奴隷を買う
奴隷、人間としての権利や自由の認められていない道具。要は物扱いされる人の事だ。正直、平和だった世界から来た私には忌避感しかない。
「奴隷か・・・」
「はい。奴隷でしたらジュンの好きなようにできますし、契約により裏切れませんので信頼もできます」
アリスは何の違和感も忌避感もなくそう言う。そういう世界と言う事か。
人の命に値段がつけられる世界。要は命なんて、金で買える程度の価値しかないということだ。
郷に入っては郷に従え。正直有用な案ではある。しかし・・・。
「どうしたんですかジュン?何かおかしなことでも言いましたか?」
「いや・・・。まぁそれもありか・・・」
考え方を変えよう。要は契約金として買って、給料も払えば雇うという体裁は整うか。私がそう言う扱いをしなければいいだけの話だ。
「で?どこで買えるんや?」
この世界の奴隷についていろいろ聞いた後、アリスと共に宿から出る。
「確か・・・町の西側にあったと思うのですが・・・」
「わかった。アリスは子鬼相手にスキルの確認してき。スキルだけで倒す事な。ノルマは最低50体ほどにしとくか」
「え・・・」
「ほんまは100は倒してほしいけど、まあ初日やしな。終わったら宿に帰ってきてええで」
「逆に言うと終わるまで帰ってくるなと・・・」
「レベル差めっちゃあるのに余裕やろ・・・スキルレベルあげるためにもガンガン使わなあかんねん」
「わかりました!頑張ります!」
フンス!と気合を入れるアリスと宿の前で別れる。
レーブンヘルムはそれほど大きな町でもないし、すぐ見つかるやろ。
そう思って初めてこの町の西側に足を踏み入れる・・・。
「・・・あれ~?こんな感じじゃなかったよな?」
肌を多めに露出した女性があちらこちらで客引きをしている。たしかLWだと普通の住宅街だった。正直そう言う事には免疫はないが・・・。まあ気にしたら負けやな・・・。
「お嬢さん何かお探しかい?欲求不満なら僕が――」
「奴隷買えるとこって何処や?」
「え?・・・あぁ・・・あそこに見える建物がそうだよ・・・奴隷なんか買うよりも、どう?僕と甘いひと時の時間を――」
「わかった。ありがとうな」
がっくりと肩を落とす男を背に、言われた建物に向かう。
普通の商店に見えるが、確かに看板には『あなたの理想の奴隷が必ず見つかります(はーと)』と書かれているからここで間違いないのだろう。
え?そう言う目的なん?家事させたり、仕事させたりするんやないの?
今後楽しく生活していくために、ギルドの運営は必須。その為に・・・と覚悟を決め、入店する。
「いらっしゃい・・・。身売りか?それとも買いに来たのか?」
「買いにきた」
値定めするように、こちらをじろじろ舐め回すように見る店員の男に、顔を顰めながらそう答える。
「そうか。要望を聞こう」
「レベル1の女性三人欲しいんやけど」
「ほう?男じゃなくて女か・・・。なるほど・・・そう言う趣味か」
最後の方はよく聞き取れなかったが、ついてこいと言われたので、言われるがままに付いて行く。
別の部屋に入ると、大きなソファーが置いてあり、部屋の奥に出入口とは別にもう一つ扉がある。
ソファーに座るように促され、その後店員の男は扉の奥に消えて行った。
しばらくすると扉が開き、鎖を手に持った店員の男が現れる。
その鎖は、後ろの目隠しされた女性たちの首輪に繋がっていた。目の前に麻袋に穴をあけたような服を着た女性4人が並べられる。
左端は茶髪のヒューム。その横が赤い髪のハーフドワーフ。さらにその横にいるのは金色の髪をしたエルフ・・・右端にいるのはまん丸い耳の生えた獣人。
「三人って言うたん聞こえへんかったんか?」
「・・・選べばいい。気に入らなかったらまだ奥にいる」
こんなとこに長居したくはない。左から三人でええかな・・・鑑定でレベル1なのは確認したし・・・と思っていると。
「わ・・私を買うなら・・・この子もどうか一緒にお願いします!!」
とエルフの女性が右隣にいる獣人を抱きしめる。
「誰が勝手にしゃべっていいと言った!!!」
と店員が手に持っていた鞭を振り上げる。
「ええ。4人とも買うわ。いくらや」
振り上げた鞭を降ろす。買うと言ったからには売れる商品になった訳や。それを買う客の前で、傷つける訳にもいかんのやろう。
「金貨160枚だ」
「あんま状態は良く見えへんけどな。服めくってみ?」
苦い虫を噛み潰したような顔をする男。
「全員処女だ」
「関係あらへん。そんなん求めてへん。金貨140枚にまけろ」
「・・・契約紋の代金込みで150枚」
「あほか。元々は入っているであろう手数料で、値が釣り上げれると思うてんのか?140や。あと服も着替えさせてくれ」
「そんなん金額で売れると思うのか?」
