パワーレベリング
レベルアップする方法はいくつかある。
その一つであり、最もポピュラーなものが、魔物を倒すことで経験値を貯めることだ。
フィールド、つまりダンジョン以外の魔物は、自分が倒さないと経験値は得られない。経験値は止めを刺したものだけに与えられる。
ダンジョンは違う。倒した魔物の経験値は、ダンジョン内にいるパーティーに均一に配分される。
レベル20とレベル1のメンバーがいても、魔物を倒した経験値が100あるとすると、50づつ分配される。
これを利用し、高レベルプレイヤーが初心者を強制的にレベルアップさせるパワーレベリングが、LW内で一時期流行った。
それを見かねた運営が、後に修正したのだ。
ダンジョンの適正レベルを超えたプレイヤーがいる場合、もらえる経験値は5%になる。
つまり100もらえる経験値が5になってしまうのだ。
この修正に不満を言う人は少なかった。そりゃそうだと。レベルだけ上がった初心者の末路なんて、たかが知れている。
技術はないのにステータスは一丁前。そんなプレイヤー、カンスト帯のダンジョンでは邪魔でしかない。
アリスのおかげ?でダンジョンの仕様は修正後のものだと知ることが出来た。
正直あれがLW内なら、PKしてお帰り頂いてたとこやったけど・・・。
子鬼の洞窟の適正レベルは29まで。つまり30レベルまでは上げれるわけやな。30に上がったとたん取得経験値がごっそり下がるからや。
ちなみにどのダンジョンにも下限はない。帰還石さえあればなんとかなるしな。
つーわけで私がレベル30になるまで、4人を連れて周回をしたわけだ。
日が落ちる寸前、12~15周くらい?で無事レベル30に上がり、4人のレベルは20まで上がっていた。
「桁違いっす・・・常識外れっす・・・頭おかしいっす・・・」
などとぶつぶつ言ってる4人を連れ、冒険者ギルドでダンジョンクリアのドロップ品を全て売り、素材はイベントリに保管しておく。
宿に戻るとアリスが部屋にいて・・・。
「あのあの・・・スキルカウンターのタイミングが分からなくて・・・」
「はぁ・・・明日教えたる・・・風呂と飯行くで」
本日二回目の公衆浴場にお世話になり、いつもの高級レストランで夕食を取る。
ギルドメンバー(仮)達は遠慮という言葉を知らないようで、結構高くついた。
というか、ここの食事代だけでミナ2人買えるで・・・。
さて・・・幸せそうにしてるとこ悪いけど、ここからは仕事の話だ。しっかり働いてもらうで~。
宿に戻り、今日レベルを20まで上げた4人に指示を出す。
「まずはミナ」
「はい」
「ミナは職業を商人にしてくれ。取るスキルは【解析(全)】と【演算】をとっといて」
「わかりました・・・とりました」
ステータスをいじり終わってこちらを見る。本当に取れているのか質問する。
「銀貨398409枚入った袋が38個ある。金貨にすると何枚になる?」
「!?金貨149115枚と銀貨42枚です・・・なんですかこれ。一瞬で答えが・・・」
どうやらちゃんと取ってるようやな。頭ん中に計算機があるようなもんやから、少しでも悩んでたら取ってない。ちなみに答えが合ってるのかは知らん。
「商人の基本スキルやな。次はジーナ。職業は鍛冶師、スキルは【解析(鍛)】と【武装強化】や」
「取ったっす」
「んじゃあこの武器の次の強化素材答えてみ」
そういって愛刀【百合】を手渡す。
「おぉ・・・すごい武器っすねこれ・・・次の強化素材は大鬼の角っすね!」
「正解や。武具制作スキルは拠点を作ってからになるな。強化素材を所持してるなら、その辺の店売りの武器装備を買って、強化して売ったらええ。
次ツァリー。錬金術師や。スキルは【解析(錬)】と【素材加工】やな」
「わかりました」
「とったか?んじゃあこのポーションに解析かけてみ」
「はい・・・階級は低。品質は劣ですね。素材は薬草と水だけですね」
「せやな。HPが低い今の内しか使えん、最低レベルのポーションや。それでもまあ、ないよりはましやろ。今後ポーション作成の為に素材を加工してイベントリに保存しとき。
次はラク。服飾師やな。スキルは【解析(服)】と【裁縫】やな」
ツァリーの手の甲を指でなぞりだすラク。なんやろ・・・?嫌なんか?
