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私の世界にようこそ  作者: てけと
最強ちゃんのパワーレベリング
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ミナ視点

 奴隷とは物である。心と魂を持った、人の形をした物である。

 それを扱うのは人。働かせるにしても、人であるからにして維持費もかかる。よっぽど人手が足りないか、危険な仕事以外で扱うには、少々お高い買い物になるだろう。

 ならばその一般的な使い道は?性奴隷、娼館での人員補充、運が良ければ嫁や養子、悪ければ人体実験用とかその辺でしょう。


 奴隷に落ちた時点で、心を閉ざし、人形のように生きるのが正解だと思う。そうすれば辛い事にも耐えれるし、死ぬのも怖くない。


「また考え事っすか?ミナ」


 ボーっと一点を見つめて考え事をしてしまうのは、昔からの癖だ。

 ずっと買われずに、この地獄に共にいるジーナに声をかけられ、ふと我に返る。


「ええ・・・。いつここから抜け出せるんでしょうね・・・。覚悟はとっくできているというのに・・・」

「まあ耐えるしかないっすよ。少しでも待遇をよくするためにも、まだ心を殺すわけにはいかないっすからね」


 私とジーナはまだ諦めていなかった。奴隷から成りあがる。主人が奴隷に愛着を持てば、待遇は良くなるだろう。何年かかるかはわからないが、主人を篭絡し、奴隷を抜け出し、成りあがって見せる。あの家を見返すくらいに・・・。

 その為なら女という武器でさえ、完璧に扱ってみせる。

 

 ガチャっと地上への扉が開く。奴隷は基本地下の牢屋に入れられている。

 そしていつも聞いている男の声が地下に響く。


「レベル1の女」


 今回の客の要望だ。それに当てはまる奴隷が前に出る。逆らったら容赦のない暴力を振るわれる。おとなしく従うしかない。

 私、ジーナ、エルフの女性と、抱きしめられているビーストの少女が、一番出口に近いという理由で首輪をつけられる。

 目隠しをされ、鎖が繋がれる。


 あぁ・・・今回は買われますように。毎回神様に、心の中で祈る。







「三人って言うたん聞こえへんかったんか?」

「・・・選べばいい。気に入らなかったらまだ奥にいる」



 買い手はどうやら女性のようだった。女性を篭絡する方法なんて・・・。もし買われたら計画が・・・。


「わ・・私を買うなら・・・この子もどうか一緒にお願いします!!」


 あ~。あのエルフの女性ですね・・・。勝手に喋って・・・あとで折檻でしょうね・・・。買われれば良いのですが・・・。











 結果から言うと、その場にいた4人を買ったご主人様。どこかの貴族?それにしてはかなり値切っていましたし、人体実験用?同性の性奴隷・・・たまにあるみたいですが・・・。


 ポーションを飲まされ、ズキズキと痛んでいた背中の鞭の痕も消え、お腹の青あざも消える。着替え用の衣服を買っていただき、お風呂まで入れてもらい、久々に人間らしい食事もさせてもらった。

