星野商会創立
ようやく店の体裁が整い、とうとう明日開店することにした。
準備期間中にちょくちょく遊びに来るようになった、レイネちゃんとクルルに協力をお願いし、いろいろ試作した。
売る物は大まかに三種類。ジャンクフード、雑貨、生活刃物。
ジャンクフードはハンバーガー。鉱山に入る冒険者をターゲット層に作った。サッと食べられてお腹もそこそこふくれる。
包み紙の代わりに、大きな葉っぱで包んである。これがちょっと苦労した。葉っぱの青臭い香りがハンバーガーについてしまうのが気になってしまって、葉の匂いを消すためにかなり試行錯誤したのだ。
レイネちゃんとクルルはそんなに気にならないと言っていたが、そういう細かいところまで気を使って初めてプロの仕事と言えるだろう。
甘味とかもいろいろ作っていたが、レイネちゃんとクルルが食べつくしてしまった・・・。あんなに目を輝かせながら可愛くお願いされると俺も弱い・・・。また行商人から買わないとなぁ・・・。
次に生活雑貨だ。石鹸やコンディショナー。ぬいぐるみや髪留めなどなど。あんまり置く場所がかさばらないので、店頭に飾って置ける。
レイネちゃんには大きなクマのぬいぐるみ。クルルには黒い髪留めをプレゼントしたら喜ばれたので、きっと売れるはず。
最後に生活刃物。ハサミ、包丁、カミソリなどなど。一般用からプロ仕様まで取り揃えてある。プロ仕様は自分で打ったものだが、一般用の安いのはレイネちゃんのお父さんが打ったものだ。まだ作りが荒いため、プロが使うにはちょっとな・・・。
作ったハサミでレイネちゃんとクルルの髪を少し整えてあげたら喜んでいたので、今後散髪屋さんとかを営む人も出るだろう。
レイネちゃんとクルルを広告塔として利用し、宣伝をしてもらっていた。なにせ可愛いあの二人が宣伝しているのだ。宣伝効果はかなり高いだろう。
正直もうすでに持っていた金はほとんどない。もし売れなければほぼ無一文だ。気合を入れて売り込もう!
「おいこっちはハンバーガー3つくれ!」「こっちは10個だ!」「待ちなさい!レディーファーストでしょ!二つ頂戴!」
「はい!少々お待ちを!・・・お姉さんが二つね。こっちのお兄さんが三つ。そこのダンディーなお兄さんが10個ね!」
熱した鉄板で肉を焼きつつ、バンズに焼きあがった肉と野菜、ソースをかけ、てきぱきと葉っぱに包んでいく。
肉が焼けるたびに売れていく。忙しい!
「お姉さんが銀貨一枚。お兄さんが銀貨一枚に銅貨50枚。ダンディーなお兄さんは銀貨5枚だね!」
カウンターに乗せられるお金を流し目で確認し、おつりを用意してさっと会計を終らせる。
そんな感じで朝は大忙しでひたすらに肉を焼き、ハンバーガーを作り続けた。
「うぅ・・・人雇わないときつい・・・」
昼前になるとさすがに客足は途絶え、鉄板などを洗い、片づける。
「人を雇う金もないからなぁ・・・当分はこんな感じか・・・」
昼飯にハンバーガーをもそもそと食べ、カウンターに戻る。
店内に子連れの女性がいて、お子さんがぬいぐるみを指さして駄々をこねていた。
「あ・・・店員さん?実は包丁が欲しくって・・でもどれがいいのかわかなくってね・・・」
「ママ!これ欲しい!買って買って買って!!」
「可愛いお子さんですね。そうですね・・・一般家庭用でしたら、こちらの包丁をお勧めしますよ」
レイネちゃんのお父さんが打った安い包丁だ。とはいえ一般家庭用にしては十分すぎる。
「あら?お安いのね。これだったら・・・そのぬいぐるみももらおうかしら」
「ありがとうございます!少しおまけしておきますね・・・」
「あら?いいの?」
「はい。このぬいぐるみ大事にしてね」
そう言って少し大きな犬のぬいぐるみをお子さんに手渡す。
「うん!ありがとう!」
そう言ってぬいぐるみをギューッと抱きしめる女の子。可愛いなぁ。
その後客はまばらだったが、初日の売り上げとしては上々だと言えるだろう。
予定通り3日店を開けて、一日休みにする。店を休みにする一日で、仕込みを一気にやってしまう。
イベントリがあるので作り溜めしておいても物は腐らないから便利だ。
こうして俺の星野商店の滑り出しは上々と言える結果になった。
毎朝怒涛の忙しさを何とか一人でこなし、雑貨、刃物の売れ行きも上々。お金がある程度貯まってきた。
鉱石や食材などは定期的にジェシーが売りにくる。なので基本店から出ることがない。
しかし・・・そろそろ雑貨と刃物の在庫が切れそうだ。思っている以上に売れており、一般用の包丁は外注なのでいいのだが、雑貨の方の製作が追い付かない・・・。
「やっぱり人を雇わないとな・・・ひとまず二人ほどか」
販売員が二人いれば、俺は製作の方に集中できるしな。
「と言うわけでいい人材がいないか?出来れば商人の職を持ってる人がいいが・・・最悪四則計算ができる人物なら誰でもいいけど」
いつも通り材料を売りに来たジェシーに相談する。商業ギルドは人材を手配したりもする。
「そうですね・・・最近はいろんな人がこの町に来るようになりまして、町が活性化しているおかげで忙しいんです。なので商業ギルドから人を回すのは厳しいかと・・・」
「まじかー・・・ダメもとで募集しといてくんない?最悪数日店を閉めることも検討するかな」
「奴隷を買うとかはどうです?維持費と初期費用はかかりますが、長い目で見ると安く済むかと」
「うーん・・・それはもうちょっと稼いだら考える」
ゆくゆくはいろんな店を経営していくことになるだろう。その時に店を任せることのできる人が何人も必要になる。信用できる人物が・・・。
それを奴隷に任せるという手もありだろう。まだ先の話だろうけどな。
「とりあえず商業ギルドから募集かけておいてくれよ」
「わかりました。条件はどうしましょう?」
「んー・・・販売員として募集。賃金は一日銀貨10枚。人数は2人。こんなとこかな?」
「わかりました。面接はどうします?こっちでやりますか?」
「おう。頼む」
ジェシー、もとい商業ギルドに人材の件を丸投げし、俺はまた忙しい日々に戻っていった。




