えてなかったわけじゃないんだ」
「え…?」
「すべては守れないかもしれないけど、大切な人と手に届く範囲の人くらいは守りたいんだ…だから!」
そしてマオは、初めてこの世界で戦闘する。
明確な意志をもって…
「私に協力して?ルイさんを助けに行くよ!」
お願いだよ?っとルルの手を取る…
ルルの目に…もう涙はなかった…
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