「取りました。だそうです」
「あぁ、ツァリーの手の甲に文字を書いてるんか。ラクは自分の来ている服を解析かけてみ。それでそのスキルがわかるやろ」
「はい。使っている素材や、品質、作成方法が全部わかります!すごいです!だそうです」
興奮気味にツァリーの手の甲に文字を書きなぐるラク。
「商人は全ての物に解析を使える。鍛冶師、錬金術師、服飾師は職に関連するものだけに、解析がを使える。生産職の必須スキルやな。今後解析はどんどん使う事。知らない素材とか技術を知ることで、作成系のスキルの幅が増える。今は地味な加工しか出来へんけど、いずれ最高の素材を使った、最高品質の物を作ってもらうからな。ミナはそれを売るわけやからな。ちゃんと自分の扱う商品の事を、いろいろ知っときや」
「「「はい」」」
「明日は仕事してもらうで~」とにやりと笑う。
ゴクリッとつばを飲み込み緊張する4人に、ため込んでいた素材と、ミナに金貨60枚を手渡す。
「これは・・・」
「各自使う素材を全部解析。自分の使える素材をイベントリに回収。終わったら町に出て、自分の使う仕事道具を買ってき。余ったら好きに使い。ミナに渡したのは、町で売ってるもんの価格調査も兼てほしいからや。もし使わんくても返さんでええからな」
「いえ!こんな大金を預かるわけに―――」
「これからもっと多くの金をミナには稼いでもらうし、預ける。今から慣れとき」
目標のレベル30に至ったので、この町とは明日でお別れだ。
ベットに入り、大幅に狂った予定を修正しつつ、今後の予定を考える。
生産職がいるのだから、早めに拠点が欲しい。ならば近場の首都に行くのがいいだろう。自分一人だったら当分先の事だったのだが・・・まぁしゃーない。
「これからとりあえずこの六人で、ギルドを設立する。名前は・・・とりあえず『攻略者ギルド』としとこか」
「攻略ギルドですか・・・」
ミナが思案顔するがすぐに表情を戻す。
「せや、アリスにはもう話したけどな。ワイとアリス、その後ギルド員になる戦闘職がダンジョンを攻略する。4人にはそのサポートをお願いしたいねん」
「なるほど。理解しました」
「え?なんでミナは理解してるんっすか?冒険者ギルドあるっすよね?そこで事足りると思うのは自分だけっすか?」
あたふたするジーナ。それを諫める様にミナが言う。
「今日見たでしょう。ご主人様の戦闘能力を。今後踏破されていないダンジョンや未発見のダンジョンを攻略するにあたって、既存のギルドでは全てが役不足です。情報も、アイテムも、同行者も」
「せやな。まあそもそもあの冒険者ギルドってのが気に食わんのもあるけど」
「冒険者は割とポピュラーな仕事ですが・・・国に縛られることもありませんし、何が気に入らなかったんでしょうか?」とツァリー。
「ん~。これはワイが勧められて冒険者ギルドに登録に行った話やねんけど・・・」
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「ふーん。ここが冒険者ギルド・・・こんなんLWにはなかったけど・・・。でっかい建物やな」
普通の民家の4倍ほどの大きさの建物。剣と剣が交差するようなシンボルを掲げてある。
扉を開き中に入ると、アルコールの匂いと汗のにおいが微かに漂っていた。
どうやら酒場も兼ねているらしく、丸いテーブルと椅子がそこかしこに置いてある。
中に入ると同時に、視線がこちらに集まる。そして数人の男が寄ってくる。
「どうした?迷子か~?子供が来るには刺激が強いとこだぜここは?」
と声をかけられるが、無視し奥にあるカウンターに向かう。
「ははははっ!無視されてやがる。かっこわりー」
そんな声が後ろから聞こえるが、そんな事より登録だ。
「登録したいんやけど?」
「はい。新規登録の方ですね。ではこちらを読み、良ければサインを」
渡された契約書を読む。
冒険者ランクについて・・・鉄<銅<銀<金<白銀<金剛<神鉄の順に上がるものとする。ランク相応の依頼達成数100回でランク昇格となる。金ランク以上は別途査定有。
依頼の定期受注の義務。鉄~銅の場合一日一つは受ける事。銀~金は10日に一回以上。白銀以上は100日に一回以上。クエストを受けない場合はペナルティーが発生する。
定期受注のペナルティーは以下の物とする。
鉄・・・10日間依頼報酬の一割減。
銅・・・5日間の依頼報酬の一割減。
銀・・・30日以上依頼の受注がない場合は銅へのランク降格。
金・・・60日以上依頼の受注がない場合は銀へのランク降格。
白銀~神鉄・・・次回依頼報酬の一割減。
この辺まで目を通した時点で、読むのをやめた。あほらし・・・。
「なぁ。このギルドに入るメリットはなんかあるんか?」