 奴隷商にいたころは、体を拭くことすらできませんでしたし、食事も一日一回、かびたパンとかでしたし・・・。


「せや。この5人でダンジョン行くで~」


 食事を終えると、どこか嬉しそうにそう言うご主人様。

 ダンジョン・・・一生関わる事のない場所だと思っていましたが・・・肉壁にでもするのでしょうか・・・。

 私はもちろん、買われたほかの三人も恐怖で手が震えていました。


 しかし私たちは奴隷。人ではなく物。反対できるはずなどありません。いわば動く盾を4つ買ったという事なのでしょうか・・・。 

 逃げたところで奴隷紋を刻まれた奴隷に、生きる道はない。捕まって処分されるだけだろう。奴隷紋は消せないので、再び奴隷として売れない。なので逃亡奴隷は即処分になる。


「あのご主人様・・・せめてラクだけは助けていただけないでしょうかっ!その分私が頑張りますので・・・」

「ふぇ?」


 ダンジョンの入り口に到着するなり、ツァリーは嘆願する。


「私は身売りした身。なのでどう扱われようが覚悟はできています。ですがっ!この子は喋れないというだけで売られた可哀想な子なんです!どうかご慈悲を・・・」


 涙ながらにそう言うツァリー。どうか・・どうか・・・と頭を地面にこすりつけるようにしてお願いする。


「ちょ・・・頭上げぇ!何を勘違いしとるんか知らんけど、誰も死なす気はない」

「でも・・・レベル1の私達なんて、肉壁程度しか役に・・・」

「戦闘はワイ一人で十分や。4人はゆっくり付いてきたらええ」


 その言葉通り、戦闘はご主人様一人。私たちはご主人様が走って行ったあと、ダンジョン内をゆっくり歩くだけ。誰も死ぬどころか怪我すらない。


 しかしレベルは上がっていく・・・。普通に考えればとてつもない速度で・・・。


 通常レベル1あげるのに、20日から30日かかるのが普通と聞いていましたが・・・。

 日が真上にあったころにダンジョンに入り、夜になろうとする頃には・・・20レベル。


 レベル20なら冒険者としては駆け出しを卒業したころでしょうか・・・。それを短時間で・・・。

 

 宿に戻り、ご主人様は返り血の付いた服を拭ぎすて、お昼ごろに入った公衆浴場に向かうという。

 宿で合流したアリス様は、レベル43の聖騎士。43と言えば、立派な中堅の冒険者だが、なぜかご主人様に師事しているという。


 贅沢にもお風呂でホクホクした私たちは、貴族や大商人しか来ない様な高級レストランに入る。

 好きなだけ食べぇ、と言うご主人様の言葉に甘えて、各々好きに注文し、無我夢中で食べた。


 豪華な食事で上がったテンションが落ち着くにつれ、私を買ったご主人様について考える。

 ハーフエルフで、お金持ちで、中堅の冒険者の師匠で、ダンジョンを一人で踏破どころか、無傷で周回する。しかも彼女自体のレベルは今日30に上がったらしい。 


規格外である。というか訳が分からない。何者なの?ハーフエルフだけあって、外見では年齢はわからない。まるで芸術品のような美しさの容姿に反し、獰猛な笑みを浮かべ、言葉遣いは荒々しい。一人称が『ワイ』とかまるで男性かと。


 情報量の多すぎるご主人様に混乱していた頭も、職を得て、スキルを取得した瞬間、解決してしまった。


 【演算】と言うスキルは、なにも数字の計算が早くなるだけでなかった。得られた情報を高速で処理し、考えられるすべての可能性を導きだし、一番可能性が高い答えを導き出す。

 基本的に商人はSPをイベントリの拡張につぎ込む。イベントリの拡張には上限はなく、手ぶらで商品を持ち歩けるというのは大きすぎるメリットだからだ。

 四則演算などはスキルなんて得なくても、勉強すればできるからだ。


 スキルとは、神様からの贈り物だという考えが大きい。自分が頑張ればできることに、神の手を借りるのはもったいないという事だ。


 【演算】のスキルを手に入れた瞬間、世界が変わったかのように思えた。悩んでいたことが全て解決していく。考えていたことの答えがすぐに導き出される。


 私が人生の目標にしていたことなど、とても小さいものだった。このお方に付いて行けば、誰もが考えたこともないような高みへ至ることだろう。今までの常識は壊れ、全ての価値観が崩れ去り、新たな世界が開かれるのだろう。


 それはなんと蠱惑的なことだろうか。興奮して跳ね上がる心臓の鼓動とは逆に、頭の方は冷たく、ご主人様のお話を遮らないよう冷静に装う。


 その後ポンッと気軽に渡された大金である金貨60枚。


 なるほど。これが私の初仕事。きっちりしっかり、マスターのご期待にお応えして見せましょう。

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