転生と今後の目的
ふと意識が戻ると、暗がりの路地裏に立っていることに気付く。油と鉄の匂いが鼻につく。
「ん・・・転生っていうから赤ん坊スタートかと思ったけど・・・」
多分16歳のころの俺だ。体の感覚的なものだが・・・。
「ステータス」
LWの世界だと言っていたので、ボソッとそう唱える。すると視界右下の方にステータス画面が表示される。
ホシノ セイ /種族 ハイヒューマン /性別 男性
職業 ???
レベル 1
HP 120/120
MP 80/80
STR 17
VIT 10
AGI 15
INT 35
MND 20
≪ユニークスキル≫【多芸多才】
≪スキル≫【鍛冶師3】【大工5】【料理人3】【陶芸2】【服飾3】【家具3】
まんま初期ステータス。ハイヒューマンもLW時代の種族のまんまだ。職業が???になってるのが気にかかるが・・・。職業がスキル欄に載っている・・・後ろの数字はスキルレベルだな。
【多芸多才】・・・職業に縛られない。数多ある技能を納めるに足る才を持つ。
そう言えば前世でいろいろやったな・・・。試しに鍛冶師を注視する。
【鍛冶師3】・・・使用可能スキル【解析(鍛)】【武器制作2】【防具制作】【武装強化】
うへぇ・・・チートかよ。つまりいろんな職業を取りつつ、レベルアップ時のポイントでスキルも強化できるってわけか?レベルが上がってみないとわからないが・・・。
イベントリには何故かジュンから貰った刀、桜花と紅桜。お金は10金。
「しかし・・・この油と鉄の匂い・・・まさかとは思うが・・・」
裏路地を歩き、表通りにでる。やはりここは・・・。
町は活気にあふれ喧騒が絶えない。そして歩く人々はドワーフ8割とあと二割がヒューマンとビースト。
上を見上げても空はなく、ここが洞窟、もしくは地下だとわかる。
乱立する店はほとんどが武器、防具店。
「まじか・・・ジンスピット帝国でも辺境と言われるガルス山脈の中にある町じゃねえか!」
「お・・おう。どうした兄ちゃん。いきなり叫んで・・・」
「あ・・すいません」
驚かせてしまった男性に謝り、人だかりに紛れ歩きはじめる。
ここの山は鉱石が豊富で、腕利きの鍛冶師がよく住み着いていた場所で、鍛冶師にとっては天国のような場所だ。
しかしこの山は・・・敵のレベルが40~50。俺のレベルは1。
初手で積んだんですが・・・。
平原での街道はモンスターが出ることがなく、PVPだけに注意すればいいんだが、この町はワールドダンジョンともいわれ、魔物が湧きまくる山脈を越えて、ようやくたどり着く場所なのだ。
おかしいなぁ~。最初はスライムとかバッサバッサ倒しておれーつえーするんじゃないの?
と嘆いてばかりいられない。ゲームの世界なら、クソゲームリゲーと叫びつつ電源を落とせるが、そうではないのなら何とか今後生活していかなければならない。
幸い生産系のスキルは持ってるし、生産でレベルをあげつつ、金を稼ぎつつ、凜を探すしかないのだろう。
ひとまず宿をとって落ち着こう。今後の方針とかを固めるために町を散策しよう。
山の中にある小さな町を、隅々まで歩くのにそう時間はかからなかった。正直言うとほぼLWの時と変わらない。主な店は武具防具店と酒場。あとは冒険者ギルドと商業ギルドがあったくらいか。
一泊銀貨3枚の宿屋を借りた。そして今後の方針について考える。
まず目標。凛を見つけて会いに行く。これが最終目標だ。
そして手段。まず冒険者となって世界を放浪する。現在持っている情報はリンと言う名前しかない。種族も容姿もわからない。ただ、ステータス画面を見る限り、碓氷 凛という名前はこの世界に一人しかいないはず。
その為にはレベル上げが必要だ。しかしレベル1でレベル40代のモンスターを倒すとか、普通のプレイヤーには無理だ。ジュンレベルのプレイヤースキルを持ってる奴ならやりかねないが、いかんせん俺は普通のプレイヤーだ。
その為冒険者の線は初手で潰れてしまった。ならばどうするか。
ここで逆転の発想だ。俺が見つけるのではなく、凜に見つけてもらえばいい。
どうやって?俺が有名になればいい。この世界に名を響かせる。戦闘は無しで。
ならば俺は商売を始めよう。この世界で最大の商店を作ろう。幸いその力は俺の中にある。知識もある。
明日はそのための第一歩である。最速で駆け上がってやる!
次の日俺は、『なんでも屋。何でもやりますお気軽に』という旗を背中に背負い、町を練り歩く。
「戦闘以外ならなんでもやりますよー!人手が足りない所の助けになれます!」
そう声をあげながら練り歩く。今は何もない状態だ。
必要なものは、元手になるお金、信用、拠点、人材。あとはついでにレベル上げをして、戦闘できるようにもしたい。LW時代にはPVPと言う名の略奪は許可されていたし、身を守る術は必要だろう。
その為の第一歩が、何でも屋だ。元手がなくても金を稼げて、尚且つ生産による経験値もゲット。
生産チートでイージーモード。待ってろよ凜!すぐにこんな町出て、迎えに行くからな!
なんて思ってた時期もありました。
「これが今日の賃金だ」
そう言われて渡されたのが銀貨5枚。一日中鉱石の運搬。賃金は一日に必要な生活費のみ。
違うそうじゃない。鍛冶屋とかで働きたかったのに・・・。なんでこんな目に・・・。
翌日、作戦を変更する。身銭を切り、炉を借りることにした。素材も買い、刃物を打つことにした。
鉄鉱石を製錬するには錬金術が必要だ。元の世界の技術でもできない事はないが、コストを考えれば買ったほうが安い。
ここの親方に頼み込んで、もろもろ込み一週間金貨2枚で承諾してもらった。ひとまず一週間はここで制作をして、元を取らなければならない。
「LWでは投げナイフくらいしか作ったことなかったけど・・・」
元の世界の知識、それにこの世界のスキルを用いて・・・作ってやるぜ!
包丁をな!
カーン!カーン!と槌が鋼を叩く音がする。スキルによって、鉄を打つ力加減とか、叩く場所とかが補助されている気がする。
元の世界の三分の一ほどの時間で、一本打ち終わる。あとは研いで鑑定にかけるだけだ。
出刃包丁:耐久度B 切れ味B 強化期待値0
魚料理に欠かせない包丁である。野菜を切るには適さない。
「一応ちゃんとできてるみたいだな・・・よし!まずは俺の料理道具を揃えて、売るのは万能包丁と解体ナイフだな」
まずは三徳包丁、刺し身包丁、ペティナイフ、柳葉を作り、それらを収納できるように皮で包丁カバンを作る。
「これでいっぱしの料理人の仕事はできるだろう。次は売りに出す商品を作って、時間があればノミとか作りたいけどな・・・」
仕事道具は早めに揃えないといけない。今後も他の場所で炉を借りる予定だし、ひとまずは売り物を作ろう。
それから約束の日までひたすら包丁とナイフを作り続けた。一日3時間ほどだけ睡眠をとり、一心不乱に槌を振るい続けたのだった。