「え・・・ええ。もちろんあります。あらゆる依頼を一括してギルドで請け負っているので、お金に困ることはありません」
「生活に必要なお金には困りそうにないな。で?他には?」
「ランクが上がることによって、高額な依頼を受けることもできます。現に白銀ランクの方は、貴族のような暮らしをしていますし」
「そこまで上がるのにどんだけ時間と労力を食われるねん・・・そんでそこまでのランクになるまで、どんだけの人が死んでるんやろな」
終始にこやかだった受付嬢の顔がピシリと固まる。
「ギルド員と言うだけでその身分を保障できます。どの国でもです。それに素材買取やギルドの食堂も優遇されます。同じ志を共にする仲間も見つかる事でしょう」
「魅力を感じへんな・・・」
身分を保証?されたからなんや。素材は直で生産職に売ったほうがええやろ。なんで中間業者をわざわざ入れるねん。飯?まずい飯がいくら安かろうが食いたないし・・・。
「おい!!何無視してんだ!!」
ガッと肩を掴まれる。呆然としていた男が気を取り戻したのだろう。
「なぁ。ワイ絡まれてるんやけど。これはギルド的にどうなん?」
「関与しません。自分を守るのもギルド員の義務みたいなものですから」
「ふーん」
肩に置いてある手を短刀でぶっ刺す。自分の肩に刺さらない程度に。
「いってぇぇぇ!!」
手が引っ込められる。ちなみに一切振り返っていない。
「ワイまだギルド員じゃないんやけど。こうやって一般人にも暴力振るうのはどうなん?」
「関与いたしません。が、白銀以上は品性も求められますので、彼は至っても金まででしょう」
「あっそ。要は野蛮人を大量募集して、たまにいる強くて品性方向な人物は重宝すると。なるほど、一般人でも素材は買い取ってもらえるんやな?」
「ええ。一般の方ですと手数料を頂きますが」
「わかった。もう用はないかな。素材だけ売りに来るわ」
方向転換し、帰ろうとすると、最初に絡んできた男たちが前に立ち塞がる。
「てめぇ・・・このまま帰れると思ってんのか・・・」
手を刺した男は、ポーションを飲んだのか傷もなくそんなことを言う。
「女性の体に気やすく触るからやろ。ホンマやったら命もろうてるところやで」
「レベル26の剣士である俺に楯突くとは・・・ボコボコにして、奴隷商に引きずって行ってやるから覚悟しろ!」
腰からショートソードを抜き、構える男。私を逃がさないように囲む男達。
即座に転移ナイフを男めがけて投げる。
「ふん!投げナイフなんて当たるかよ!くらえ!!スラッシュ!!」
【スラッシュ】剣速が増し、切断の効果を持つ斬撃。しかしその軌道は単純で、振り切った後に0.5秒の硬直がある。ゴミスキルである。
ザシュッっと斬撃が体に当たる音がし、男はニヤリと頬を緩める。
しかし、私の体は無傷であり・・・。
「ひぇ・・・!」
私がスキル途中で斬り飛ばした男の両手と剣が受付嬢の所に飛んでいき、刺さっていた。
「へ・・・俺の手がぁぁぁ!!」
痛みに悶え、崩れ落ちる男。
「すぐ両手くっつけてポーション飲めば治るやろ。んじゃあワイはこれで」
転移ナイフを起動し、即座に出入口に転移して、その場を後にした。
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「というわけや」
「なるほど。理解しました」
「いやいや!?いろいろおかしいですからね!!ミナもすぐに理解しないで!?」
アリスが大声をあげる。
「今後素材は加工、生産に必要ない分、又は生活に必要な分はミナに売ってもらうで」
「かしこまりましたご主人様」
「ご主人様はやめよか。どうせならマスターや。ワイはこのギルドのマスターやからな」
「イエス。マイマスター」
「やめろ・・・。どこのメイドやお前は・・・ミナのマスターやない。このギルドの長という意味やからな?」
「要するに、冒険者ギルドは、ただの野蛮人を搾取し、看板となりえる人材は丁重に扱う搾取ギルド。素材の卸業で儲け、依頼報酬をかすめ取り、制御できないであろう野蛮人の動向に責任は負わない。無責任ギルドという事ですかね」
ミナが話しをまとめる。まあ大体その通りだ。
「そう言う事やな。ワイのギルドにも規則はあるから心して聞くように!」
「「「「はい!」」」」
「一つ。ギルドメンバーでの喧嘩禁止。どうしてもっていう時はワイに言う事。
二つ。報告、連絡、相談は徹底すること。小さい事でもな。遠慮や気遣い無用や。気軽にしてな。
三つ。楽しく生きていく事!辛い事や嫌なことはすぐに言うてや。
ワイはただ面白おかしく、楽しく生きていきたい。できれば・・・ギルドメンバーたちと一緒に、笑いあえる人生を歩みたい。だから・・・協力してな」