「ワイを節穴、世間知らずの少女と勘違いしてへんか?相場から言うたろか?ヒューム女性20枚、ハーフドワーフ25枚、エルフ80枚、ビースト20枚。病気無し、健康状態良好でこれが相場や。管理が悪いし、みんなやつれとる、暴力も振るってるやろ?さっさと決めろや」
店員をにらみつけ、金貨を取り出す。
「・・・わかった。契約紋は何処につける?」
「足の甲や」
こめかみに血管を浮かせ、今にもキレそうな顔でこちらお睨む。
「・・・契約紋の効果を知っているのか?」
「知っとる。心臓に近ければ近い方が束縛する効力が高くなるんやろ?だから足の甲って言っとるんや。ワイはお前とあんま喋りたないねん。さっさとせぇ」
奴隷の情報はすべてアリスから事細かに聞いてた。なんでそんなに詳しいのか聞いたところ、レベリングの為に、パーティーメンバーを買おうか迷っていた時期があるとか。
職持ちはそれだけで値段が張るそうで、断念したらしい。レベル1ならそんなに値段も張らない。だから勧めてきたというわけだ。
男が小さな小皿をこちらに投げ渡す。それに指を傷をつけ、血を垂らす。男はそれを受け取り、奴隷たちの足の甲に契約紋を付けていく。
あれは本来、従魔士が魔物に対して使うスキルだ。それを人にできるなんて・・・それもLWとは違う仕様ということなのだろう。
契約紋を付け終ると、男は奴隷の首輪と目隠しを外し、4人分の下着、衣服を出して、金貨を受け取ると、そそくさと部屋から出て行った。
「よろしくな」
そう挨拶しつつ、人数分のポーションを取り出す。彼女たちのHPが半分以下になっていたのだ。レベル1ならこの低級ポーションでも2本くらいあれば全快するだろう。
各自ポーションを飲むように命令し、服を着替えてもらう。
「お買い上げいただき、ありがとうございますご主人様。ヒュームのミナと申します」
茶髪で品の良い言葉遣いでお辞儀をするミナ。
「ジーナっす。よろしくっすご主人様。子供に見えると思うっすがこれでも成人のハーフドワーフっす」
身長が140㎝のジーナ。
「この子と一緒に買っていただいてありがとうございます、ご主人様・・・私の名前はツァリー、エルフです。この子ラク、ビーストです。話すことはできませんが、声は聞こえますし、文字はわかるので、意思疎通は出来ます」
ツァリーにつられて頭を下げるラク。親子?でないよな?
「いろいろ聞きたいし話したいけど、とりあえずここは居心地よくないからな。さっさと移動しよか」
店を出て、宿に向かっている途中に公衆浴場があった。どうやら娼館が多いことから、そう言う施設もちゃんとあるみたいやな。
「風呂あるやん!入っていこう!」
「ではお外でお待ちしておりますね」とミナが言う。
「何言っとるんや。むしろワイよりあんたらの方が汚いやろ。さっさと行くで~」
髪が汚れ、手先も若干黒い彼女たちをまずは綺麗にするために、風呂屋に引っ張っていく。
「・・・やっぱり抱かれてしまうのでしょうか・・・でも同性相手に・・・どうすれば・・・」
ミナが訳の分かんないことを言っているが、聞こえないふりをした。
やっぱ風呂はええな・・・。一人銀貨5枚は高いらしいけど、毎日入ってもええかもな~。
ルンルン気分で町を練り歩く。後ろからついてくる彼女たちもさっぱりとし、綺麗になった。途中服飾店に寄り、彼女たちの当面の衣服を購入。自分の装備のメンテと、インナーを追加購入。ダンジョンで血まみれになるからな・・・。買えの服は持っとかんとな・・・。
適当な飯屋に入り、注文をする。奴隷だからとかそう言うやり取りはやめろと一蹴した。
「今はまだ奴隷やけど、近々ワイの運営するギルドメンバーになるねんから、今のうちに対等な関係に慣れとき」
「「「はぁ・・・」」」
よくわかっていないという顔をして返事をする4人。まあラクは喋られへんらしいけど・・・。
料理が運ばれてくると4人は黙々と食べだす。
運ばれてきた料理は、よくわからん肉とよくわからん野菜の炒め物と無駄に硬いパン。
「うーん・・・味が薄いし、肉は臭みがひどいし・・・野菜は雑草食うてるみたいやし・・・はぁ・・・」
調味料が一般に普及してないからやろうな・・・。食べれんことはないけど、おいしくはない。
そんな料理を満足げに食べ終える4人。
「さて・・・4人には仕事をしてもらうで。ミナは商人。ジーナは鍛冶師。ツァリーは錬金術師。ラクは・・・服飾師になってもらう。すまんが拒否権はない」
「それは問題ありません。私たちはあなたの物です。お好きなように・・・レベルを上げる途中で死なないよう努めます」
ミナがそう言い、4人は覚悟を決めた顔でこちらを見る。人の職業を自分勝手に決めるのは申し訳ないけどな。
「後悔だけはさせへんから安心してな。んじゃあ行くか~」
「どこに行くんっすか?」
「ん?4人のパワーレベリング&ワイのレベリングに?」
「ぱわーれべりんぐ?」
「せや。この5人でダンジョン行くで~」




